超リアルRPGに転移した

第50話 信頼

「…そう…だよね……」

「そんなに簡単な事じゃないが……それを目標にするべきだと思う。

戦闘の技術とか、教えられる事は教える。でも、並行してどうにか自分で恐怖心を克服（こくふく）する事を目指した方が良いと思う。」

「…分かった。やってみる。」

いつものお調子者のナナヒでは無さそうだ。

「よし。それじゃあ克服出来るまでは、ニルと打ち合ってみてくれ。」

「ニルと？」

「ニルの場合は小太刀だが、武器のリーチとかは同じくらいだ。ニルの戦い方はナナヒとは全く違うから、ナナヒにも学べる事は多いと思うぞ。」

「分かった！ニル！あっちで打ち合ってみよ！」

「はい！」

ニルとナナヒは二人で移動して、打ち合いを始める。

「次はチクル。」

「はい！」

「チクルは、とにかく真っ直ぐ過ぎだ。」

「うっ…」

自分でも分かってはいるらしい。

「一撃一撃は重いけれど、全てが渾身（こんしん）の一撃で、駆け引きも無い。知能の無いモンスター相手には十分だとは思うが、人相手だと単純過ぎて避けてくれと言っている様なものだ。」

「うぅ……」

「初めてニルと打ち合った時より酷い。」

「ぐふっ……」

「もう少し狡賢（ずるがしこ）い戦い方をしないと、神聖騎士団相手には辛いと思う。」

「……はい…」

「ただ、それさえ出来れば、かなり強くなれると思う。」

アマゾネスにはそもそもの戦闘のセンスが高い者が多い。

「本当ですか？！でも…どうしたら…」

「そうだな……ちょっと耳を貸してみろ。」

「は、はい。」

「ナナヒ達を除いた皆に毎日悪戯（いたずら）を仕掛けるんだ。」

「悪戯…ですか？」

「チクルは人の裏をかくという事が苦手だから真っ直ぐなんだ。つまり、人の裏をかく事が出来れば、それも克服出来る。

皆にバレないように悪戯を仕掛けて、引っ掛ける事が出来たら、戦い方も変わってくるはずだ。」

「ゴクリ……分かりました。やってみます。」

今までそんな事をした事が無いのか、妙に気合いが入っている。

「……何を話してたの？」

「なななななんでもないです！」

先が思いやられるな…

「次はアタニ。」

「……」

「アタニの戦闘には意外性が無い事が問題だと思う。」

「……意外性…？」

「慎重で、石橋を叩いて渡る性格なのは分かるが、たまには石橋から飛び込むくらいの意外性が欲しい。」

「…慎重はいけないの？」

「いけないわけじゃない。慎重なのはいい事だ。でも、慎重と臆病（おくびょう）は違う。」

「……私は臆病…」

「そこまでは言わないが、行くところはガッといかないとな。」

「……分かった。」

「アタニは、とにかく色んな人と打ち合って、負けてもいいから思いついた事をなんでもやってみろ。」

「思いついた事を……なんでも…」

「そのうち、どんな攻撃が意外なのか、有効なのかが分かるはずだ。」

「……うん。」

アタニは他のアマゾネス達に打ち合いをお願いしに行った。

「最後は、イナヤ。」

「………お願いします…」

「……イナヤは、ナナヒと真逆だな。」

「………」

「力が入り過ぎて、相手を殺す事しか考えていない。」

「………」

「攻撃に緩急が無いんだ。剛剣（ごうけん）というやつだな。

剣戟も動きも文句無いが、緩急の無い攻撃ってのは慣れてしまえば怖さが無い。

姉の事が原因か…？」

「……はい…」

自覚ありか……

「怒りを捨てろとは言わないが、抑えられる様にならないと、攻撃が単調になったり、気持ちばかりが前に出てしまう。それを克服するべきだと思う。」

「……分かりました。」

「イナヤは俺と打ち合おう。気持ちを抑える練習だ。」

「……？」

「自分の怒りをコントロールしてみろ。」

「……はい…？」

