一ノ瀬じゅんアフターストーリー第1話

この世界に、神はいるのだろうか?

こんな残酷な世界を、一体誰が作ったというのだろうか?

それでも、僕は、君を・・・君がいる世界を・・

愛している。


場面は一ノ瀬じゅんの夢


暗闇の中で女の子の声が聞こえる

女の子「じゅんくん・・・助けて・・・・じゅんくん!!!」


じゅん「・・!!」こ、ここは!?


なんの変哲も無い町、駅の改札を通るスーツ姿のサラリーマン、

高校生がだべりながら学校に向かっている


じゅん、しばしキョロキョロしたのち、

あくびをしてから、歩き出す

じゅん「そうだ、、学校行かなきゃ・・・」


駅の中の人ごみの中にじゅんがいる

駅の時計は7時30分を示している


横浜線が到着する




場面はじゅんが夢の中でふゆこになり、そのまま死亡するシーン



電車が八王子みなみ野に到着する


ドアが開き、人が出てくる


じゅんが出てきた時、目の前に女の子が通る


その瞬間、強烈な既視感とともに今まで感じたこともないような衝撃が走る。


視界がぐらつき、瞬間移動したような未知の感覚が襲う


次の瞬間、気づくとじゅんは自分の目の前にいた女の子になっている


下を向くと胸の膨らみがあり、


ふと顔を上げると、電車の窓にさっきまで目の前にいた女の子の顔が写っていた


じゅん「・・・なんだ・・これ」


さっきまで自分が立っていたはずの場所を確認しようとしたが


それを遮るように大量の人ごみが流れ込んでくる


人ごみに体が囚われて進行方向とは逆に流されていく。体に思ったように力が入らない。というかそもそも力がない


人ごみに押し出されよろけながら点字ブロックのあたりで踏みとどまると、


「こら!痴漢!!!待ちなさああい!!!!」という威勢のいい少女の声が鳴り響く


その瞬間、人ごみの中から小太りの中年男性が飛び出してきた。


そのすぐ後から紫色の長い髪の女の子が追いかけてくる。


男性、走りながら「ど、どけ!」


中年男性がじゅんの方向に向かってくるが、女の子の体は思ったより鈍く、全く身動きが取れない。次の瞬間、


「どん!!」という音がしたかと思ったらふわっと女の子の体が宙に浮いた


じゅん、線路に投げ出されると同時に


じゅんの視界の先に、巨大な鉄の塊が迫ってくる


電車 ガタンゴトン、プアアアアン!!!


じゅん「そんな・・・・待ってくれよ・・・・」



じゅんは、体がバラバラに引きちぎれるのがはっきりわかった。今まで感じたことのない強烈な痛みが押し寄せる。


じゅんの心の声「痛い、痛い、痛い!痛い!!」


男性「ヒ・・・、ヒィィィィ!!!」


男性を追いかけていた女の子は立ち尽くし、その頬にじゅんの血がかかる



その上で、駅の時計の針が8時ちょうどで止まっており秒針も止まっている



じゅんの心の中「なんで・・?、一体何が起こったんだ・・・」


「ここで、僕は死ぬのか・・?」


そして場面は真っ暗な空間になる


じゅん「嫌だ・・死にたくない・・・僕はまだ死にたくない!!!!」



じゅん、ベットから飛び起きながら「・・にたくない!!!」と叫ぶ



じゅんの部屋


じゅん「はぁ!・・はぁ!・・はぁ!・・・・」


スズメがチュンチュンと鳴いている


じゅん「ゆ・・・夢?」


体が五体満足であることを一通り確認してから「ふぅ・・・」と一息つく


夢で見た女の子の顔と時計の針を思い出しながら「あれは・・・なんだったのだろう」


「・・・ひょっとして、何かのメッセー・・「じゅんお兄ちゃあん!!!朝だよー!」


妹の鈴音が部屋のドアを勢いよく開ける


じゅん「うわわわ!!!」


鈴音「って起きてるし。珍しいねー!お兄ちゃんが寝坊しないなんて」


じゅん「そうなんだ。実は今日へんな夢をみたんだ。」

じゅん「僕がおん・・お・・・・」


(な、なぜ・・夢の内容が・・言葉にできない・・・・

映像としても、匂いも、痛みもまだ鮮明に覚えているのに・・・・!!!)


