第38話 騒動
声に聞き覚えのあった俺とニルはその扉の中に飛び込む。
ガンガンッ!
「開けろぉ!」
閉めた扉の外から兵士達の声が聞こえてくる。
「間に合って良かったです。」
「ガナライ!なんでこんな所に?!」
俺たちを助けてくれたのはガナライだった。
「ネルクから連絡がありましてね。それより、早くここを抜けましょう。」
ガナライの案内に従って地下に続く細い通路を進む。
「ここは一体なんだ?」
「ここは、昔世界樹の根の状態を観察する為に掘られた通路です。
世界樹の管理も我々エルフ族の仕事でして、王への報告の度に城門を開け閉めするのは大変なので、あの場所に扉を設けたのです。
私も何度か携わった仕事でしたので、ここはよく知っているのですよ。鍵はネルクから預かりました。
迷路の様に入り組んでいるので、簡単には後を追っては来れません。それに、至る所に出入口があるので出る時も心配いりません。」
「そんな危ない通路を残しておいて大丈夫なのか?賊が入ったりしそうだが…」
「そもそもこの通路の事を知っている者は極小数ですから、大丈夫です。」
「え……それって、今回の事でガナライが危険にならないのか?」
「その辺はネルクがなんとかしてくれるでしょう。してくれなければ恨みます。」
「が、頑張れネルク!」
「シンヤ!」
通路を進んでいくと、上から声がする。
「パピルか?」
「シンヤ!上がってきて!」
据え付けられた梯子を登ると、どこかの小屋の中に出る。
「シンヤさん!無事で良かったです!」
上に登ると、パピルに加えダニルも待っていた。
「ダニルも来てたのか…」
「シンヤさんの
「村長!うるさいって何よ!?」
「姉さん。落ち着いて。大声はまずいよ。」
「わ、分かってるわよ。」
パピルもダニルも、俺達の為に動いてくれたのだ。素直に嬉しいと思う。
「とりあえずここを出ましょう。ここに居ては危険です。」
「そうだな。」
ローブを変えて小屋から出る。
「助かったよ。ありがとう。」
「結構な数の兵士達が出てきいると思いますので、気を付けて下さい。」
「分かった。」
ガナライ達とはそこで別れ、裏道を使いながら遠回りして宿に戻る。尾行が付いているかを確認する為だ。
地下道を使ったから大丈夫だとは思っていたが念の為。
尾行が無さそうだったのでやっと宿の自室に入る事が出来た。
「おぉぅ…疲れた……」
ほとんど何もない宿部屋に辿り着き、床に座る。
「ご主人様。お茶をいれましたので、どうぞお飲みください。」
「おー。さすがニル。有難く頂こう。」
焼聖騎士との一件から、ニルは俺の身の回りの事を今まで以上に率先してやるようになった。
ペネタの馬車の中で、怪我をした時の治療もその一環だ。
「うむ。美味い。美味い…が、俺がダメ人間になっていく気がしてならないな。」
「ご主人様に限ってそれは有り得ません。むしろもう少し肩の力をお抜き下さい。」
「そうかな…?」
誰かが働いている時に自分が動いていないと不安になるという社畜精神が刻み込まれているからなぁ…
「それよりも…」
「第一王子の部屋に居たと仰られていた緑色の髪と瞳をした女性エルフ…ですか?」
「あぁ。ペネタの話には出てこなかったが、第一王子と密な関係にあることは明白だ。
それに、あの魔法と、背筋が凍るような殺気…」
「ご主人様の接近にも気が付いていたと。」
「モンスター相手にずっと練習してきたから、結構自信があったんだけどなぁ…隠密…」
「どう考えても普通ではない相手です。一度調べてみる必要があるかと思いますが…」
「だよな。ペネタに聞いてみるか。」
「はい。」
宿で日が昇るまで仮眠を取り、ペネタと約束した場所へ向かう。
「随分と派手にやったみたいね。城内はその話で持ち切りよ。」
馬車に入ると、第一声から悪態を吐かれた。
「もう少し上手くやるつもりだったんだが…すまんな…ネルクのお陰で助かったよ。」
