第97話 復讐心

闇魔法、十六夜いざよいは強力だが、突き詰めれば物理攻撃とあまり変わらない。自分で剣を振っていない分、繊細な剣筋は期待できないし……大規模戦闘に関する考えをもっと煮詰につめた方が良いだろう。

そんな事をぐるぐると考えていると、直ぐに黒雲山に辿り着いた。


「んー!帰ったかーー!!」


黒雲山の麓には、傷ついた巨人族と、それを治療するミルナレとザンティの姿。


「ここで治療しているのか?」


「全員かすり傷だからな!こんなもん舐めておきゃ治るってのによ!」


バシン!

「いだぁぁぁぁ!!」


傷口を躊躇うことなく叩くザンティ。鬼かよ…


「ニルはどうだ?」


ミルナレがニルをてくれているらしく、黙っていることが出来ずに聞いてしまう。


「………大丈夫。気を失っているだけさ。そのうち目が覚める。」


「…はぁー……良かった。ありがとう。」


「状態を見ただけさ。」


礼なんかいらないよ、と手をひらひらさせるミルナレ。


「色々と話はあるが、今はとりあえず休め。話は起きてからだ。」


「助かるよ…正直さっきから横になりたくてたまらなかったんだよ。」


「どわっはっは!寝ろ寝ろぉ!」


ザンティに促されるまま、俺はニルの横に体を横たえる。

俺もニルも血に塗れているが、綺麗にしてやる魔力も体力も残っていない。

起きたら、まずは全身の洗浄からだな………


ーー・--・--・--・--・--・--



「…………でよぉ!」


「…………だろ!」


周りの騒がしさに、意識が浮上していく。


「あんた達!ここには怪我人も居るんだから静かになさい!」


ゴンッ!


「ぶわっはっは!」

「ぐわっはっは!」


あの独特の笑い声は、アンティとカンティだ。


瞼を開くと、いつの間に運んでくれたのか、俺とニルは黒雲山の横穴の中で横になっていた。

運ばれても起きないとか…どれだけ熟睡していたんだ…?


「ぬ!起きたかシンヤ!」


「む!起きたみたいだねシンヤ!」


「だから静かになさい!」


ゴンッ!


「ぶわっはっは!」

「ぐわっはっは!」


横穴の中でも関係ないと豪快に笑うアンティとカンティ。彼らも怪我人としてここに居るはずなのだが……相変わらずらしい。


横を見ると、ニルはまだ寝息を立てている。顔色も悪くないし、ミルナレの太鼓判も貰っている。心配はいらないとは分かっているが…どうしても心配になってしまう。


「シンヤ!調子はどうだ?」


「あ、ああ。体の調子は悪くないみたいだ。」


肩や首を回してみるが、痛みやだるさは無い。


「そいつは良かった!父ちゃんが話があるから大丈夫そうなら集落に来いってよ!」


「……そうか。分かった。直ぐに向かうよ。」


ニルを一度見て、アンティに返事を返す。


黒雲山を出て集落に向かうと、ザンティが他の巨人達に指示を出しながら忙しそうに動いているところだった。


「ん!来たかシンヤ!」


「皆…何やってんだ?」


「集落の場所を移すんだよ。今回の事で神聖騎士団とやらがどんな連中か分かったからな。ここに居座り続けていたら、次々と襲ってくる可能性が高い。あの聖女とやらがこちらに渡ったと知られれば尚更だ。全滅させた上に、聖女が死んだように偽装しておいたから知られる事は無いと思うが、念の為にな。」


愛聖騎士は殺したが、それで神聖騎士団が全滅したわけではない。氷山の一角を削り落としただけだ。ザンティの読みは恐らく正しい。聖女が死んだと判断してくれたとしても、巨人族の力を諦めるとは考えにくい。