断斬刀を抜いて構えると、直ぐにイナヤも曲剣を抜いて構える。

「打ち込んで来い。」

「……はぁっ！」

カンッ！キンッ！

「そんなもんか？」

「っ！！」

キンッガンッ！

「どうした？その程度か？」

「っ！！！」

「お前がそんなに弱いなら、お前の姉も弱かったんだろうな？」

「っ？！！！！このっ！！」

ガインッ！ザクッ！

曲剣が飛び、地面に刺さる。

「あぁぁ！！」

怒りが頂点に達しているイナヤは、それでも拳を握り殴り掛かってくる。

バシッ！

「ぐっ！」

拳を受け止め、強く握ると片膝をついて動けなくなってしまう。

「フーッ！フーッ！」

いつもの感情が読めない顔はどこにもなく、怒りに我を忘れている。目を見開き、歯を剥き出している。

「イナヤ。」

「姉を馬鹿にする奴は許さない！！」

「落ち着けイナヤ。」

「フーッ！フーッ！」

「落ち着け。怒りを抑えろ。」

「フーッ！フーッ………」

少しずつ我に返るイナヤ。

「……落ち着いたか？」

「………」

「イナヤの怒りを引き出す為とはいえ、姉を侮辱してすまなかった。」

「………いえ。」

「次からはやり方を変えるよ。」

「…………大丈夫です。」

「え？」

「このまま続けて下さい。」

「……良いのか？」

「それが私の弱点なら……克服しなきゃ強くなれない…」

強くなれないと、敵を殺せない。

そう続くのだろうと感じた。

「もう一度。」

「ああ。」

その日から、四人プラス、ニルの訓練が本格的に始まった。

神聖騎士団から逃げる為に、三日に一度は場所を変えるが、それでも毎日朝の訓練は欠かす事が無かった。

訓練を始めて三日目。

「だぁーーー！！」

ガインッ！

「はぁっ！」

ギンッ！

「くー！盾が厄介ー！」

「ナナヒさんのスピードは驚異的です！」

「まだまだ！」

「負けません！」

ニルとナナヒの打ち合いは、基本的にナナヒが一枚上手（うわて）だ。ステータスの差が大きい事と、戦闘経験の差から考えても当然だろう。

だが、いつも勝利はギリギリだ。本来なら圧倒して当然だろうに……その理由は最初に説明した通り、ナナヒのトラウマが原因だ。決定的な踏み込みが出来ない。

悪戯を仕掛けているチクルは……

「……」

「ばぁっ！」

「うわわわわわ！」

「まったく。そんな悪戯に引っ掛かるわけないでしょう？チクル。」

「な、なんでバレたの？！」

「逆にこんなバレバレの悪戯で、なんで引っ掛かると思ったの？」

「くぅー！」

「それじゃあね！」

「どうしたら……わあっ？！な、なに？！」

「ふふふ。悪戯って言うのはこうやってやるのよ。」

「きぃー！悔しーー！！」

「じゃあねーー！ふふふー。」

チクルの悪戯も当分は成功しなさそうだ。逆に仕返しされている。

意外性を求めて色々な人と打ち合っているアタニは……

ガンッ！

「ぐふぅっ！」

「アタニ。さすがに私でも、そんなのに当たるわけ無いでしょ。」

「うーん。意外性…難しい。」

アタニも苦戦中だ。

そして、一番の苦戦を強いられているのは、イナヤだった。

「がぁぁぁ！」

バキッ！

「うぐぅっ！」

「イナヤ！落ち着け！」

「フーッ！フーッ！」

俺が少しでも姉の事に触れた瞬間に、彼女の脳裏には姉の最後の姿がフラッシュバックするのだろう。一瞬にして頭が沸騰する。

俺自身もやっていて気持ちの良いものでは無いし、荒療治（あらりょうじ）過ぎる気もするが…そうでもしなければならない状況にある。と、俺は見ている。

神聖騎士団、聖騎士。

倒した俺が言うのもなんだが、彼等はこの世界において抜きん出た戦闘の才能を持っている。ステータスもかなり高いはず。

聖騎士は全部で八人と言われているが、それが正確な情報なのかは分からない。だが、少なくとも何十人単位で居る様な者達では無いはずだ。

