六、喜色満面

婦人警察官採用試験の二次試験結果は、不合格であった。


あまりにもがっくりきて、わたしはこの頃のことをあまり覚えていない。

コウジにももちろん報告したはずだが、どんな会話を交わしたか、まったく記憶にすらないのだ。


もともと婦警の採用試験を受けることにいい顔をしなかった高校の担任である神原先生に、わたしは落ちたと報告をした。神原先生はこれでもかというほどの喜色満面で言った。


「そうかそうか、落ちたか!おめでとう!!これからは大学受験のほうの勉強をがんばれ、な!」


先生、おめでとうはなかろう、おめでとう、は。


「はい、ここ受けとけ。はい、これも。あとは、ここも理系の学科あるけぇ。」


「・・・はーい。もう、先生の言うところ全部受ければいいんでしょ、受ければ」


進路指導室で、いたく落ち込んでいる傷心のわたしに、神原先生は何冊もの県内私立大学の入学願書の封筒を持って帰らせた。

もう、どうにでもなれと思った。私立はどこを受けても同じだと思った。


センター試験や国立大学の受験までに、一応滑り止めを受けておけということである。

後日、男子学生が9割以上の理系大学の化学科と、カトリック系でお嬢様学校の栄養学科、そして、家から割と近い短大の何かの学科〈失礼、覚えてもいない〉、そして医療系短大の臨床検査科を選んで願書を神原先生に渡した。


これら私立大学の受験は全部受かった。しかし、婦警になる道が閉ざされた今、わたしの本命は県内の国立大学農学部であった。

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