「こっちは気が気じゃなかったがな。」
「すまんて…」
腕を組んだネルクまで悪態を吐いてくる。
「それより、あれだけ騒いでおいて、何も無かったなんて事は無いわよね?」
「確実な証拠とまではいかないが、一つ気になる事があってな。
第一王子の部屋に緑色の髪と瞳をしたエルフの女性が居たんだが、何か知らないか?」
「緑色の髪と瞳……多分それはカナリアの事ね。王城の
「二人してベッドの中で寝てたぞ。」
「えっ?!」
心底驚いている様子だ。やはりペネタも知らなかったらしい。
「それに、俺の接近に気付いて、即座に中級風魔法で攻撃してきた。まあ侵入者に対しての攻撃…だったのかもしれないが。」
「カナリアが…?」
ペネタは不思議そうな顔をしている。
「どんな奴なんだ?」
「二年前に侍女として王城に入って来た子。少しキツい顔をしているけれど、根は優しくて、よく気が付く良い子よ。」
「良い子…ねぇ。俺を攻撃してきた時の殺気には、優しさなんて一切無かったけどな…」
「人違い…という事は無いのかしら…?」
「直ぐに名前が出てきたって事は、緑色の髪と目を持った女性エルフは、そのカナリアって奴しかいないんだろ?」
「……」
ペネタは無言だが、この場合それは肯定という意味になる。
「どれだけ良い奴に見えても、それが演技だって事は十分に考えられる。二人が一緒に居た理由まで分かると良かったんだが…」
「でも、カナリアは三人が殺された時に別の場所に居たと聞いているわ。」
「誰からだ?」
「……全て…カシュト兄様…から……」
ペネタは自分で言いながらハッとした顔をしている。
「怪しいな。」
「そんな…まさか…あの子が……」
「自分で手を下さなくても、誰かに殺らせればアリバイくらい作れる。まだ確定とまではいかないが…
もしその女が黒幕なら、この二年の間に、神聖騎士団の連中をこの街に潜り込ませているはずだ。」
「おいおい…そんなの洒落にならないぞ…
もし内部に入り込んでいる奴らが門を開けたりしたら…」
スガァァァン!
突然の振動と爆音に馬車が揺れる。
「うおっ?!なんだ?!」
ガンガンッ!
乱暴に馬車のドアがノックされる。
「ペネタ様!街中が!ぐあぁっ!」
「何事だ?!」
ネルクがドアを開くと、目の前にペネタの従者達が倒れており、そこに鎧を着たエルフの兵士が六人程立っている。
「貴様ら!自分達が何をしているのか分かっているのか?!」
「………」
ネルクの声に対して何の反応も示さない兵士達。
「ネルク。こいつらは神聖騎士団の連中だ。」
「なにっ?!」
「ネルク。ペネタを連れて逃げろ。どこでも良いから安全な場所に逃げ込むんだ。」
「シンヤ達は?!」
「ここを足止めする奴が必要だろう?
ニル。準備は良いか?」
「はい。」
「しかし二人だけでは…」
「行け!自分の役目を考えろ!」
「……クソッ!死ぬなよ!」
ペネタの手を取り走り出すネルク。
街中は爆発音と人々の悲鳴で溢れ返っている。
「追え。」
一人が一言呟くと、二人がネルク達を追うために走り出す。
「行かせるかよ。」
魔法陣を描き始めると、残りの四人のうち二人が同時に斬りかかってくる。
ガンッ!ギンッ!
俺の目の前に飛び込んだニルが盾で攻撃を弾き、もう一人の攻撃を小太刀で受け流す。
「うぐっ!」
「ぐあっ!」
ニルに掛けられた防護魔法によって、襲ってきた二人の腕に大きな切り傷が生まれ、血で鎧が赤く濡れる。
ニルのお陰で魔法陣は直ぐに完成した。
中級の闇魔法。シャドウハンド。
地面から無数の黒い手が現れ、対象を引き摺り込むというトラウマになりそうな魔法だ。
「なんだこれは?!」
「離せっ!」
ネルク達の後を追うために走っていた二人の足を、一つの手が掴むと、側に現れていた手も集まってきて、あっという間に身動きが取れなくなる。
「クソッ!離れろ!」
ザシュッ!