「どこへ移動するんだ?」


「この辺りなら別にどこでも変わらねぇさ。山に穴空けりゃそれで良いからな。」


言っている事のスケールがデカいなぁ…


「気にすんな。元々俺達は食い物の近くに穴掘って暮らしているから、移動は得意なんだ。」


「そうか…」


巻き込んですまない…今その言葉を言うのは違う…と思って、言葉を続けられなかった。


「……シンヤ。」


「なんだ?」


「俺は族王ではあるが、巨人族の事のほとんどは、既にアンティとカンティに任せてある。

だから、あいつらの決定に文句を挟むつもりは無ぇ。しっかりと集落の連中とも話し合ったからな。」


「……ああ。」


「だが、やるからには、勝てよ。この喧嘩。」


「当然だ。」


「……どわっはっは!それなら良い!ほれ!」


ザンティが渡してきたのは、書簡…?他の書簡に比べて四倍はあるサイズだが…


「そんな細けぇのを書くのは二度とごめんだぜ!」


「……良いのか?」


この書簡を渡すという事は、アンティとカンティとの約束とはまた違ったものになる。

巨人族は、全面的に俺達の側に付くという証になるのだ。アンティやカンティが個人的に助けてくれるという意味とは違う。もし戦争に負けたりしたら、巨人族全体が危険に晒されてしまう。


「実際にその時が来たら、巨人族から出せるのは四人。それは変わらねぇ。だが、これは俺達巨人族の総意だ。

今回の戦闘は本来ならば俺達がやらなきゃならない戦闘だった。そんな戦闘に参加したばかりか、自分達が一番辛い場所に立ってくれたと聞いた。

そうして命を賭けてくれたの為に、俺達が命を賭けないなんて、おかしな話じゃねぇか。これくらいはしなきゃ巨人族の名がすたるってもんだぜ。

それに、たった今言ったろ。この喧嘩に勝つってよ。

男に二言にごんは無ぇ。そうだろう?」


「……ああ。」


「どわっはっは!それで良い!」


バシバシと手を叩いて喜ぶザンティ。


また負けられない理由が一つ増えたな…


「んーし。俺の用事は済んだ。昨日連れてきた女は向こうに寝かせてある。話があるんだろう?」


「ああ。助かるよ。」


ザンティも礼は要らねぇと手をひらひらさせる。


ザンティの言っていた場所へ向かうと、聖女は山肌に小さく開けられた穴の中で壁に背を預けて座り、俯いていた。

近くにゼイブが見張りとしてついていて、大きな岩に腰を下ろしている。


「ゼイブ。」


「おぉ。来たか。さっき起きたみたいだぜ。」


「色々と助かったよ。」


「今更水臭ぇこと言うなっての。」


「ご主人様ー!」


ゼイブと話をしていると、俺を呼びながら、全力で走ってくるニルの姿が後方に見える。本気の走りだ。かなり弱っていたと思っていたのだが…


「お、おい!ニル!そんなに走るな!」


「はぁ…はぁ…」


俺の近くまで来ると、肩で息をするニル。さっきまで倒れていたはずなのに、こんなに動いて大丈夫なのか…?


