第33話 出立

小人族王に会う機会は意外と早く訪れた。正確に言えば翌日の昼頃、安静にしている俺の元に族王が再度足を運んでくれたのだ。


「シンヤ。体の具合はどうだ?」


「痛みも引いてかなり良くなったよ。優秀な治療師だな。」


「それは良かった。」


「それで?今日はどうしたんだ?」


「これだけの事をしてもらっておいて、何も渡せないというのは気が引けるからな。これを持ってきたのだ。」


そう言うと、小人達がワラワラと荷物を担いで入ってくる。


「わぁー!綺麗です!」


ニルが目を輝かせて見ているのは、小人族が菌の研究とは別に特産としている織物だった。


シルクの様な肌触りと艶。繊細に編み込まれた芸術性の高い一品ばかりだ。


「小人族の織物は世界的に有名な物だからな。体の小ささを利用した超繊細な織物は、丈夫さもあってかなり高値で取引されているんだぞ。」


「知らなかったです!」


「男の俺が見ても感動する程の物はここでしか手に入らないんだ。」


「我々自慢の品ばかりだ。受け取ってくれ。」


「素直に受け取っておくよ。ありがとう。

ニル。好きな物を一巻ひとまき選んで良いぞ。」


「私が選ぶのですか?!せ、責任重大です…」


沢山ある織物にあちこちと目を向けるニル。


「何を言っている?ここに持ってこさせた物全てシンヤの物だぞ。」


「……は?!」


小人達が持ち込んだ物全てとなると…


「何巻あると思ってんだ?!」


「確か五十程度だったか?」


「はい。ちょうど五十巻になります。」


「だそうだ。」


「なるほどー。五十あるのかー。って違う!こんなに貰うわけにはいかんだろ!」


小人の織物と言えば、世界でも最高級品。それを五十巻……いくらになると思っているのだろうか…


「何を言う。これくらい当然だ。やると言ったらやる!受け取らないというならば、燃やしてくれて構わん。好きにしてくれ。」


「強引だな?!いや、そりゃ嬉しいけどさ…ちょっと多過ぎて気が引けるレベルだぞ?」


「我々の気持ちだ。素直に受け取ってくれ。」


「…分かった。有難く頂いておくよ。」


これ以上は、逆に失礼になるだろう。素直に受け取っておこう。


「それと、もう一つ渡しておきたいものがある。」


「これ以上貰うわけには…」


「いや。これは是非持って行ってくれ。」


族王が渡してきたのは、書簡。


「これは?」


「私、小人族王テリも、シンヤを推すという旨を記した書簡だ。一人より二人の族王から推されている事実はどの街に行っても強力な物になる。」


「有難く頂いておくよ。」


「これだけしか出来なくてすまないな。」


「十二分だよ。あ、そうだ。」


俺は人差し指から指輪を外して族王の前に置く。


「??」


「これは操形の指輪という魔具だ。

ゴーレムを作り出して操る事が出来る。」


「魔具とは珍しいな。」


族王は指輪を見ながら髭を撫でる。


「これを族王にやる。」


「っ?!」


族王の白い眉が上へ上がる。


「俺もニルも自分の魔力でゴーレムくらい作れる。持っていても使わない物だから、族王に渡して、街を守る為に使って欲しい。

魔力が必要無いから小人族でも使えるはずだ。」


「……せっかく感謝の気持ちを渡したのに、またしても恩を受ける事になるとはな。」