剣を振って黒い手を斬ると、簡単に斬れてしまう。だが、次の瞬間には新たに地面から現れた黒い手が同じ場所を掴んでいる。
しかも、振った剣にまで絡み付き、その体はゆっくりと地面に広がる黒に引き摺り込まれていく。
「止めろ!離せ!離…」
暴れる兵士二人の口が、引き込まれた所で声が途絶え、血走った目をカッと開くと、そのまま頭の先まで沈んでいく。
「闇魔法…だと…?」
「あの奴隷もおかしな魔法を使っているぞ。」
俺とニルの事を警戒し始めたらしい。
「背中を見せてまでペネタ達を狙ったという事は……王族殺しはお前達の仕業か。」
「……殺れ!」
腕を怪我している二人が再度走り出し、残った二人は魔法陣を描き始める。
俺が、前に居たニルを横から追い越して、前に出ると、ほんの一瞬だけ、ビックリして反応が遅れる兵士達。
ニルを奴隷として見ていたこいつらにとっては、この場面で前に出て壁になるのは、当然ニルだと思っていただろう。
しかし、俺にとってニルはたった一人の、パーティの仲間だ。どちらが前に出るかなんてその時の状況によって変わる。
「遅い!」
反応の遅れた兵士の刃が俺に届くはずもなく、一太刀の横薙ぎで二人の首を切り裂く。
「が…ごぷっ……」
シューシューと勢いよく吹き出した血は止まることはなく二人の命が消えるまで流れ続ける。
「死ねっ!」
残った二人が同時に別々の魔法を発動させる。
どちらも俺の知っている魔法だ。
青い光を放つ魔法陣は、アクアプリズンの魔法陣。
中級水魔法で、相手を激しい水流を含む水球に閉じ込め、上も下も分からぬまま、窒息させる魔法だ。
しかし、この魔法は窒息させるまでに時間が必要になる。そこで、大抵は動けなくした段階で、別の魔法を撃ち込む。
それが隣に居る兵士の緑色の魔法陣。
中級風魔法のランブルカッター。十数個の鋭い風の刃が連続で襲い掛かるという魔法だ。
水球に閉じ込めて、ランブルカッターで仕留めるつもりらしい。
周囲に出現した水が、俺を閉じ込めんとする。脅威度はニルより俺の方が上だと確定してくれたらしい。
普通のステータスならば、この時点でアウトだろう。だが、シンヤの脚力を舐めすぎだ。
バキッ!
足を強く踏み切ると、水球が完成するより速く範囲を抜け、アクアプリズンを発動させた兵士の正面まで辿り着く。
ザクッ!
「…は?」
キョトンとした声と顔で、俺を見ている兵士。ゆっくりと瞳が上を向いていき、額に刺さった刃を確認した後、そのまま上瞼の中へと瞳が消えていく。
「ば…化け物がぁ!」
ランブルカッターを発動させていた兵士が腕を回し、魔法陣をこちらへと向ける。
ランブルカッターは魔法陣を起点として発射する魔法である為、腕を回せば魔法陣の向きを変えることだって出来る。
ボトボトッ…
残念ながら、それは叶わなかったが。
今の今まで機を狙っていたニルが、最高のタイミングで男の両腕を、魔法で切り落としたのだ。
初級風魔法、ウィンドカッター。たった一発だけ、風の刃を放つ攻撃魔法。言ってしまえばランブルカッターの下位互換だ。
それでも、使い方とタイミングさえ合えば、その一発だけで勝負が決まる事だってある。
大切なのはそれを見極めたり、作り出したりする駆け引きを覚える事。
ニルは俺の教えをしっかりと身に付けてくれたらしい。
「ぐあぁぁ!」
両腕を失った男は腕を抑えたくても抑えられず、肘から先の無い腕をばたつかせる。
ガシッと兵士の頭を鷲掴みにする。
「う゛ぁぁぁぁ!」
槍先を握り潰した握力だ。そんな力で頭を握られたら痛いだろう。叫びたくなるほどに。
「お前達に指示を出している黒幕はカナリアという王城の侍女か?」
「がっ…ぁぁ……」
メキメキ!