とすれば、巨大な戦力を神聖騎士団から二つも取った事になる。それは、今後の作戦に大きく影響を及ぼす。

そんな状況ならば、絶大な威力の武器となる心石は是非とも入手したいだろう。それに、ネルクの持っていたあの魔具。カナリアからもネルクからも入手出来なかったが、あれのせいで俺とニルの行動はほとんどが筒抜けだろう。神聖騎士団の連中は、どこにどれだけ潜んでいるか分からないからな…

必要としている心石と、聖騎士を屠った俺が一緒に居るとなれば、多くの団員達を送り込み、一石二鳥を狙うはずだ。流石に聖騎士までは来ないだろうが、確実にアマゾネスを殲滅できる数を送り込んで来るはず。

既にアマゾネスと俺達を狙う神聖騎士団員達は派遣されており、襲ってくるのもそれ程遠くは無い……と思う。

「落ち着いたか？」

「………もう一度お願いします。」

訓練は毎日続き、俺達もアマゾネスの中に馴染み始めた頃。

俺とニルが夕飯を終えてまったりしている所へ、ナナヒが来た。

「えーっと…今って大丈夫かな？」

「ナナヒ？どうした？」

「ちょっと話がしたくてさ…」

「別に構わないが…ニルは外した方が良いか？」

「ううん。ニルにも聞きたいことがあるから。」

「私に…ですか？分かりました。なんでも聞いて下さい。」

「じゃ、じゃあ遠慮無く。」

いつものあっけらかんとした感じではなく、何故か緊張しているナナヒ。夕食後に俺達を訪れる事は何度かあった。暇だー！とか、なんか食わせろー！とか。

「それで？」

「う、うん……あたいは、あの時から戦闘に恐怖感を覚えるようになったの。

相手の刃を見ると、足が竦（すく）んでしまって…アマゾネスとして、三石の戦士として有るまじき事だって分かってる。

だから克服しようとしてきた。シンヤにも言われてやっぱり…って思った。でも、なかなかそれは変わらなくて……ずっと考えてた。どうしたら怖くなくなるのか。

それで、あたいが怖いと思うことでも、他の人が怖いと思わない事を探してたの。そうしたら、ふと思い出したの。最初にシンヤ達に会った日。ニルがイナヤに捕まった時の事。

あの時、シンヤの攻撃は見事にイナヤの手に当たったけど、もしかしたらニルの顔に当たってたかもしれないし、刃に当たって、ニルの首に刃が食い込んでいたかもしれない。それなのに、ニルは真っ直ぐシンヤを見たまま、瞬きもせずに、ピクリとも動かなかったよね？」

「あまり鮮明には覚えていませんが…多分そうだったと思います。」

「あの時ニルは、絶対に自分が安全だとか、シンヤのやる事が分かっていたとか…そういう保証みたいなものがあったの？」

「保証ですか…？そんな物はありませんが…強いて言うならば、ご主人様が動くなと言った事が保証でしょうか。」

「それが…保証？」

ナナヒは理解出来ないらしく、首を傾げている。

「ご主人様が私を傷付ける気が無い事は分かっていますので…動くなと言われたのであれば、動かなければ私は傷付くことは無いと信じていました。」

「で、でも手元が狂ったりする事だってあるでしょ？！シンヤだって絶対に外さないという確証なんて無かったでしょ？！」

「まあ、数字の計算ではないし、絶対は無いよな。」

「それはニルも分かってるよね？！」

「そうですね。」

「なんでそれで怖くないの？！ピクリとも動かなかったの？！」

「えーっと……なんと言えば分かって頂けるのか分かりませんが。一言で言えばご主人様を信頼しているから。ですね。」

「信頼…？シンヤが成功させると信じていたってこと？」

「少し違いますね……ご主人様が何かをなさって、それが成功すると信じてもおりました。ですが、もし手元を狂わせて私が傷付いたり、死んだとしても、私は別に構いません。」

