第13話 訓練場での特訓
イルシオにマヨネーズの素晴らしさが伝わって満足した私は、今なら強力な魔法が使えるような気がする!
と意気込んだ時間もありました。
場所を変えて今いるのは前にも来た訓練場。
昼食後に四番隊との打合せがあるというイルシオは私に1人であの薄暗い部屋で魔法の特訓をしろと言いつけたのだけど、私はそれを拒否。
あんな薄暗い部屋で1人黙々と魔法の訓練なんて嫌。一人なら広い外で伸び伸びとやりたい。
「魔法の使いすぎで外で倒れられたら後が面倒だ。」
「倒れるまで使わなきゃいいんでしょ?休憩しながらやるわよ。」
「いつ倒れるか把握できていないだろ!」
「ならこれを機に把握すればいいんでしょ。自分で確認しながらやるわよ!」
「・・・勝手にしろ。その代わり倒れたら二度と外には出さないからな。」
まさかの監禁宣言。
そんなやり取りを経て外で練習することをもぎ取って今に至る。
訓練場の真ん中では騎士の人達が訓練しているようで掛け声や打ち合いの音が聞こえてくる。
そんな騎士団を避けるような場所では魔法師達も魔法を使っているのが見えた。
私も邪魔にならないように前と同じ木のそばで魔法の特訓をすることにした。
私だって、何度も倒れたくはないし、監禁はされたくない。
昨日、倒れる前に使っていた魔法を思い出すと、おそらく15回ぐらいが限度なんだろう。
10回を目安に休憩を取れば大丈夫と自分の中でルールを決めて魔法を使うことにした。
魔法にも相性があると言っていた。なら自分と相性がいい魔法はなんだろうと基本属性の地水火風を使ってみた。
しかし、力に差は感じられなかった。いや、違う属性で力の差なんて測れないわ。
けど、なんか・・・魔法が大きくなった?
初日はマッチ程度の火だったのが今は火の玉ぐらいの大きさだ。
私、レベルアップしてる?
私は休憩がてら木の幹に腰を下ろした。
空を見上げれば雲ひとつなくいい天気だ。お昼を食べてお腹も膨れている。お日様の光も暖かい。
このまま目を閉じたら気持ちよくお昼寝できそう。
ポカポカと陽気な外でこのまま寝ていきそうになったところ、
「大丈夫か?」
と肩を揺さぶられた。
「えっ?」
パチッと目を開ければそこには濃い金髪に薄いブルーの目をした昨日の騎士さんがいた。
「よかった。・・・また倒れたのかと思った。」
「えっと・・・休憩がてら軽く目をつぶってただけで・・・」
寝落ちしそうになったとは言えない。
「ふっ。では俺の早とちりだったようだね。」
「いやえっと、・・・心配してくれてありがとうございます。」
ほっとした表情から本当に心配されていたのが伝わった。
私の隣に腰を下ろす騎士さん。
「あの・・・今は訓練中なんじゃ。」
「ちょうど休憩に入ったところなんだ。」
と指さす方向では、訓練場の真ん中で訓練していた騎士達が散り散りになっているのが見えた。
昨日は恥ずかしさのあまり直視できなかったけれど、騎士さんは人懐っこそうな顔をしている。某男性アイドルグループに居そうだ。その笑顔一つでハートを鷲掴みされる女性が続出することだろう。
やばい。・・・そんなイケメンにお姫様抱っこされたとか絵的に顰蹙もんだ。
「昨日は医務室までありがとうございます。お礼を言えずに申し訳ありません。」
「いや、体調はもう大丈夫なのか?」
「はい。たくさん休んだので大丈夫です。」
「それはよかった。」
「あの・・・その、・・・重かった・・・ですよね・・・。」
私の身長は160に届かないが、体重は平均並みだ。
自分で傷を抉るような発言するなんて・・・
「俺は鍛えているから大丈夫だ。」
にっこり微笑む騎士さん。
けど、それはフォローになってないよ騎士さん。
鍛えてなかったら重かったってことよね・・・よよよ。
「そういえば、まだ名乗っていなかったな。」
クスッと笑った後、騎士さんは私の前に片膝をつくと、
「俺は第二騎士団所属、ルーカス・オックスシアという。」
「リサです。」
「リサ、か。・・・その」
ん?
言い淀む騎士さんにどうしたんだろうと思ったけど、ここは王宮で、騎士さんはきっと貴族だ。
家名を名乗らないのを不審がられたか。けど、名乗ったところでこの世界に中澤家はない。
ヘタに勘繰られるのもめんどくさい。
「リサで結構です。オックスシア様。」
相手は貴族様だから私は呼び捨てにできないよね。
イルシオは今更だから呼び方を変える気にならない。
「わかった。では俺のこともルーカスでいい。」
よし。呼び捨て許可いただきました。
「わかったわ。ルーカス。」
許可が出たので呼び捨てにしたらルーカスは虚をつかれたように止まってしまった。
あれ?呼び捨てにしていいって言ったのに呼び捨てにしたらダメだった?
これはあれか?京都のぶぶ漬けはいかがどす?的な実際は呼び捨てにすんなよ?ってやつか?
それならそうとはっきり言ってくれないとわからない。貴族難しいよー。
首を傾げる私にルーカスはなんでもないと首を振った。
「その、リサは魔法師団の所属であっているだろうか?」
「んー、・・・一応?」
イルシオによって召喚されたし、魔法師団の黒マントを着ているから魔法師団所属になるのかな?
「それならリサは何か知っているだろうか?先日、魔法師団であったこと。」
「魔法師団で?何かあったの?」
私が聞くとルーカスは少し言いにくそうにしながらも、
「・・・実は俺の妹が魔法師団に所属しているのだが、先日、父上が帰るなり妹に魔法師団のことで話をしていたのだ。父上は怒っているようだったし妹に尋ねても何でもないと機嫌が悪く、ここ数日口をきいてくれなくて、何かあったのかと気になったのだ。」
「そっか。でもごめん。私にはわからないわ。」
私はここに来てまだ3日目だし、その間もほぼイルシオの部屋にいるだけで、他の魔法師の人と会わないし、関わることがない。
他の隊のことを聞かれても答えれない。
それに私が来る前のことだったら、尚更知らない。
「そうか、知らないか。・・・すまない、変な事を聞いたな。」
「うんん。私も役に立てなくてごめん。」
その後、休憩が終わるルーカスは騎士の訓練に戻っていき、私も何度か休憩をはさみながら特訓を再開した。
十回に一回は休憩を取るようにしたから今日は倒れることがなかった。
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