「がぁぁぁぁ!」
頭蓋骨が音を立てると、兵士は叫び声を上げる。
「もう一度聞くぞ。黒幕はカナリアか?」
「ぐ…う……くくく……ははははは!」
突然笑い出す兵士。
「狂ったか?」
手の下にある口がニタァと歪む。
ガギッ!
兵士が、強く歯を噛み締めると、硬いものを噛み砕いた様な音がする。
「っ?!」
兵士を蹴り飛ばし、ニルを抱えて兵士に背を向ける。
ズガァァァン!
蹴り飛ばした兵士を中心にして爆発が起きる。
爆風によって細かな瓦礫が飛来し、背中を何度か打つ。
「ご主人様!大丈夫ですか?!」
「耳鳴りが酷いが、怪我は無さそうだ。」
「まさか自爆するなんて…」
後ろを向くと、周囲を巻き込んで爆散した兵士だった物が散らばっている。
「今まで相手にしてきた神聖騎士団も頭のおかしな奴ばかりだったが…今回の相手は少し毛色が違うみたいだな…」
「やはり黒幕はカナリアという女性でしょうか?」
「今ある情報だけでは分からない。本当ならもっと詳しく調べてみたいが…」
「この状況ではそれも難しそうですね…」
最早街は
「まずは門を見に行くぞ。開いてるなら閉じなければ次々と敵が入って来る。」
「分かりました。」
門に向かって走っている途中、街の兵士達が、神聖騎士団と戦闘を繰り広げているのを何度か見掛ける。
なんとか奮戦しているが、かなりギリギリの状況に見える。ここに外からの敵増援が来たら一気に潰されてしまうだろう。
「ご主人様!門が!」
この街の門は、水門等に使われている、上下にスライドさせる仕組みを用いた物だ。街の中側左右にロープを巻き取る場所があり、数人で回すと大きな門が上へとスライドして行く。
その巻き取り部分に数人ずつが張り付いて、門を開こうとしている。足元の隙間からは、奥にスタンバイしている神聖騎士団の足や、馬の足が見えている。
当然門を開かんとしている連中の周りには、それを守る為の人員と、なんとか食い止めようとしている連中でごった返している。
「ニル!門を開こうとしている右の連中を魔法でなんとかしてくれ!」
「はい!」
その場に止まったニルが魔法陣を描き始める。
俺はそのまま一気に門へと走り、地面を右足で強く踏み切る。
こちらの味方である兵士達、敵である兵士達の頭上を大きく飛び越える。
目の前に見える門は腰辺りまで開き、這うように数人が入り込んで来ている。
俺の存在に気が付いた数人が、顔を向けてくるが、もう遅い。
ロープ巻き取っている連中の真後ろに着地すると、無抵抗の背中を切り刻む。
ゴンッ!グシャッ!
ほぼ同時に右手のロープを巻き取っている者達に、地面から生えてきた石の壁が勢い良く当たり、圧殺される。
巻き上がっていたロープが一気に解放され、門が落ちる。
潜り抜けようとしていた数人の胴が門によって真っ二つにされ、血がじわりと地面に染み渡っていく。
入って来たのは十人程度。なんとか間に合ったと言っても良いだろう。
神聖騎士団の連中が俺を敵だと認識し、武器を構えるより先に敵中へと滑り込む。
ザンッ!
「ぐあっ!」
「止めろ!そいつを止めるんだ!」
俺の動きにやっと反応を見せ始める神聖騎士団員。
「こちらの好機だ!門を取り返せ!」
敵味方合わせて五十人程が門前に密集して剣や魔法を振るい合う。
俺に向かってくる敵兵の、足を斬り、腕を斬り、首を斬っていく。
「うおぉぉぉ!」
ガキンッ!
