第218話 ゲンジロウの戦い (2)

自分でも、友魔の力は恐ろしいと思うのだから、相手からしてみれば、それどころの話ではないだろう。


ソウタは、俺の鬼火の事をある程度知っている為、はなちの対策として、鉄の大盾を用意していた。


槍兵の後ろにピッタリと隙間なく、兵士達が鉄の盾を構えている。

表面に走った青い炎は、鉄の盾に当たるが、流石に燃やす事までは出来ず、消えていく。

鉄の盾を関係無く吹き飛ばす魔法も無くはないが…友魔の魔法は、無限に使えるわけではない。

それぞれの魔法には、それぞれの魔力量が有り、一日で使える量が決まっている。

数回で使えなくなるような事は無いが、この後の戦闘を考えると、あまりここで消耗し過ぎるわけにはいかない。


「なかなか厳しい戦いをいられるな…」


「掛かれ!」


ザッザッ!


大盾を構えた男達が、一歩ずつ前進し、俺の方へと寄ってくる。

たった一人に対して仕掛ける戦い方ではないだろう。と、悪態を吐きたくなるが、言っても仕方がない。


「ここで死ぬわけにはいかないからな。悪いが……押し通る!」


俺は魔力消費の少ない。纏だけを使い、大盾部隊へと突っ込む。


「うおぉぉらぁぁ!」


ガンッ!!


右足で大盾を蹴り付けると、大きく盾が後ろへと傾く。


「突けぇ!」


「ちっ!」


盾を剥ぎ取って無理矢理こじ開けようとしたが、そうはさせないと、大盾の後ろから槍が突き出てくる。

乗り越えてしまいたかったが、流石にそれは無理な話だったらしい。

あまり離れ過ぎると、また矢が降ってきてしまう。ここは大盾に張り付いて、どうにか突破するしかない。


的を絞らせないように、俺は右に左にと移動しながら、盾の隙間を狙ってみるが、その度に槍が飛び出してくる。

飛び越えても着地点など無いし、側面や背面に回り込もうとしても、堀が邪魔でそういうわけにもいかない。

確かにこれだけ強固な守りだと、崩すのは至難。

しかし…崩す事も出来ないが、相手もまた、俺を仕留める事が出来ない。これでは時間だけが……いや、それが狙いか。


「気付いたらしいな。そろそろ来るぞ!全員気を引き締めろ!」


ソウタの掛け声に反応し、大盾をガッシリと構える兵士達。


ソウタ達は正門へ向かってくる敵を退しりぞけ続ければ、それで良い。

中で何をしているのか分からないが、そいつらが事を終えるまでのを。

最初から俺の事を仕留める気など無かったという事だ。あわよくば、程度にしか考えていないとなれば、全員で取り囲んで来ない理由も頷ける。

盾で守り、離れたら矢を放つ。それを繰り返しているだけでかなりの時間が稼げるだろう。相手が俺でなかったならば。


盾の前を左右へ移動しながら、神力を操作し、手足に集中させていく。

簡単に言ってしまえば、筋力の増強だが、攻撃に合わせて神力を操作し、より衝撃を増加させる。簡単な事ではないが、これさえ出来れば、自分の力は何倍にも膨れ上がる。


「うおおおぉぉぉぉ!!」


ガンッ!!


大盾に、再度右足を突き出すと、先程より抵抗が強い。

ソウタの一言で、大盾の後ろに居た者達が、よりガッシリと構えたからだろう。だが…だからどうしたと言うのだ。


「っ?!」

ズガガガガガッ!


足蹴あしげにした者は、大盾ごと後ろへ数メートル吹き飛び、待機していた槍兵に当たる。

予想していなかったらしく、槍兵は盾を構えた兵士と共に地面に転がる。

周囲に居た者達は、何が起きたのか理解出来ないといった顔で、転げた二人を見詰めている。


「馬鹿者!!穴を早く塞げ!!」


吹き飛ばされた盾兵の穴を、左右の兵士が塞ごうと動き出すが、もう遅い。


ザシュッガシュッ!


