第8話 属性の確認

「失礼します。ファルマス隊長、先日の四番隊との合同技術の報告書と問題点をまとめた物をお持ちしました。」


4回ノックの後、イルシオが返事をすると紙の束を持って丸い眼鏡をかけた十代半ばぐらいの女の子が入ってきた。

濃い金髪を後ろで1つに結んでおり若草色のワンピースの上に金縁マントを羽織っている。

彼女も魔法師団の人かなー。

自分より年下の子も魔法師団で働いていることに驚いた。


「ルイーナか。ご苦労。そこの机の上に置いておいてくれ。」

「はい。」


ルイーナと呼ばれた女の子は言われた通りに紙束を机の上に置くと一度私を見てから部屋を出て行った。

一瞬、睨まれた気がするけど、気のせい、かな?

彼女とは初対面だ。睨まれる覚えはない。



話が終わった団長さんも仕事に戻ると言うので、私とイルシオも一緒に部屋を出た。

廊下を通ってたどり着いた訓練場は小学校のグラウンドぐらいの広さがあった。

訓練場の奥にも建物があって、主に騎士団が使用しているらしい。

更に奥には同じぐらいの訓練場がもう1つあると言うから王宮まじ広い。


訓練場には騎士の集団が訓練しているのが見えた。

私とイルシオは騎士の集団から離れた木が多い場所に行った。

木の周りの方がマナが多いらしい。


「早速だが昨日と同じように魔法を使ってみろ。」


イルシオは昨日も持っていた金属の円盤みたいなのを手にしていた。

きっとあれが周囲のマナを計測する機械かな。

私は言われた通りにちょいちょいと指を振って火を出したり、手のひらに竜巻を作ったり、器に水を出してみた。

イルシオは手元の円盤と私の魔法を見比べながら頷いていた。


「他の魔法は使えるか?」

「他の魔法って?」

「今使ったのは、火、風、水だ。それ以外の属性も使えるのか見たい。」

「他にどんな属性があるの?」

「属性を知らないのか?・・・そうか、魔法がない世界と言っていたな。」

「んー、火、風、水の他は土とか?後は光に闇?聖女様の聖属性とか。無属性は属性にはいるの?」

「なんだ?その知識は。魔法がない世界ではなかったのか?」


私の知識はゲームとラノベからだから全てが妄想の産物でしかない。

眉を寄せるイルシオはスルーする。ゲームとラノベの話をしてもきっと理解されない。

後は犬属性と猫属性があるけど、さすがにこれは魔法じゃないよね。


「この世界にある属性ってなんなの?」

「・・・基本は風、火、水、地の四属性だ。上位属性として氷、雷、光、闇がある。」


よかった。結構ポピュラーな属性だった。

氷と雷もあるなんて大好きなゲームみたいでドキワクする。

となると残りは地かな。地ってことは土だよね。土といったらやっぱりあれでしょ。


「いでよ。土ボコ!」


・・・・・・。


土が盛り上がるイメージをして手を地面に向けてみたけど何の反応もなかった。

ポーズまで決めたのに無反応とか恥ずかしいんですけどー。

厨二病満載な言動に恥ずかしすぎてその場でうずくまった。


「・・・ふむ。今までよりマナが反応したな。」

「えっ?そうなの?」

「と言っても他と比べて多かっただけで、誤差の範囲と言っていいレベルだがな。」


なんだそれは。

異世界転移でチート持ちなら土魔法もいけると思ったんだけどなー。

できないと思うと悔しい。

私はその場で地面に触れてもう一度土ボコができるイメージをした。


ボコッ


「えっ?」


手が触れている所が盛り上がるのを感じて手をどけると、さっきまで平だった地面が数センチ盛り上がっていた。


「地属性も使えたな。多少の相性はあるが四属性は使えて当然だな。残るは上位の属性だが・・・」


出来るのか出来ないのかどっちだ?さっさと試せと目が雄弁に語っている。

氷魔法はとりあえず氷を飛ばすイメージをする。

けど氷は出ない。その代わり手の周りが冷たくなるのを感じる。その状態でイルシオの腕に触れようとしたら直前で避けられた。


「何をする!」

「んー、氷出ないけど氷魔法使えてるのかなって確認。」


さっきから上目線だったイルシオが慌てたのを見れてちょっと満足。

イルシオは嫌そうに私を見ながら、


「冷気を感じたから氷魔法も使えるのだろう。次を試せ。」


雷か・・・これは今までの流れで行くと実践しなくてもどんなのか想像できるんだけどなー。

これこそイルシオを巻き込むべきかと指に集中してそっとイルシオに近づけた。


「痛っ!」


パチッとしてすぐに手を引っ込めた。

やっぱり想像通りに静電気が起こった。これは危険だわ。地味に私も痛い。


「・・・お前は!何故俺に対して実践するのだ!魔法を使うならきちんと対象に狙いを定めて実践しろ。」


おおぅ、怒られた。

きちんと対象イルシオに対して実践したのに。

でも雷は私にもダメージが来るから使えないわ。痛いの好きくない。

残りは光と闇だけど、光魔法ってどんなのだっけ。

ピカッて光らせる?うんん、私が発光するとか傍目に痛すぎる。

無難に光の矢とかかな。親指と人差し指で鉄砲の形を作ると近くの木に向けて光を放つイメージをする。

矢は出なかったけど小さな光の粒が木にめがけて飛んでいった。

おおっ、なんか一番魔法っぽい。


「ほぉ。」


イルシオからも感嘆の声があがった。どうやらマナに反応があったみたいだ。

後は闇魔法なんだけど、闇が一番難しい。闇と言えば夜。でもさすがに夜にすることはできないし、小さくてもいいからブラックホールとか作ってみちゃう?

と思って手のひらに意識するけど、何も起こらない。

闇のイメージって難しい。・・・影も闇属性だったかな。と木の影に手を触れてみるけれど反応しない。影を吸い取ったらすごいなっと思ったけど無理みたい。


「闇魔法ってどんなのなの?」


どうしても闇魔法がわからなくて、実物を見たらできるかもと思って聞いたのだけど、


「闇魔法はない。」

「えっ?どういうこと?」

「属性として光と闇は存在するが魔法としては確立されてはいない。」

「でもさっき・・・」


私、光の矢(?)打ったよね?あれは何になるの?


「四属性は身近な物だから魔法が使える者は誰にでも使える。だが上位に関しては人には余る力だ。使える者もいるがその数は多くない。魔法陣を介してやっと使えるほどだ。光と闇に至っては皆無と言っていいだろう。だからお前が光を放ったことに驚いた。」


あの驚きはマナに反応があったからではなく、私が光魔法を使ったことに対してだったんだ・・・。


イルシオはニヤッと口元を歪めると、


「使える者が希少な雷と氷が両方とも使え、魔法としては存在しないはずの光魔法まで使えるのだ。これは普通の人間には無理だな。これでお前が精霊と関係ないとは言えなくなったな。」


おおぅ、なんか嵌められた?

上位魔法が使えるのはチートだとしても、中途半端すぎない?

全属性が使えるわけじゃないし、使える魔法が弱すぎるよー。




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