第29話 いったい何だったのだろう
<イギリスの青年>
デス・ソードで踊るように敵戦力を破壊していく。
敵を倒すことに何の躊躇もない。
むしろ、掃除をしている感じさえしていた。
「ん~いいですね。 身体はとても軽いです。 このまま世界中をきれいにしていきますか」
本気でそう思っているようだ。
そしてできるだろう。
青年の周りの時間が止まって見える。
その中を縦横無尽に活動する。
ただ、その時間は長くは続かない。
集中力が5分も続かない。
だが、一度途切れてもすぐにまた集中する。
それを繰り返して戦闘をしていた。
そんな青年の前に、白いフードをつけた人物が現れる。
青年の時間の中だ。
「おや? あなたは私に力をくれた方ですね」
青年は言う。
「お疲れ様ですね。 我々は帰らなければならない。 あなたにお貸ししたデス・ソードを返していただきにきました」
白いフードをつけた人物は言う。
「あはは・・どういうことでしょう? あなたは自由に振舞えと言った。 それを今更、
「すみませんね。 事情が変わったのです。 返納していただけますか?」
白いフードの人物はそういうと手を差し出す。
青年は、迷うことなく白いフードの男に斬りかかった。
白いフードの人物の差し出した手の部分が切断された。
切断された布のような袖が、ヒラヒラと揺れながら落ちていく。
落ちていく袖が、ヒラヒラと3度ほど揺れただろうか。
白いフードの人物が青年の後ろに居た。
そしてそのまま青年を黄色い色のデス・ソードで貫く。
青年は何もできないまま、背中から貫かれていた。
そのままスッとデス・ソードが抜かれ、青年は膝をついて倒れる。
「私が作ったものです。 それを扱えないでどうするのですか。 それにあなたが狩ったソウルをいただきますね」
白いフードを被った人物は言う。
そして、青年のデス・ソードをそっと取り上げると、笑う。
「フフ・・アハハハ・・・。 あなた、いったいどれほどのソウルを集めたのですか」
そういうと、白いフードを脱いでいた。
青年は薄れゆく意識の中でその顔を見た。
悪魔だ!
そう思ったが、もう力が入らないようだ。
フードの中の顔。
人間が想像で描きだした悪魔の姿そのものだった。
「あなた、失格です」
白いフードを被っていた人物は、そう告げると静かに消えた。
周囲の時間が戻る。
中国軍が目の前で倒れている金髪の青年を見つけた。
少しの間をおいて、青年の居る場所に向け砲撃。
戦車や装甲車などから一斉に砲撃が開始された。
ドン! ドン!
ドガガガ・・・!!!
・・・
・・
しばらく攻撃が続いていたが、攻撃が止む。
少しして、土埃などが落ち着いて来る。
青年がいた場所には大きな穴が開いていた。
攻撃していた連中は、少しの間静かにしていたが、やがて歓声が上がる。
「「うおぉぉ!!!」」
「「やったぞぉ!!」」
「「敵を倒したんだぁ!!」」
・・・
・・
その様子は全世界に配信されていた。
◇◇
佐藤刑事と杉田刑事も、リアルタイムで様子を見ていた。
そして、青年が砲撃を受けて跡形もなく消滅したのも確認。
二人ともテレビ画面を見て、言葉を失っている。
当分の間、放心状態だった。
◇
山本も杉田たちと同じような感じだった。
あの青年、死んだのか?
最後に映った時にうつ伏せで倒れていたようだった。
何があったんだ?