左右の、盾を構えた兵士の首を、ね飛ばす。

神力を用いて腕力を上げ、更に纏を使った一撃だ。痛みも無く一瞬で死ねただろう。


ガランガランッ!


構えていた盾が前へと倒れ、重い金属音を響かせる。


「盾兵!直ぐに取り囲め!!」


ソウタの指揮は的確で素早い。だが、取り囲まれるまで待ってやるつもりなど無い。


「はあぁぁ!」


ザシュッガシュッザシュッ!

「ぎぃぁぁぁ!」

「ぐあっ!」

「うがぁっ!」


相手の体勢が整うより早く、俺は敵陣の奥へと斬り込んでいく。この機会を逃せば、次に来るかも分からない機会を待つしかなくなる。


「くそっ!抑えろ!抑えろぉ!」

「囲めぇ!」


俺が内部に斬り込んだ事で、兵士達の足並みが揃わなくなっていく。それは狙い通りだが、百人強の敵のど真ん中に潜り込んだ事に変わりは無い。三百六十度全て敵。


「うおぉぉらぁぁ!」


ズバンッ!!


横薙ぎの一撃を振ると、甲冑をも切り裂き、数人の兵士達を両断し、吹き飛ばす。

纏の効果で、飛んでいく者達は炎に包まれ、周囲に飛び火し、被害を拡大。これを繰り返す事で、相手の陣形を一気に崩していく。


「おおおぉぉぉ!!」


ガシュッ!ザシュッ!


次々と襲い来る相手を、ひたすらに斬り続ける。

こんな乱戦は、ダンジョン内以外では初めてだ。争いと言っても、いざこざを収めるくらいで、本当のいくさというのは、昔話に聞かされるくらいのもの。

話に聞くのと、実際にその中に入って体験するのでは、全くの別物。また、モンスターとの戦闘とも大きく違う。

相手は、あの手この手を駆使して攻撃を仕掛けてくるし、陣形にも意味が有る。


流石にこれだけの数を相手に、無傷というわけにもいかず、俺は身体中に浅い傷を受けるが、致命傷や、出血の多い傷は受けていない。


「おらあぁぁぁぁ!」


ガシュッ!ガキンッ!ザシュッ!


「殺れぇ!」

「相手はたった一人だぞ!」


ガキンッ!ザシュッ!


もう何を斬って、何を避けているのか分からない。

襲ってくる連中の殺気が全身に隈無くまなく当てられる。


遠方での生活が、不自由で嫌になったと言っていたが、彼らの殺気や恐れぬ心を育てたのは、間違いなく遠方での生活だ。

お上の狙い通り、彼らは強くなった。思わぬ形でそれを知る事になってしまったが。


「はあぁぁっ!」


「っ!!」


ガキンッ!ザシュッ!


振り下ろされる刃を弾き、返しの刃を喉元に走らせる。


「覚悟ぉ!」


「っ!!」


ガシュッ!


背後からの一撃を、体を捻り避けてから、鳩尾みぞおち辺りに、刃を突き通す。

直ぐに相手を足で蹴り、刃を引き抜き、近場の相手の首を刎ねる。


「おおぉぉぉ!」


ザシュッ!


「っ!!」


側面から突き出された槍を、上手く避けたが、神力の使い手だったらしく、腕に浅い傷を受ける。


剛旋ごうせん!」


ザシュッガシュッザシュッ!


一回転し、周囲の敵を一気に切り裂き、吹き飛ばす。


ゴウッ!

「ぐあぁぁっ!あぢぃぃ!」


吹き飛ばされた者が周囲に青い炎を撒き散らし、次々と炭へと変わっていく。


剛連撃ごうれんげき!!」


ザンッザンッザシュッ!


三連撃によって、更に三人を吹き飛ばし、更に奥へと斬り込んでいく。


「させるか!」


ガスッ!ザンッ!


突き出された槍を避け、木製の柄を切り落とし、そのまま首を刎ねる。


ヒュヒュン!

ゴウッ!


飛んできた矢を斬り落とすと、矢は一瞬で燃え尽きる。


奥に居る者達から、魔法陣の光が発せられる。

上手く魔法まで絡めてくるとは…


ブンッ!!