鈴音「ん?どうしたのですか?」

深刻そうなじゅんの顔を覗き込みながら


じゅん(夢の出来事を言葉にしようとすると、視界が暗くなり、息が苦しくなる・・・なんなんだこれは・・・)

鈴音に気づき、

じゅん「い、いや、大丈夫。なんでもないよ。」


鈴音「それはそうと、おにいちゃんの制服、ここに置いとくからね。」


じゅん「お、おぉ、ありがとう・・」


鈴音「今日から高校生なんだから、しっかりするのだぞー!!」



じゅん「鈴音もな。今日から中学生だな。」

鈴音の制服姿を眺めながら


鈴音「ふふーん。どうですどうですー?この制服は」

くるっと回ってみせる


じゅん「うん。かわいいと思うよ。」


鈴音 ニコッと微笑んで

鈴音「朝ごはんもうできてるよ!」


中略


鈴音 じゅん「ごちそうさまでした!」


鈴音「それじゃあお兄様、お気をつけて(ビシっ)」


じゅん「ああ。鈴音もな!」



バス停へ向かう道にて


じゅん、走りながら「まだ時間的に余裕あるけど、早めに向かって損はないよね」


バス停に紅葉ゆかりが立っている

じゅん、ゆかりに気づく


じゅん「おー、ゆかりさん」


ゆかり「おはよー」


じゅん「ゆかりさんもこの時間に?」


ゆかり「早めに出ておいて損はないだろうと思ってね」


じゅん「ふうん」


ゆかり「ところでじゅん、なんだか顔色がさえないよ。何かあったの?」


じゅん「実はね、今日、変な夢を見たんだ」


ゆかり「夢。ねぇ。。夢って不思議だよね。本人すらも知らない景色を、たまに見せて来たりするんだから。単なる脳が生み出す幻覚。ということで片付けてしまうなんてことは、私には難しいな」


じゅん「同感だよ。」


ゆかり「あるいは、私たちの生きる世界そのものが、誰かの見てる夢なのかも、しれないね」


じゅん「それって、つまり神様のことじゃないのか?」


ゆかり「どうなんだろうね。その、神様っていうのも、実は大したことない存在だったりしてね。」


じゅん「そんなものなのかね」


じゅん そんなこんなで、雑談をしていると、駅に向かうバスが到着した。


バスが発車する


バスが街の中を走り抜けていく。


じゅんの心の声


 僕の名前は一ノ瀬じゅんだ。平凡な家族に生まれ、平凡な幼少期を育ち、ひょんなことから人生がガラッと変わってしまい、数々の苦労や苦悩を抱えながらも、今日まで生きて来た。


僕は他人に誇れるようなものが正直言って何もない。だって僕は、無力で、それでいて何者でもないのだから。



実は僕とゆかりさんは、言ってしまえば幼馴染のような仲なのだ。


なぜ幼馴染のような仲なのかというと、僕とゆかりさんが出会ったのは中学生、つまり今からに、さんねん前の出来事になるのだが、


世間一般でいう幼馴染というものは、家が近所だとか、小学生の頃からの付き合いだとか、概ねそんなところだろう。


それに比べると僕とゆかりさんはまだ日が浅いのだが、それ以上にお互いのことをよく知っている、そんな仲なのであった。




バスが駅に到着


改札を通り、エスカレーターを使いホームヘ降りる。


ゆかり「なんか電車使うって新鮮だと思わない?」


じゅん「まあ今まではどこいくにもチャリ使ってたからね」


じゅん とはいえいつも通りの、いや、いつもと違うのは今日から高校生活が始まるということなのだが、それさえ除けば、なんら変わりのない日常。と言った感じの気分だった。


これからはかつて青春を共にした仲間が同じ学校にいない。ということだけが、僕の心を少し憂鬱な気持ちにさせるのだが。


=八王子方面行きの電車が到着する


ドアが開き、乗り込もうとしたが、かなり混雑している

じゅんが乗り込むとゆかりの乗れるスペースがなかった。


ゆかり、左右見渡し、「あっち空いてるみたいだから、あっちからのるね。」


じゅん「オーケー、じゃあ南野駅で。」


ゆかり 親指を立てながら「エル、プサイ、コングルゥ」


じゅん「はいはい」


=電車が出発する



じゅん 遡ること3年前、ちょっとしたことがきっかけで、僕は世界からけして解けることのない呪いをかけられてしまった。


それからは不幸が連続し、僕の生活はめちゃくちゃになってしまったのだ。ほとんど自暴自棄にになっていた僕を救ってくれたのは、紅葉ゆかりを含む、

同じように理不尽な環境に置かれながらもたくましく


生きていた、とある少年少女たちの姿だった。


いろいろな困難や仲間のピンチも乗り越え、僕たちは別々の進路に進んだわけだが、その絆は今も続いている。これからもまだ自分のことで悩むこともあるだろうけど、自分なりそれなりにうまくやっていくつもりだ。


