四、一念発起
地元の県立高校普通科にはもともと大学受験を目指して入学したわけで、とりたてて成績も悪くはなかった。そして地元の国立大学にでも入れたらいいなくらいに、勉強と弓道部をそこそこ頑張っていた。
ところが、高校二年生になってすぐ、事件は起きた。今思うとそれは大事件であった。岡山県警が何十年ぶりかに婦人警察官を採用するというのだ。もちろん、コウジともその話になった。
「受けてみたらいいじゃん?頑張れよ」
「ほんとに?受かるかなぁ」
コウジとの電話で、普段から警察学校での教育などいろいろ聞いていたからか、仕事内容に不安はない。自分は正義感も強いと思っている節もあった。それに、体力にも多少なりとも自信があった。持久走は学年で二番目か三番目に速かったし、スポーツも全般的に得意だった。高校一年生の時にはクラブ活動で柔道を選択したこともPR材料になると思った。決して上手くはなかったが、弓道部での精神統一も糧になっていると自負していた。
理系の、それも大学受験を目指すクラスの担任はいい顔をしなかったが、わたしは一念発起して採用試験を受けることにした。
高校三年生の九月。
一次試験は、筆記試験と作文だった。筆記試験は超簡単で、ほとんどの問題が解けた。高校卒業程度の問題であるからして、毎日大学受験勉強をしている身のわたしには解けて当たり前であろう。
100倍以上の超難関だったはずの一次試験は、難なく通過した。コウジへの電話報告ももちろん怠りなかった。
「次は、体力測定と面接って書いてあるよ」
「大丈夫じゃろ、自分なら」
「そうだといいけどぉ」
黒電話を納戸の下の間に引っ張り込んで、コウジと長話するひとときが、受験生であるわたしの楽しみであった。ただし、あまり長話がすぎて母や祖父に怒られることもしょっちゅうだった。
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