そんなことを思っていると、山本の前に白いフードを纏った人物が現れた。
俺は少し驚いたが、それだけだ。
「やぁ、驚かせたかな」
白いフードを被った人物は言う。
「いえ、大丈夫です」
「そうか、それは何より。 実はね、我々は帰らなければいけないのだよ。 だから君に預けていたデス・ソードを返してもらおうと思ってね」
白いフードを被った人物は言う。
俺は少し迷ったが、素直にデス・ソードを手にして、相手に渡した。
相手は少し驚いていたようだ。
「ふむ、君は素直だね。 ん? そうか、目的は果たせたというわけか。 それにしても君のソウルは美しいね」
白いフードを被った人物が言う。
俺は黙って聞いていた。
白いフードを被った人物は静かに俺を見つめているようだ。
「・・やはり、これは君に預けておこう」
白いフードを被った人物はそう言うと、またデス・ソードを俺に手渡してきた。
「どういうことですか?」
俺は思わず聞いていた。
「我々の種族は、この星から帰らなければいけないのだよ。 私は君に出会えてよかったと思っているよ。 それに君の得た能力はそのまま君のものだ。 では、さらばだ」
白いフードを被った人物はそう言うと消えようとしていた。
俺はその姿が消える前に聞いていた。
「あの・・またお会いすることはできますか?」
「フフ・・それはわからないね。 ただ、それを持っている限りチャンスはあるよ。 またね」
白いフードを被った人物は消えた。
俺は部屋でしばらく放心状態のような感じでいた。
いったい何が起こって何が変わったのだろうか?
夢だったのだろうか?
違う。
これからどうすればいいのだろう。
そんなことを考えながら、俺は横にあるデス・ソードを見つめていた。
◇◇
<杉田刑事の机>
杉田と佐藤は、しばらくテレビを見ていた。
佐藤がテレビを見たまま言う。
「杉田さん、あの事件・・このテレビに映った青年だったのでしょうか?」
「わからんな・・」
杉田は答える。
ただ、見て思ったことは、現実に受け入れるには無理があり過ぎるということだ。
◇
事実、後でメディアの放送では、リアルタイムで配信されていたにも関わらず、中国の自作自演の映画だったのじゃないのかと騒がれ始めた。
経済活動で中国を締め付ける欧米社会に対する嫌がらせのCMじゃないかとさえ言われていた。
そのうち、本物だ、作り物だとの議論がいろんなメディアで起こったが、知らない間に消えて行った。
アメリカのヒーローなども突然ただの人に戻ったという話だった。
フランスの魔女はどこかへ消えたという。
◇◇
北京のテロ事件から3か月後。
中国チベットの紛争も、いつの間にか以前の状態の戻っていた。
相変わらず世界は同じことの繰り返しだ。
杉田刑事と佐藤刑事は、特に担当する事件もなくいろんな部署の手伝いの連続だった。
「杉田さん、またあの事件ですよ・・いったい誰ですかね?」
「あぁ、あれか。 被害者がなぁ・・まぁ一応人の命だが、犯人を捜そうとしても行き詰まるからな。 誰も積極的に協力してはくれないしな」
「僕もこう言ってはなんですが、心臓破裂で死んだ被害者はクズですよ。 例外なくそんな連中です。 別に捜査しなくてもいいんじゃ・・」
佐藤がそこまでいうと、杉田が佐藤を見つめる。
「す、すみません、杉田さん」
「いや、いいんだ。 ただ俺たちは給料分の仕事だけはしないといけない」
「はい」
佐藤刑事は素直にうなずく。
「そうだ、佐藤。 俺がおごってやるから、あのカフェに行かないか?」
杉田がニヤッとしながら言う。
「杉田さん、あのカフェ好きですね。 彼は容疑者じゃないんでしょ?」
「まぁな。 ただ、あのコーヒーがおいしいんだよ」
杉田はそう言うと、佐藤と一緒に山本のカフェに向かって行った。
(完)
◇◇
お恥ずかしい限りです。
パッと浮かんだものを少し書き始めて、どうやって終わらせようかと考えておりました。
というのも、連想が続かないのです。
申し訳ありません。
そして、最後まで読んでくださった方々にお礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。
ただ、今世の中で起こっている理不尽なこと。
本当に許せない事案ばかりです。
そして、いろんな事件でどうして被害者が最後まで苦しまなければならない社会システムなのか。
それが常々心に残ります。
そういったことから浮かんだものだったのですが、すみません、力不足で続きませんでした。
またよろしくお願いします。
重ねてお礼申し上げます。
ありがとうございました。
ボケ猫。
絶望正義:死神? を魅了したようだ ボケ猫 @bokeneko
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