じゅん、窓の外を眺めながら「ふーん、結構いい景色なんだなぁ」



そう。この時の僕はまだ知らなかったのだ。これから起こる奇妙でそれでいて衝撃的でなおかつ運命的な事件との出会いが訪れるということを。




 じゅんと ふゆ子が出会うシーン


だいぶ電車が混んで来た。


ぎゅうぎゅう詰めの車内に、お互いの手を固く握り締めながら、離れ離れにならないようにしている双子の女の子がいた。


片方は長い髪をしていて、もう片方は肩のあたりまで髪を伸ばしている。二人ともじゅんたちと同じ制服を着ていた。


髪のみじかい方「おねえ、私潰れちゃいそうだよう」


髪の長い方「しっかりしなさいよ!もうすぐで駅に着くんだから!」


短い方「うう〜ん、せっかく持って来た本が全然読めないや・・・」


長い方「ほら、ちゃんと捕まってて。」


短い方「うん、、わかった・・・・ひゃっ!」


長い方「どうしたの?」


短い方 小さな声で「な、何か、お尻触られてるかもしれない」


長い方「うそ、大丈夫?」


長い方が確認しようとするが、人が密集しすぎて身動きが取れない。


長い方 ・・ちょっと、なんで誰も気づいてないのよ。どうしたらいいのかしら・・


電車が減速を始める


長い方、限界まで背伸びをする。すると、短い方のすぐ後ろに男が立っていて、スカートの上から短い方の腰辺りを触っているのがわかった


長い方、「ちょっと、あんた、私の妹に何をしてるんだ!」


男性、驚いて手を引っ込める


電車が止まり、ドアが開く


(じゅん、双子の女の子、ふゆ子の三つのシーンが同時に進行していく)


ふゆこのシーンから


駅ホームの一番端っこに、ふゆ子は立っていた。


まっすぐ地平線に向かって収束していく線路をぼんやり眺めている


他の生徒たちは、期待に満ちた表情で改札に向かっていく


が、その中でただ一人、彼女だけは足を踏み出せずにいたのだ。


このまま逆方向の電車に乗り、帰ってしまおうか。


そんなことを考えていそうな表情をしている


先に到着した電車が帰る方向なら、その電車に乗ろう。もしこっちの電車が先に来たなら、学校へ行くことにしよう。


彼女は決心した


間も無く電車が来ますというアナウンスが、一番線と二番線、同時になりだした。


先に現れたのは、、、学校へ行くと決めた、一番線の電車だった。


ふゆ子は覚悟を決め、改札の方へ向かって歩きだした


双子のシーン


電車のドアが開くのと同時に、男性は髪の短い方と長い方を突き飛ばし、走りだした。


髪の短い方はよろけるが、長い方はしっかりと持ち直して「こら!!痴漢!!待ちなさああい!!」と叫びながら後を追う


じゅんのシーン


ドアが開く。電車から降りたじゅんはすぐ目の前の光景に驚愕した。


じゅん な、なんで夢で見た女の子がここにいるんだ・・!?


いや、なんというか、何もかもが夢で見た光景と同じだった

僕の夢の中では・・・この子は、というかこの子になった僕は、、この後死ぬ・・!!!!!


ふゆこがじゅんの方に視線をゆっくり向けるのと同時に、人混みが押し寄せて来る


ふゆこは人混みに抗えず流されていく


じゅん「あ、あの!待って!」じゅんが人混みをかき分けて、押し流されて行くふゆこに手を伸ばす


じゅん、人混みをなんとか抜け、そのまま勢いが余ってふゆこの肩を掴んでしまう


ふゆこ 怯えながら小声で「な、なんです・・?」


じゅん「あの、、えっと、、、」


じゅん 何やってるんだ僕、いくら夢でこの子を見かけたからって、これからこの子に危険が降りかかるかもしれないなんて、そんなのなんて説明する?そもそも言葉にすらできないじゃないか。


