五、第一志望

二次試験会場に集まった一次試験通過者の女性たちは、30人くらいだった。

交通巡視員からの転職組も多いよとコウジから聞いていたのを証明するかのように、わたしと同じ高校生は少ない気がした。


二次試験は体力測定と面接で、体力測定の結果にはかなり自信があった。どの年上のお姉さんたちより、わたしのほうができた、と思った。問題は面接のほうだった。


面接はわたし一人に面接官が三人くらいいた。50代後半とおぼしき面接官の「日本の三大名園を述べてください」との質問に、「岡山の後楽園」と「金沢の兼六園」は答えられたものの、もう一つが全く分からず答えられなかった。


ほかにも志望動機なども聞かれ、その中でどうしても一つだけ解せない質問があった。それは、「あなたは大学に行くつもりはないのですか?」というものだった。わたしは、「警察官が第一志望なので、採用試験に受かったら大学には行きません」と答えた。面接官は大真面目な顔で「あなたは大学に進学した方がいいのではないですか」と言った。質問の意図が分からないわたしは、この場では少しでも本気を見せようと「いえ、大学には行きません」と強く言うしかなかった。


その日の夜、コウジに報告の電話をした。


「体力測定はばっちりできたよ!でも面接失敗したかも。一つ答えられんかったし、それに、なんで大学行けなんて言われたんじゃろ?」


「なんでじゃろうなぁ、わからんけど」


「手足が細いから体力ないって思われたのかなあ。でもそんなの理由にならんよね」


「まぁ、婦警さんたち、けっこうガタイいいのが多いよ」


「え?まじ?じゃぁ、あたし無理かも・・・」


「わ、わからんよ、結果待ってみるしかないじゃん」


結果の通知が来る日まで、何日もコウジと電話でこの会話をループするのであった。

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