目の前の敵から奪った槍を、魔法陣の光の方へと投げ付ける。


ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!


その間に居た者達の首を貫通し、魔法を放とうとしていた兵士の一人をも貫く。


ズガガガガガッ!

「なんのっ!!」


止められなかった魔法部隊から放たれた石槍いしやりを、刀で打ち落としてみせる。


そしてまた、近くの兵士達を斬る。とにかく次から次へと兵士達を斬り続ける。


そんな戦いを、どれだけの時間繰り返しただろうか。


気が付けば、敵兵のほとんどは、血を流し地に伏せているか、燃え尽きて炭となっているか、もしくは戦闘不能の傷を負っているか…となっていた。


濃厚過ぎる血の臭いを嗅ぎ続けた事で、鼻はもう利かなくなっている。


「はぁ………はぁ………」


「何て奴だ…こっちは百人以上居たというのに…」


息があがり、全身に浅い傷を作ってしまったが、やっとソウタの前に立つことが出来た。


「これが四鬼か…尋常ではないな。

昔話に出てくる赤鬼とたがわぬ姿だ。」


言われて気が付いたが、手足、服、顔…全身に返り血を浴びて、ベトベトだ。


「はぁ………はぁ……」


「しかし。随分と消耗したようだな。」


ソウタは、スラッと刀を抜き取り、俺に向けて構える。


残るはソウタと、その周りに居る者達だけ。全部で二十弱といったところか。

我ながらとんでもない事をやってのけたな…


ソウタの言う通り、体力はかなり消耗したが、倒れる程ではないし、鬼火の魔法もまだまだ温存出来ている。

流石に纏の効果は既に消えてしまったが…


「ふぅー……」


息を整え、頬を伝って落ちていく血を、腕で拭い取る。ヌチャッと音がして、気持ちの悪い感触が頬に残る。腕にも返り血がたっぷり付着しているため、拭い取ったのかどうなのか分からない。


「ソウタ。悪いが俺は門の先に用がある。退いてもらうぞ。」


「……我々だけでは、大した時間稼ぎにもならなかったか……

だが、もう少しだけ……いや。最後まで付き合ってもらうぞ。」


チャキッ…


ソウタが刀を構えると、残った兵士達が、俺を取り囲むように移動する。


「最後は面倒な駆け引きは無しだ。単純な力押し。悪いが受けてもらうぞ。」


「元よりしかばねを越えていくつもりだ。」


ソウタの構えは、顔の横に柄を持ち上げ、刀を立てるもの。大きく股を開き、僅かに顎を引く。


「一対一で勝てる気などせんからな。全員でいかせてもらう。」


「…………」


「……………掛かれっ!!」


ソウタの声を聞いた兵士のうち、二人が同時に走り出してくる。

左右で挟む気だ。


逃げ場は無い。


ならば、斬る!


俺は挟み込まれるより数瞬先に、右手の兵士へ刀を振る。


ガキィィィン!


斬る事を目的とした攻撃ではなく、振られる刀を弾く、斬り上げの一撃。


俺の力に負けた兵士は、大きく後ろへと一歩下がる。


「やあぁぁぁ!!」


同時に飛び出してきていたもう一人が、背後から一撃を繰り出してくる。


俺は振り向きながらも足を横へと運び、振り上げた刀を引き戻しつつ、相手の胴へと走らせる。


ズバッ!


抜き胴と呼ばれる一撃により、甲冑を切り裂いた刃が、兵士の腹を半分切り裂く。まだ息はあるだろうが、助かる道は無いだろう。


「「「はあぁぁっ!」」」


仲間の死に、一切の躊躇ちゅうちょを見せず、最初に刀を弾いた相手と、更に二人が詰め寄ってくる。

一人は槍を持っている。


「おおぉっ!」


槍使いは、神力で体の動きを補助し、速くしているらしく、一瞬で刃を目の前まで突き出してくる。

残った連中は、先程までに倒した者達より、更に強いようだ。


「っ!!」


首を捻り、刃先を避けるが、頬を掠め、チリッとした痛みが伝わってくる。

しかし、その程度の痛みは、既に感じていないのと同じ。俺はひるむことなく、突き出された槍の柄を掴む。


「くっ!」


槍から俺の手を外そうと動かしているが、力で俺に勝てるはずがない。


「「はぁぁっ!」」


残った二人が俺に向かって刀を振り下ろすのに合わせて、掴んだ槍をグイッと引っ張る。


ザシュッザシュッ!