「ニル。起きたばかりなんだから、もっと大人しくしていろ。」


「はぁ…はぁ…いえ……もう大丈夫です!」


ずいっと俺に向かって近付いてくるニル。


「凄い気迫だな?!」


「はい!」


カナリアと戦った時のように、魔力がほぼ無くなった為、体が強制的にスリープ状態に移行したのだと思うが、あの時は意識があったのに対し、今回は気を失っていた。

それだけギリギリの状態だったのだと思うし、もう少し休んでいてもらいたいが…本人がここまで言っていて、実際全力で走って来たとなると、ダメだとも言いにくい。

もう少し自分の体もいたわって欲しいところだが…しばらくの間は俺が気を付けて見ておこう。


「あ!ゼイブさん!おはようございます!」


「おう!元気になったみたいだな。」


「はい!」


「でも、気を付けるんだぞ。また倒れたりしたら、その方が手が掛かるからな。」


「う……はい…」


ゼイブさんマジかっけぇ。俺もこんなイケメンになりたい。


「ご主人様は、聖女に会いに来たのですよね?」


「ああ。」


「あれですか…?」


奥で俯いている聖女に目を向けて聞いてくるニル。


「恐らくな。そういう事も含めて今から聞くんだ。」


「あの…ご主人様を傷つけたクズは違ったのですか?死んだと聞きましたが。」


「あー…あれは愛聖騎士で、ジェイクというだ。」


「そうだったのですね……」


何故か納得したような反応を見せるニル。


「あまり驚かないんだな?」


「あ、はい。何か違和感のある者だったので、男と言われて納得しました。」


「女性の勘か…?凄いな……それより。クズなんて言葉、女性が使う言葉じゃないぞ。」


「も、申し訳ございません。そうですね。言葉を変えますね。

あの生きる価値の無い、塵芥ちりあくたにも劣る方。ですね。」


「お、おぅ…」


ダメだ。余計酷くなってしまった…

ニルにとっては、死んだ後でも許せない程に憎い相手なのだろうけれど…言葉も交わしていないし、奴が男だという事でさえ今の今まで知らなかったのに…そんなに俺に触れようとした事が気に入らなかったのだろうか…?