俺の刀を止めたのは、金騎士。熊の獣人族で、分厚い大剣を握っている。
「舐めるなぁ!」
大剣を振ると、周りの味方を巻き込みながら、右に左にと刃が移動する。
「オラァァァ!」
ガンッ!
直上から振り下ろされた大剣の横っ腹を足で蹴ると、九十度進行方向を変える。
「なにっ?!」
「ミグズと比べると天と地だな。」
ザシュッ!
金騎士の太い腕を切り落とし、その痛みを認識させる前に、鎧の無い腹を横一文字に切り離す。
ザシュッ!
「……あ?」
ドスッ!
キョトンとした顔で二つに別れた体が地面に倒れていき、まだ息のある金騎士の顔に刃先を突き立てる。自爆されると面倒だからトドメはしっかりと。こちらの兵士達もよく分かっているらしく、自爆されない様に上手く戦っている。
「そこの方!避けて下さい!」
味方の兵の方向から聞こえた声に反応し、閉まった門へと走る。
飛び上がり、門を蹴る。三角飛びと言うやつだ。
それを確認した味方の兵士達が魔法を放つ。
ドドドドドドドッ!
風、水、木、土の様々な魔法が敵兵を包み込み、自爆する間もなく一気に殲滅されていく。
味方の兵士達よりも後ろに着地すると、直ぐにニルが駆け寄ってくる。
「ご主人様!お怪我は?!」
「大丈夫大丈夫。返り血が酷くて鉄臭いけど。」
全身血塗れともなれば怪我が無いか心配されて当たり前だろう。
「…人族?!」
俺とニルを見て、一人の兵士が驚いた声を上げる。
今は人族である事で言い合っている場合ではない。聞こえなかった振りをして視線を切る。
「ニル。次は王城…いや、その前にガナライ達を見に行こう。」
「はい!」
「お待ちを!どなたか知らないが、感謝する!我々だけでは門を守り切れなかっただろう…助かった!」
去ろうとした俺に、男性エルフの兵士一人が礼を大声で言ってくれる。
「……外の連中は任せたぞ。」
「任せてくれ。
おい!お前達!門を死守するぞ!」
振り返って部下に指示を出す男性エルフの兵士。
「……ご主人様。」
「…あぁ。行こう。」
ガナライ達の居場所は事前にネルクから聞いている。もしもの時には、そこでガナライ達と合流して安全な場所へ移動するという事も。
ネルクが絶対的な信頼を置いているのは、リョニート村の人達をおいて他にいない。
街の状況からして、既に安全な場所へ避難しているだろう。
ネルクから聞いていた場所付近に辿り着き、周りを見渡してみる。
「確か街の東端にある古い地下倉庫とか言ってたよな。この辺だと思うんだが…」
「地上に建設されている部分は、使われなくなってからかなり時間が経っているとの事でしたし、見れば分かるかと思いますが……あ!あれでしょうか!?」
ニルの指先を辿ると、触っただけで崩れそうな程に
所々朽ち果てていて、屋根に至っては既に半分は無くなっている。
「見るからにボロボロな建物だ。他にそれらしい所は見当たらないし、あれかもな。」
「……」
ニルがキョロキョロしている。
「どうした?」
「ご主人様…この辺り、少し静か過ぎませんか…?」
「……確かにな。」
周りを見渡して見ると、敵も味方も居ない。
あれだけ街中が大騒ぎなのに、ここだけ別の次元に居るみたいだ。
「場所を間違えたか?」
「円形の街ですし、東端と言われても結構大雑把ですからね。」
「早く合流したいが……この場所凄く嫌な予感がするな。」
「私も同感です。」
ガンッ……
「な、なんだ?」
壊れそうな小屋から何かを叩く音が聞こえてくる。
「誰かが中から扉を開けようとしているみたいですね。」
ガンガンッ!
「……………」
ガンッ!バキッ!
小屋の扉が中程でへし折れて地面にガラガラと倒れ込む。
「やっと開いたか。まさか俺がこんな所を通る事になるとはな。」
小屋から一歩、二歩と出てきた人物を見て、俺もニルも動きを止める。
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