ふゆこ とてもかなしそうな顔で「私・・・何かいけないことしましたか・・?」


じゅん や、やばい、めちゃくちゃ警戒されている。。


その時、、後方の人混みから声がした。「こら!!痴漢!!待ちなさあああい!!!」


じゅん あれは・・・


じゅんを夢の中で突き飛ばして殺した男が、今、人混みからはい出ようとしている


じゅん「あ、、、あいつだ。・・・あいつが来たんだ・・・」


その男が、こっちに向かって走って来る


その奥から、電車がヘットライトを点灯させながらホームに入って来る


じゅん 全身が恐怖に包まれる。死が目前に迫っていることを感知した生存本能が、身体中の神経を圧迫した。


全身に汗がにじみ出て来る


男性「ど、どけ!!」


じゅん、恐怖で足が固まって動けない


じゅん こんなの、こんなの絶対に嫌だ。神様、これが運命だなんて僕は認めない 僕が、この手で変えてやる・・!この子は・・・この子だけは・・・!!!


じゅん 僕が・・・守るんだ・・・!!


じゅん 足が出なければもうこれしかない!!


とっさにふゆこを抱きしめる


ドン!!ふゆこと男性が衝突したのがわかった。


ふゆこの体が宙に浮き始め、線路のある方向に引っ張られてゆく


じゅん は、離すもんか・・!!!!!


力を振り絞ってふゆこを抱き寄せる


二人ぶんの体重は、男性の衝撃に耐える力を生み出した。


じゅんとふゆこは、に、さん歩よろけて、踏みとどまる。


二人のすれすれのところを、電車の壁がビュンビュンと通って行く


男性はバランスを崩して転ぶ


そこに紫色の髪の長い女の子が駆けつけて「観念しなさい!!この変態!!!」と怒鳴りつける


じゅん や、やった、、、生きてる。助けた、いや、なんとか助かったんだ。


ふゆ子 「あ、、の、、、痛い、、です」

体が震えている


じゅん「あ。。ご、、ごめんなさい!」


あまりの出来事に、じゅんはふゆこの体を力一杯掴んでいた


「あんたたち、怪我はない?」


双子の髪の長い方の子が心配そうに聞く


じゅん「う、うん。大丈夫」


ゆかりがこっちへ来る


ゆかり「じゅん、平気?今誰か叫んでたよね。痴漢、出たの?」


じゅん「あ、ああ。この人」


ゆかりは手際よく男性を拘束し、携帯を取り出す


そこへ駅員が駆けつけた


駅員「これ?これだね?」


ゆかり「お願いします!」


駅員三人がかりで押さえつけ暴れる男性は連行されていった。


髪の長い方「みんな、協力してくれてありがとう。私は神楽坂あんず。みんな一年生よね、これからよろしくね」


あんず「紹介するわ。こっちにいるのが私の双子の妹のゆずこよ。」


ゆずこ「た、助けてくれてどうもありがとうございます。よろしくです」ぺこりと深くお辞儀をする


じゅん「僕は一ノ瀬じゅん。こっちは友達の紅葉ゆかり」


ゆかり「どうも」


一同、「いや〜それにしてもびっくりだよね〜」って感じで雑談してる


じゅんの袖をチョンチョンと引っ張る


じゅん「ん?」


ふゆこ「あの、一ノ瀬、じゅんくん。さっきのって、よく考えたら助けて・・くれたんだよね・・?」


じゅん「あれは体がとっさに動いたというか、あれしか思いつかなかったというか・・・さっきはいきなり抱きついたりして、ほんと、悪かったと思ってるよ。えっと


ふゆこ「御子神、ふゆこ。」


じゅん「御子神さん、よろしくね」


ふゆこ「う、うん・・よろしく」


じゅん その時の彼女の、無理やり作ったようなぎこちない笑顔が、僕は少し心がかりだった。何かを抱えてそうな感じというか、何かを恐れている感じだった


それでも、僕はいい気分だった。自分が救われたことがあっても、人の命を救ったのは、僕の人生で初めての経験だった。


人を助けるって言うことは、こんなにも気分のいいことなのか。


これが、僕、一ノ瀬じゅんと御子神ふゆ子の最初の出会いである。



こうして僕の、新たな物語が、幕をあけるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君が愛した世界で 原稿、シナリオ等 @RMB

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る