「死んだ者の事より、今は聖女の事を聞きましょう。」


「…そうだな。」


山肌が軽く抉られた場所で、壁に背を預けて座る聖女。動く気も抗う気も無さそうだ。


「…大丈夫か?」


「え…あっ!」


俺が聖女に近寄って話しかけると、俺の顔を見て、焦ったように姿勢を正す。

汚れてボサボサ、伸びっぱなしの白い髪と、濁った緑色の瞳、長い耳、そして全身ガリガリのエルフ女性。

昨日体に巻き付けた天幕の切れ端を未だ体に巻きつけている。


「体は大丈夫なのか?」


「は、はい。治癒魔法を使いました。

先程は応急手当。ありがとうございました。」


頭を下げる聖女。


「いくつか聞きたい事があるんだが。」


「何でも聞いて下さい。私の知っている事であれば、何でも答えます。

特に……あいつらを皆殺しにする為の情報ならば、喜んで話します。」


彼女の濁った目は、神聖騎士団を殺す為と言った時だけ、強く、鈍い光を放つ。


「その目は信じるに値する目だと思うが…」


「ご主人様。もし彼女の言葉を信じるか迷っているのであれば、これをお使いください。」


ニルが見た事のあるプレートを手渡してくる。


ニルを買った時に奴隷商人から預かった、奴隷の所有権を証明する為のプレートだ。


「今、彼女には主がいない状態です。なので、ご主人様を一度主人として登録し、質問し終わった後、登録を解除すれば良いかと。」


仮登録的な事だろう。確かにその方法ならば彼女が俺に嘘を吐く事は出来なくなる。


「こんな物、どこから…?」


「神聖騎士団の連中の遺体を調べた時に、出てきたそうです。」


「そうだったか…」


「それで私の事を信じられるのであれば、是非ぜひそうして下さい。その方が早いですし、私は一向に構いません。」


聖女が俺の目を見て、ハッキリと言い切る。


「……そうか。それなら、悪いがこれを使わせてもらうぞ。」


「はい。」


魔力を流し込み、俺を聖女の主として一時的に登録する。


「よし。それじゃあ始めようか。嘘を吐くなよ。」


「はい。」


最初から核心かくしんに迫っても良いが…少し彼女と会話をしてからにしよう。どんな人物かも知っておきたい。


「まず…そうだな。名前を教えてもらえるか?」


「私の名前は、ルファナと申します。」


「俺はシンヤ。こっちはニルだ。

まず、ルファナは聖女と呼ばれる治癒魔法の使い手なのか?」


「はい。聖女…という言葉が適切なのかは分かりませんが、治癒魔法を使う事が出来ます。」


「……聖女についてほとんど何も知らなくてな。知っていることを教えてもらえるか?」


「分かりました。」


小さく頷いた後、ルファナは知っていることを話し始める。


「まず、聖女と神聖騎士団に呼ばれている存在は、光魔法に属する、治癒魔法を使う事が出来ます。治癒魔法のみ…といった方が正確ですね。」


「のみ…という事は、治癒魔法以外の魔法は使えないのか?」


「はい。治癒魔法以外の魔法は、生活で使うレベルの簡単な魔法さえ使えません。加えて、治癒魔法の適正は、女性にしか発現しません。

それが何故なのか…というのは、少なくとも私の知る限り、どちらも明確にはなっていませんでした。」


理由については、治癒魔法を使えない俺とニルにとって、あまり関係の無い話か。


「治癒魔法ってのは、どんな魔法なんだ?」


「ものにもよりますが、基本的には、少し前の健康な状態に戻るように再生させる魔法です。」


「それは、傷を癒すのとは違うのか?」


「どんな傷も癒せると勘違いされてしまいがちですが、例えばずっと昔に負った古傷などは普通の治癒魔法では治せません。」


言われてみれば、ブライアンがニルのアクアスピアを受けた後、顔が戻っていたが、顔に元々あった大きな古傷は治っていなかったな。

傷付く少し前の状態を読み取って復元させる…的な魔法なのだろうか…そうなると、毒も効かないし、単なる治癒よりずっと厄介な魔法という事になる。


「聖女という存在はかなり稀有けうだと聞いたんだが…?」


「そうですね…正確な数は分かりませんが、神聖騎士団が把握している人数は、全部で百人にも満たないと、あいつらが喋っているのを聞いた事があります。

その上、その中の多くは、かすり傷を治せる程度だとか…」


「ルファナみたいに、強力な治癒魔法を使える者はどれくらいいるんだ?」


「数人程度…ということくらいしか分かりません。」


このあたりの話は、ニルの話と一致する。首に着けられている枷も一切反応していない。


「戦場で使っていた治癒魔法は、神聖騎士団にのみ効果があったみたいだが、そんな治癒魔法があるのか?」


「はい。特定の者にのみ効果を発揮する治癒魔法も存在します。」


あれだけ見せつけられれば、嫌でもその結論には行き付く。やはり聖女という存在は、かなり危険な存在だ。

そろそろ彼女が敵か味方なのか…核心に触れていこう。


「治癒魔法については大体分かった。次に、ルファナ自身の事だ。話し難いこともあるかもしれないが、正直に話してくれ。」


「分かっています。」


彼女の目に迷いは無さそうだ。


「君は神聖騎士団の助けになるように治癒魔法を使っていた。あれは愛聖騎士の命令だったのか?」


「はい。」


「君が望んでやったわけではないと?」


「はい。私は決して、あいつらの仲間などではありません。むしろ神聖騎士団の連中を、全員バラバラに切り刻んで殺し、モンスターのえさにしてやりたいと心底思っています。」


ルファナの首枷はピクリとも反応しない。これで彼女が神聖騎士団の仲間ではない事が確定した。


ニルも何かあればと緊張していたが、やっと肩の力が抜けたらしい。


「それが聞けて本当に良かったよ。」


「私も、証明されて本当に良かったです。」


ルファナも肩の荷が降りたと一度目を閉じ、深く息を吐く。


「もう少し聞いても良いかな?」


「はい。」


「愛聖騎士は、ルファナを捕まえてきたと言っていたが、それは本当なのか?」


「…はい。」


ルファナが語ってくれた内容はこうだった。


彼女は、基本的に魔力が多いエルフであるにも関わらず、昔から、皆が使える魔法すら使えなかったので、自分には魔力が無いと思って生きてきたらしい。

しかし、ある日魔力が無ければ発動しないという魔具に触れる機会があり、それが発動した事から魔力自体はある事を知ったのだ。

魔力があるのに魔法が使えないという事を知った彼女は、どういう事なのか調べ、聖女という存在が居ることを知る。そして、その聖女達は、治癒魔法という特殊な魔法を使い、他の魔法は一切使えないらしい、という事も。