「…へ？」

予想外の答えに、ナナヒは、バカっぽい反応を示す。

「私が信頼しているのは、ご主人様の腕ではなく、ご主人様自身です。もし、そのご主人様が起こした行動の結果、私が死んだとしても、私はそれを受け入れるという事です。奴隷だから…という事ではありません。私が…私自身が全てを預けると自分自身に誓ったのです。」

「………」

ポカーンとしているナナヒ。俺も再度ニルに信頼していると言われると嬉しいが…少し照れる。

「シンヤは？！シンヤはニルを殺してしまうかもしれないとか思わなかったの？！」

「当然自信があったからやったんだが…そういう考えが頭を過ぎらなかったわけじゃないな。」

「怖くなかったの？」

「んー…それは無かったかな。俺を信頼してくれている様に、俺もニルを信頼しているからな。ニルが動かない自信があったし、後は俺が落ち着いて行動すれば外す事は無いと思ってたよ。

俺はニルを信頼している。そのニルが信頼している俺を信頼した。って感じかな。」

「……はへぇーー……」

力が抜けたとでも言いたそうなナナヒ。

「なんだその反応は？」

「いやぁ…想像していたよりもずっと凄い答えが返ってきたからびっくりしてたんだよ。」

「そうでしょうか？」

「本人達には分かんないだろうけどさ。」

「いや。ナナヒだって同じだろ。」

「ん？どういうこと？」

「ナナヒだってイナヤ、チクル、アタニのことを信頼しているだろう？それとなんら変わらないと思うが？」

「あたいには難しいかなぁ……あはは……」

ナナヒは人差し指で頬をポリポリしながら苦笑いする。

「それこそあり得ませんよ。」

「え？」

「ナナヒさんと打ち合っている私には分かります。ナナヒさんが私と打ち合っている時と、他の三人の方々と打ち合っている時では、全く違いますから。」

「違う……？何が違うの？」

「イナヤさん達と打ち合っている時は、私と打ち合っている時よりも踏み込みが深いです。」

「そう…かな？自分では気にしたことが無かったけど…」

「間違いありませんよ。」

「実際に打ち合っているニルが言うんだから間違いないだろうな。」

「……それは、イナヤさん達を信頼しているから。だと思いますよ？」

「踏み込んでも、相手も自分も傷つかない自信があるんだろうな。言い方を変えば、信頼しているということだな。」

「信頼しているから……踏み込めた…？でもそれじゃ意味ない。神聖騎士団の連中を信じるなんて出来ないし…」

「いや。ナナヒはバカだな。」

「いきなり罵倒（ばとう）された？！」

だってバカだし。

「敵を信頼する必要は無いだろ。仲間を信頼して踏み込むんだ。俺と一番最初に戦った時みたいにな。」

「あ……」

思い出したらしい。

「あの時、ナナヒは俺に思いっきり踏み込んで来た。それはアタニが居たからだろ？」

「う、うん…あたいが危なくなったとしてもアタニがいるって……」

「なら答えは出たな？」

「…仲間を信じて戦う！」

「明日からやることは決まったな。」

「うん！ありがとーー！！」

「飛び付くな！！」

晴れ晴れとした表情で去っていくナナヒ。直ぐにトラウマが解消するとは思わないが、足掛かりにはなるだろう。

その頃、チクル、アタニにも変化が現れ始めていた。

「まーたチクルの悪戯よ。こんなのに引っかかるわけ無いじゃぁぁぁぁぁぁ？！」

「引っかかったーー！」

「………チーークーールーー！！」

「ぴぇっ？！ご、ごめんなさーーい！」

「待てコラーーー！！」

チクルは、百発百中とまではいかないものの、相手の裏をかけるようになってきた。

「はぁ！」

「やぁ！！」

カンッ！キンッ！

「はぁぁぁ！なっ？！飛んでっ？！」

「…私の勝ち。」

「あーー！負けたー！最近勝てなくなってきたー！四石のアタニに勝ったって皆に自慢してたのにー！！」

「……意外性が重要。分かってきた。」

自分のトラウマに打ち勝つ方法を見つけたナナヒと、チクル、アタニの三人は実力をメキメキと上げていた。

それに対し、イナヤは自分の怒りの感情をなかなかコントロール出来ずに伸び悩んでいた。最初の様に我を忘れて怒り狂う事は無くなったものの、あまり剣筋（けんすじ）に変化は見えなかった。