「要らないものを処分してくれと頼んでいるだけだから気にしないでくれ。」


「我々に必要な物だ。有難く頂いておくよ。

シンヤ達はまだ暫くこの街に居るつもりなのか?」


「まだ神聖騎士団が来ないとも限らないからな。少なくともデルスマークと連携が取れるまでは居るつもりだぞ。」


「本当におんぶに抱っこだな…」


「困った時はお互い様だ。それに、デルスマークとの連携はそんなに難しい話じゃないさ。」


「何かあれば気軽に言ってくれ。せめてこの街にいる間は不自由無く過ごしてもらいたいからな。」


族王が去るのを見届けて、持ち込まれた織物を見る。


「凄い量ですね…」


「だな…」


「これって…一巻どれくらいする物なのですか?」


「物にもよるが、ここに持ち込まれたのはどれも最高級の品質だ。一巻ウン十万はするだろうな。」


「っ!!」


「凄い顔になってるぞ。ニル。」


さっきまでは喜んで触っていた織物を、慎重に慎重に置くニル。


「き、危険な物でした…」


ふぅ、と息を吐いて一安心したニル。


「危険では無いがな。インベントリに入れておこう。それが終わったらカラとライに合流しよう。」


「はい…」


織物に触れられず、人形のように固まったニルを横目に全てインベントリに収納し、カラとライの元へと向かう。


「シンヤー!こっちこっちー!」


カラの声がする方へと向かうと、何人かの小人達と、大量のキノコとカビが一箇所に集められていた。見上げる程の量がある。


「凄い量集めたな…」


「任せてって言ったでしょ?」


「生態系とか大丈夫なのか?」


「そこは安心して。間引いても大丈夫な物ばかりだから。」


「プロに聞く質問じゃなかったな。全部貰っても良いのか?」


「その為に集めたんだから、貰ってくれないと逆に困るわ。」


「ありがとう。これで色々と面白い物が作れそうだよ。」


小人達に礼を言うと、皆照れた反応を見せてくれる。


「ニル!私達も少し時間が空いたから、一緒に遊びましょう!」


カラがニルを誘う。


「え…?」


「嫌なの?」


「嫌ではありませんが…」


ニルは俺の顔を伺っている。行きたいならそう言えば良いのに。


「行っておいで。俺は少しやる事があるから。」


「さすがシンヤ!分かってるわね!行くわよニル!」


「は、はい!」


キノコの間を走り抜けていくニル。子供は、たまにああして遊ばないとな。うん。


インベントリに全てのキノコとカビを収納した後、森の外に向かう。

俺とミグズが戦闘を行った場所だ。


「ここに飛ばされたのか。」


森の外から続く直線的な破壊跡。

そしてその終着点には、丈夫なはずのフカキノコがバラバラになって落ちている。


「フカキノコに当たらなければ、衝撃でもっと酷い事になっていたかもしれないな。」


森の外に目をやると、地面に未だ残る血が鮮明に見える。


「………」


ミグズは強かった。最後の最後、ニルが壁を作ってくれなければ、体を真っ二つにされていただろう。


「クソッ……」


今回は守れたが、次も同じ様に守れるかは分からない。


「このままじゃダメだって事だよな…」


ネックレスに触れて気持ちを落ち着かせる。


「神聖騎士団の奴らは本当に後退したみたいだな。

となると、まずはこっちが先だな。」


ピィーー!