それを知った彼女は、色々な情報を集め続け、治癒魔法の魔法陣を知ることになった。


当然、皆が使っている魔法を羨ましそうに眺めるしか出来なかった彼女は、直ぐにそれを試した。

すると、傷はまたたく間に回復した。


自分が魔法を使えたことや、他人には無い特殊な力を持っていた事に対する高揚感こうようかんを抑えきれなかった彼女は、何人かにその話をしてしまう。


いつの間にか、その話は広まり、彼女は持てはやされたが、その話が神聖騎士団の連中に伝わり、遂に三年前、彼女はヒョルミナ近郊で神聖騎士団に捕まる事となる。恐らくだが、ネルクの手先だろう。

抵抗を試みた彼女だったが、人気の無い場所だった為、誰にも気が付かれず……その上、後に聞かされた話から、騒ぎにはならなかったと知ったらしい。元々小さな村で生活をしていた彼女の事を知る者達は少なく、村の者達を含め、彼女を知る者は消えたのか、それともネルクやカナリアの手に落ちたのか…どちらにしても、誰かが助けに来てくれる可能性はゼロだと知らされたのだ。

その後、愛聖騎士と名乗る女の格好をした男に拉致監禁らちかんきんされた。

そして、治癒魔法をより強力なものにするためと、愛聖騎士に鞭で打たれ、治癒魔法を気を失うまで自分に掛け続ける毎日だったらしい。


エルフである彼女は、元々の魔力も多く、更には、伸びしろも多く、成長速度も速かった。

彼女は自分で思っていた以上の特別な存在だったのだ。故に、使われ続けた。


これが彼女が神聖騎士団に使われる様になった経緯であった。


時折痛そうな、苦しそうな顔をするルファナを見るに、他にももっと酷い事を色々とされていたのだと思う。

昨日見た彼女の体には、鞭以外の傷も沢山あった。


「…許せません!なんて酷いことを!!」


ニルはいきどおりを隠さず、拳を強く握る。同じ女性として、奴隷の枷を着ける者として、感じるところがあったのだろう。


「……本当は私が殺したかった…」


ルファナは触れたら折れてしまいそうな程に細い腕を持ち上げ、呟く。


「でも……私には戦う力が無かった……」


彼女は聖女。癒す力はあれど、戦う力は無い。きっと、檻の中に居る時、何度もその事を呪っただろう。


「ですが、シンヤ様とニル様が、私の代わりに、あのクズを殺して下さいました。」


ルファナは久しぶりなのか、かなりぎこちないが、初めて優しい笑顔を見せてくれた。


「最後の最後、手足が無くなって這いつくばっていた姿を見て、私は本当に嬉しくて、心が軽くなりました。

本当にありがとうございます。」


本当に安らかな笑顔で愛聖騎士の死を喜ぶ彼女を、壊れていると思うだろうか…?


俺にはそうは見えなかった。


復讐を否定する者もいるだろう。元の世界ではそういう人も多かったと思う。復讐の種類や深さにもよるのかもしれないが、少なくとも、ルファナが復讐を心の底から願っている事を否定するなんて、俺には出来ない。

復讐は何も生まないとか、復讐は復讐を産むだけとか…色々と言われているが、それはきっとそこまでの苦痛を味わった事が無い者の言葉がほとんどだろう。

彼女にはそんな事などどうでもいい。ただ殺したかったのだ。ただ死んでほしかったのだ。それ程までに憎かったのだ。

復讐は何も生まない?いや。間違いなく彼女は奴が死んで平穏を手に入れた。

復讐は復讐を産むだけ?いや。ここまでされた事を知って復讐し返す奴が居たならば、そいつの方が余程狂っているだろう。

誰かの死を願い、その死を歓喜かんき出来る程の苦痛を味わった者と同じ体験をして、それでも復讐はダメだ…などと言えるだろうか。


俺は口が裂けても言えない。言いたくない。

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