第9話 レベル上げと出会い
「リサの使える魔法がわかったところで、マナ減少の原因究明には繋がらないんだが・・・。しかしマナの反応がほぼないってのはどういうことだ?力に比例か?」
イルシオはふうっと息を吐くとこめかみを指で抑え、
「1ヶ月の期限がなければこのままリサの魔法を研究するってのに!くそっ!」
どうやらイルシオは根っからの研究気質みたいだ。
あーでもないこーでもないとぶつぶつと呟いていたかと思ったら、
「俺は一度部屋に戻る。お前はこのままいろいろと魔法を試してみろ。」
「えっ?ちょっと、いろいろ試せって・・・」
どうするんだろう・・・。
イルシオは私の言葉に止まらずさっさと戻っていってしまった。
一人残された私は周りを見渡した。
変わらず騎士団の人達が訓練しているのが見える。
端の方では黒マントの人も何人か居て魔法で起こした風がここまで届くのを感じた。
あの人達の魔法に比べたら私の魔法なんてないようなものだ。
いくら使える属性が多いからって雀の涙な魔法じゃ意味がないと思う。
イルシオはいろいろ試せって言っていたけど、まずは力をつけた方がいい気がする。
そう言えば、ゲームでも魔法の力が上がったら他の魔法を覚えるってこともあったよね。
うんうん。力もつけて新しい魔法も覚える。これって一石二鳥なんじゃない?
けど、力をつけるって具体的にどうするんだろう。
魔物を倒してレベルアップするにしても今の私じゃ魔物退治なんて到底無理そうだし。
そもそも魔物退治とか無理だし。
うーん。・・・植物も一応生命を持ってるし植物でレベル上げとかしてみる?
他のゲームで植物を刈るのとかあったし。
私は近くに生えている雑草に手を向けて風で草を刈るイメージをした。
俗に言うかまいたちね。
シュパッ
おおっ、できた。
一度できると気分がいい。調子に乗ってその周りの草にも魔法を放つ。
シュパッシュパッシュパッと景気よく刈れる草を見て、これがあれば実家の草むしりも楽なのにーと思ってしまった。
んー、結構草を刈ったけど、これで力が上がっているのかいまいちわからない。
レベルアップしたらピコンッてビックリマークが出たりしたら分かりやすいのに。後はステータス画面とかあったら一目で状態がわかるのになー。
・・・・・・。
私の魔法ってイメージしたのがそのまま具現化されてるから、もしかしたらステータス画面もいけるんじゃない?
ものは試しにーっと好きなゲームのステータス画面を想像しながら目の前に画面を開けるイメージをした。
って、そんなに都合よくないか。
ステータス画面があったら便利だったんだけどなー。
無い物は仕方ない。地道にやっていくしかないかな。
気を取り直して続きをしようとしたら、
クラッ
あ、これはやばい。
と思うのと同時に私の体は倒れていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「大丈夫か?私の声は聞こえるか?」
声が頭に響く。
内容からして心配してくれているのだろうけど、そんなに大声を出さないでほしい。
頭に響く声と体が揺さぶられて気持ち悪くなりながらもなんとか目を開ける。
「気がついた?」
気がついたけど、気分は最悪だ。半端ない疲労感に乗り物酔いした気分だ。
場所は変わらず訓練場だ。
倒れた私を助けてくれたのだろう。助けてくれた相手に不満をぶつけるわけにはいかない。
気力を絞って笑顔を浮かべた。・・・笑顔に見えているといいけど。
「そのマントは魔法師団の所属だな。見かけないがどこの隊の者だ?」
「えっと、ありがとうございます。少し力を使い過ぎたみたいで、少し休めば大丈夫だから訓練に戻ってください。」
朦朧とする頭でなんとか言葉をひねり出した。
上半身を支えられているせいで近いけど、濃い金髪に薄いブルーの瞳のこの人はきっと近くで訓練していた騎士団の人だろう。
倒れた私を心配して駆け寄ってくれたに違いない。
相手は私を知らないみたいだし、もちろん私も知らない人だ。
こんな広い王宮だ。滅多に会うこともないだろう。出来ればこの醜態を忘れてほしい。
「顔色が悪い。医務室まで付き添おう。」
「本当に大丈夫です。少し休めば回復しますから」
だから本当に訓練に戻って。
私のせいで訓練中断とか申し訳ない。
「そんな顔をして大丈夫と言われても説得力がない。」
ううっ、返す言葉もない。
「って、ひゃー。」
「暴れると危ないから」
そ、そんなこと言われてもー。
見ず知らずの人にお姫様抱っことかどんな執着プレイよ。
お姫様抱っこなんてお父さん以外にされたことないのにー。
そもそも彼氏居ない歴=年齢の私が男の人とこんなに接近とか心臓に悪いわ。
今回倒れたのも魔法の使い過ぎだと思うけど、どの程度魔法を使ったら倒れるのか把握する必要があるわ。
こんな目に合うのなら何度も倒れるわけにはいかない。
やっぱりステータス画面がほしい。
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