「ぐあぁぁっ!」


二人が振り下ろした刃は、俺ではなく、槍を引っ張られた事でよろけて入ってきた兵士の背に当たる。


「「っ?!」」


仲間を攻撃してしまった事に驚いた二人が、一瞬動きを止める。

その隙を見逃すはずもなく、俺は二人の喉元を一太刀で掻き切る。


ザシュッ!

「ご…ゴポッ……」


ドチャッ……


「……我々が長年掛けて磨き続けてきた連携や剣術が、ここまで簡単に破られるとはな…」


ものの数秒で四人を殺した。

連携も剣術も、ヒヤッとする程のものだった。

しかし………


「四鬼の首、そう簡単に取れると思うなよ。」


俺にも負けられない理由がある。


ササキ家は、この戦いに負ければ、間違いなく地位も、立場も無くなり、最悪、一族全員が処罰を受ける。死という処罰を。

だからこそ、後ろへ下がる事が出来ない、この場所を選んだのだろう。下がる事、つまり、逃げる事は許されないのだ。


互いに背負うものがある。だが、俺の後ろには、街の者達全員の命、そして、それに繋がる者達の思いが有る。


背負うものの大きさだけが、勝負の全てを決めるとは思っていない。だが…自分達の境遇から逃げた彼らは、重荷を捨ててしまった。それが刃の重さに表れたのではないだろうか。