「はぁ…はぁ…」

「休憩するか？」

「まだ……やります！」

息が完全にあがっている。

「……ふぅ。いや、一旦休憩だ。」

「まだ！」

「休憩。」

「……はい…」

再度言うと、イナヤは剣を下げる。

「他の三人が成長しているところを見て焦るか？」

「……正直に言いますと…焦ります。」

「……そうだろうな。」

地面に二人で座り、風に当たる。

「私は…これ以上強くはなれないのでしょうか……？」

最近になって、イナヤは少しずつ喋るようになってきた。俺に慣れてくれたのか、それとも強くなりたい、という気持ちがそうさせているのかは分からないが。

「なんでそう思うんだ？」

「……ヤナシリ様は、実妹であるワマラ様を亡くされた後も、感情に流されたりしません。

私とは根本的に自力が違うのでしょうか？」

「ヤナシリのことは分からないけれど、多分感情的にならないわけじゃないと思うぞ。」

「……」

「ただ、ヤナシリの場合は他に多くのものを背負っているからな。

自分が感情的になったら、その背負っているものがどうなるか考えて、踏み止まっているのだと思う。」

イナヤは左腕に嵌（は）めている腕輪をそっと撫でる。

「私には………無理です…怒りを消すことは出来ません…」

「……イナヤは、姉が大好きだったんだな。」

「…はい。」

「イナヤの姉…エメトはどんな人だったんだ？」

「……とても優しい人でした。私に出来ることも、出来ないことも、全て出来る人でした。強く、真っ直ぐ前を見て、絶対に挫（くじ）けない人でした。」

「それは凄い人だな。」

「本当に凄い人だったんです。私に料理を教えてくれたり、剣技を教えてくれたりする時には厳しかったですけれど。それでも、いつも笑顔で優しくて…なのにワマラ様の横で戦っている時は強く、格好良い人だったんです。」

一瞬、微（かす）かにイナヤの顔が笑ったように見えた。

「それなのに…私なんかを守るために…」

「…俺には兄弟がいないから分からないけど……もしニルが危ないと思ったら、エメトと同じように身を挺（てい）してでも守ると思う。」

「………」

「理屈じゃなく、体が思うより先に動くだろうな。」

「……なぜ…と聞くのは愚（おろ）かでしょうか…？」

「……なぜかなんて、聞かなくても分かっているだろ？」

「………」

イナヤは少しだけ目を細める。

「もし、そんな時が来て、ニルが復讐心に駆（か）られてしまったら……俺は悲しいかな。」

「悲しい…？」

「もしイナヤがエメトを守って死んだとして、姉が復讐と怒りに染まっていたら悲しくないか？」

「……そう…ですね。出来れば復讐よりも、幸せになってもらいたいです。」

「エメトもきっとそう思っていると、俺は思うけどな。

まあ、自分で言っていて耳が痛い話だが…」

「？？」

「ポポルって人族の街があってな。そこで仲良くなったシルビーという女性がいたんだ。でも、彼女は神聖騎士団の連中に……目の前で殺された。」

「……」

「自分の事を棚に上げるとはまさにこのことだろうな。シルビーさんの復讐から始まり、怒りに任せて神聖騎士団の連中を何度も切り捨ててきた。俺も同じだ…」

「……でも、シンヤの剣は、私の様な怒りに任せた剣じゃないです。」

「イナヤには怒ってないからな。それに…俺がミスると危険に晒される人がいるから。」

「ニルのことですか？」