第12話 マヨネーズ普及活動
最初は私を邪険にしていた料理長がマヨネーズを見たとたんに態度が一変した。
マヨネーズの歴史は18世紀半ば。日本に入ってきたのも20世紀に入ってからだから、マヨネーズの歴史は塩に比べると短い。
この世界の料理事情からきっとマヨネーズはないだろうなと思っていたけど正解だったみたいだ。
マヨネーズの材料があったよかった。ほんとはお酢が欲しかったけど、あるかわからなかったからね。
調味料を見せてもらえたら良かったんだけど、よそ者に全てをさらけ出すような人達ではなかったみたいだ。
プロ意識が強い人達だなー。
マヨネーズを見た料理長に他のものも知りたいと言われたので、マヨネーズを使ったオーソドックスな物を作ることにした。
食料庫で見つけたじゃがいもみたいなやつ。
ここではトーテルって名前なんだって。
トーテルの皮を剥き火が通りやすい大きさに切ってから湯がく。
ほんとは皮付きで丸ごと茹でた方が旨味が逃げずにおいしいんだけど、今はそこまで時間がないから時間短縮。
その事も忘れずに料理長に伝えた。
茹で上がったトーテルをフォークで潰して、塩とマヨネーズで和えて完成。胡椒もあったらよかったんだけど、ゲームで胡椒は船と交換するぐらい貴重なものだからここにはないと判断。
金と胡椒が同等の価値の時代もあったしね。
出来上がったポテトサラダ改めトーテルサラダを盛り付ける。これならサラダで使われているレタスぽい葉っぱと一緒に食べても美味しいはず。
トーテルサラダを味見した料理長の私を見る目が最初と全然違って怖かった。
マヨネーズ一つでここまで喜んでくれたなら作った甲斐あったわ。
今後もマヨネーズを使っていろんな料理を作ってほしいとお願いしたら、また何か作りに来てほしいと逆にお願いされた。
やったー。料理長からまた来てもいいって言われたー。
これを機に食事改善がんばる。
時間がきたことで料理長をはじめ料理人のみんなにお邪魔しましたと挨拶をしてサーラと一緒に魔法師団へ向かった。
「リサ様はあのような料理をどこでお知りになられたのですか?」
「んー、昔、お母さんが作るのを手伝ったからかな。」
ポテトサラダは簡単だから一人暮らしを始めてからもよく作ってたし、マヨネーズも手作りできるかなってレシピサイトを見て何度か作ったことがある。
「私はリサ様がお作りになられたあの料理を初めて見ました。王宮の料理人達も初めてだと思われます。」
うん、そうだろうなー。料理長さんがとても驚いていたし。
これを機にこの世界にもマヨネーズが普及することを願う。
イルシオの部屋に到着するとサーラは後で昼食をお持ちしますと言って去っていった。
ノック四回した後、入室許可をもらって部屋に入るとルイーナが居た。
「こんにちは。」
そういえば私、ルイーナと話したことなかったなと思いながら挨拶したけど、ルイーナには一瞥されただけだった。
「では隊長、昼食後四番隊との会合をお願いいたします。」
ルイーナはイルシオにそれだけを言うと私の前を素通りして部屋を出て行った。
ん、もしかして私、無視された?ほぼ初対面なのになんで?
ルイーナが出て行った扉を見ているとトントンとテーブルを叩く音が聞こえ、
「この時間まで何をしていたんだ?調理場に行くとは聞いていたが追い出されたにしては時間がかかりすぎだろ。」
カチン。追い出されてないし。
「料理してたに決まってるでしょ!」
「はっ?料理?お前が?できるのか?」
カチン。なんでそんなに驚くの?料理出来るのがそんなに意外か!
「一人暮らししてたんだから出来るわよ。時間がなかったから一品しか作ってないけど、時間があればもっと作ってたわ。」
「お前は料理人でもしていたのか?」
「料理人じゃなくて普通の学生よ。」
なんで料理できる=料理人なんだ?・・・あー、サーラも同じように聞いてきたっけ。
「もしかして、ここって料理できるのってめずらしいの?」
「料理ができるならば料理人だろう。」
えー、それじゃ料理人がいなかったご飯が食べれないってこと?
それ庶民には無理じゃない?
そこまで考えて、イルシオが貴族だったのを思い出した。
ここは王宮だ。ここに居る人たちはみんな貴族かもしれない。
それなら料理できなくても仕方ないか。
もしかしたら王宮よりも町の方がいろいろな料理があるかも?
これは出来るだけ早く町に行く機会を作らなければ。
そうこうしているとノックの後、サーラがメイドさんと共に昼食を運んできた。
スープとさっき作ったトーテルサラダとお肉。お肉にはマヨネーズを使ったタレがかけられていた。
おー、料理長さん、早速マヨネーズを使って料理してくれたんだ。
お肉は鶏肉ぽく食べるとレモンの味が少し強いけど、ミルクが加えられてマヨネーズがまろやかになっているからさっぱりしていておいしい。
こんな短時間ですぐにマヨネーズのアレンジができるなんてさすが王宮の料理人。
「ほぉ・・・。これは新しい味だな。」
トーテルサラダに口をつけたイルシオが興味津々にトーテルサラダを見入っていた。
「ふふふん。どう?美味しいでしょ?」
「もしかして、これがお前が作ったものか?」
「そう。マヨネーズ。サラダにも使えるし、お肉のタレにも使えるし、マヨネーズまじ万能。」
「ふむ。これはチュリナも食べやすくなっていいな。」
トーテルサラダとレタスっぽい葉っぱを一緒に食べて満足するイルシオに私は内心勝った!とガッツポーズをした。
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