「ゲンジロウ。」


「なんだ?」


ソウタは構えを解かずに語り掛けてくる。


「ここまで来て虫の良い話だと、分かってはいるが……もし、このまま俺が負けたとして…その時は、俺の首一つで許してはくれないだろうか。」


「師匠?!何を!!」


「我々とて鬼士!死ぬ覚悟は出来ております!」


ソウタの言葉に、周りに居た者達が声を上げる。


「それは虫が良すぎるだろう。」


「分かっている…分かっているが……こいつらまで斬られれば、我が剣術は途絶えてしまう。

あれだけいた者達が、全て死んだ。今更俺だけ助かろうなどとは口が裂けようとも言わぬ。だが、せめてこいつらだけでも……こいつらは俺の決定に従っただけなのだ。」


「……事が終われば、処罰が有る。それはどうする事もできない。」


「………」


「だが、剣術を伝えていく事が出来る程度に、減刑を申し出てやる。」


「……ははははは!デカいなぁ!男としての器が違う!まさか受け入れて貰えるとは夢にも思わなかった!」


「師匠!!」


「お前達。話は聞いたであろう。

拾える命を敢えて捨てる必要などない。お前達は生きるのだ。」


「そんな!あんまりです!」

「俺達も一緒に戦います!」


ソウタの言葉に、周りの者達が異を唱える。


目の前で殺されていった仲間達が百人以上。自分達だけおめおめと生き残ることなど出来ない。そう思っているのだろう。

俺も逆の立場ならそう思うだろうし、気持ちは分かる。


「ならん。」


「覚悟なら出来ております!」


「お前達の覚悟を疑っているのではない。

そうだな………言うなれば、俺の我儘わがままだ。」


ソウタに比べ、周りに居る者達は、年齢も若く、人生もこれから。後人を育てる者として、そういう若い者達の死がどれほどの損失になるか、それはよく分かっているつもりだ。

剣術がどうこうとは言っていたが、本心は、若い者に生きていて欲しい。多分、それだけだろう。目を見れば分かる。


「聞き分けてくれ。」


「師匠……」

「くっ…うぅ……」


「何を泣くか。お前達は俺が負けると思っているのか?俺は負ける気など微塵も無いぞ。」


「…いえ………いえ!師匠が負けるはずがありません!ご武運を!」


「よし。お前達は手を出すなよ。何があってもだ。

そして、もう一つ。何があっても、ゲンジロウを恨むな。

これは鬼士としての…いや。違うな。

男と男の勝負。勝っても負けても、恨みはここに置いていけ。」


「「「「はい!!」」」」


何故か俺が悪者になった気がしてくる。

ソウタが意地を張らずに、退いてくれれば、それで良いのだが…ここへ来ると決めた時点で、ソウタの道は、俺を殺すか、自分が死ぬか…その二択となった。

なにより、俺の周りに広がる死体の山が、ソウタに逃げる道など与えない。


「こちらの事で時間を取らせてすまなかったな。」


「気にするな。そこまで無粋ぶすいではない。」


「……まさか俺が、四鬼と本気で刃を交えるとはな。」


おくしたのか?」


「まさか。これ程に心躍こころおどる相手と刃を交えられるのだぞ。年甲斐としがいもなくワクワクしておるところよ。」


「……そうか。」


チャキッ……


俺は刀を下段に構え、ソウタは先程と同じように、刀を立てて構える。


「…………………」


「……………」


「……参る!!」


ダッ!!


ソウタは構えを崩さず、地面を蹴り前に出る。

滑らかな足運び、殺気、姿勢、視線…どこを取っても、一流のそれだ。


ガキィィン!


重く、体重の乗った一撃。


ズッシリとした斬撃の重みが、両腕に伝わってくる。これ程の実力がありながら、鬼士隊などの口車に乗せられてしまったと考えると、実に惜しい。

彼等が反旗はんきひるがえさなければ、共に同じ側に立って戦う事もあっただろうに。


「はあぁぁっ!」


ガキンッ!ギリギリッ…


もう一度打ち込んできた刀を受け止め、鍔迫つばぜり合いとなる。


ソウタの目はギラギラとしており、決死の覚悟が感じられる。今更、交わす言葉など無い。


ガキンッ!


交えていた刀を、大きく押し返す。力で負ける気はしない。


「来い!!ゲンジロウ!!」


「おう!!」


大きく一歩を踏み出し、下から上へと剣を振る。


「剛上!!」


ガギィン!


神力をも合わせた剛上は、刀のみを振るそれとは威力が桁違いだ。


「ぬぅっ!」


しかし、ソウタはその一撃を受け止める。体が多少浮いた程度で抑え切る。

ソウタの剣術は、守りに重きを置いた剣術だと聞いた事がある。実際に見たのは初めてだが、神力を盾のようにして使い、相手の攻撃を上手く抑え込むらしい。


言葉で言う程簡単な事ではない。たゆまぬ努力と、研鑽けんさんの日々が無ければ、俺の一撃を受け止め切る事は出来ない。


しかし、俺の攻撃はここで終わりではない。


「剛下!!」


ガギィン!

「ぬぐぅっ!なんの!!」


ソウタは剛下を受け切れず、半歩後ろへと下がる。しかし、根性で体勢を立て直す。


「剛旋!」


ガギィィン!

「くっ!!」


体を回転させ、遠心力も足された斬撃は、ソウタの刀を弾き飛ばす。


「剛突!!」


ザシュッ!!


「「「「師匠ぉ!!」」」」


俺の繰り出した突き技が、ソウタの胸部を貫通する。

急所のど真ん中。回復魔法を使える者はこの場に居ないようだし、ソウタが生き残る事は出来ないだろう。


「……ゴフッ……」


俺の突き刺した刀に視線を落とし、口から血を吐き出すソウタ。


「これが……四鬼か……」


ソウタはどこか嬉しそうな、満足気な顔をして俺を見る。

死ぬまでの時間を痛い思いで埋める必要は無い。


ザシュッ!ズバッ!!


胸から抜いた刀を、横一文字に振り、ソウタの首を刎ねる。


「師匠ぉぉ!!」


この戦いが、俺達の勝利で終われば、彼らにはキツい処罰が待っている。逆に、鬼士隊が勝ったとしても、頭の無くなった組織を高待遇で迎え入れるような奴らではないだろう。

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