鳥の鳴き声の様な高い音が響く。ナームから貰った木製の笛を吹いたのだ。


音が周りに響き渡ると、一人の男が近くの木の影から姿を現し、ゆっくりと近付いてくる。


「何なりと。」


「他には?」


「近くに二人程居ます。」


「そうか。一人、これをプリトヒュに届けて欲しい。プリトヒュからの返事が来るまではここに滞在している予定だ。なるべく急いでくれ。」


「承りました。」


俺が渡した書簡を両手で丁寧に受け取ると、一度だけ頭を軽く下げて、走っていく。

男がビュィーっと指笛を吹くと、一頭の馬が走ってきてそれに飛び乗り去っていく。


「ナームの部下すげぇ……」


持たせた書簡には、神聖騎士団を追い返すに留まった事や、小人族王からも書簡を受け取った事、この街に兵の派遣が必要な事等の要点だけ書いてある。

獣人族王からの援軍が既に向かってきているとすれば、先んじて兵を何人か送ってくれたり、良い様にしてくれるだろう。


傷は翌日には完治していたが、もう一日安静にして欲しいと言われ、翌々日からやっと自由に動けるようになった。そんな折。


「ご主人様。お願いがあります。」


ニルが覚悟を決めた顔で俺にそんな事を言ってきた。


「ニルがお願いなんて珍しいな。なんだ?」


「……私を鍛えては貰えないでしょうか。」


「鍛える…?」


「はい。」


「鍛えるって言われても…」


「どうかお願い致します!」


深々と頭を下げるニル。ここの所たまに考え事をしていたが、これが原因だったのか。


「詳しく話を聞かせてくれないか?」


「………あの時。ご主人様がお一人で戦われているのを見て、私は自分の無力さが、心底恨めしいと思いました…」


「……」


「少しでもお役に立つために…お願い致します!」


俺が自分の無力さを呪った時と同じだ。


自分の無力さを嘆いて、なんとかしたいと心底願っているのだ。


「……分かった。俺に手伝える事は手伝うよ。ちょうど俺も試してみたかった事があるしね。」


「あ、ありがとうございます!」


パァッと明るくなるニルの表情。


「こんな所で暴れたら迷惑だから外に行こうか。」


「はい!」


こんな女の子に戦い方を教えるなんて、鬼畜の所業だと思うだろうか。大人が子供を守る事こそが、あるべき姿だと叱咤しったされるだろうか。


でも、この世界では、子供であろうと、大人であろうと、弱い者から死んでいく。


ゾンビになった子供の姿。あの光景が頭から離れない。


この世界では、子供であろうと戦い方を学ばなければ死ぬ。

もし戦い方を教えた事で、ニルの命が助かるというならば、俺は鬼畜と呼ばれようと、教える方を選ぶ。


けれど…ニルが強くなりたい、絶対になるんだ。という決意は、強固なものに見える。子供が決意したにしてはあまりにも強固過ぎる。


カンッ!キンッ!


「はぁ……はぁ……」


「どうした。もう終わりか?」


地面に膝をついて息を切らすニルに声を浴びせる。

額から汗を流し、盾と短剣を強く握り締め直し、立ち上がる。


「まだ…はぁ……まだです!」


カンッ!


「うぅっ!」


疲れて雑になった動き。無理矢理突き出した剣ではスライム一匹倒すことは出来ないだろう。

そんなことを許すはずもなく、納刀したままの刀で短剣を軽く打つ。


カランカランッ…


地面の上を転がった短剣が乾いた音で転がる。


「……受けろ。」


短剣を手放したニルの前に立ち、刀を持ち上げる。


「ひっ?!」


引き攣った顔で俺の方を見上げ、小盾を両手で構える。視界を遮る様に構えた盾。俺の動きは全く見えていないだろう。


「それでは前が見えないだろ?

ここまでだな。」


「ま…まだ…」


「無理をしても仕方ない。いきなり強くはならないからな。」


「………」


「ニル。強くなりたい理由は、本当に自分の非力を嘆いて…なのか?」


「っ?!」


ニルが、俺の言葉に驚きの表情を見せる。


「小さな女の子が、非力なのは当たり前の事だ。強くなりたいと思うのも仕方ない事だろう。こんな世界ではな。」


「……」


「でも、他にも何か背負っているように見えるのは、俺の勘違いなのか?」


「……………」


「……言いたくない事なのか。それなら仕方ないな。」


「…ご主人様……」


申し訳なさそうに、泣きそうな顔をするニル。


「言いたくなったら聞かせてくれ。

よし!次は俺の修練に付き合ってもらうぞ!」


「…はい!」


ニルが何か言おうとして、何度も躊躇っている事は少し前から気が付いている。なかなか言い出せない程に、彼女の中では重要な事なのだろう。

話したくなるまでゆっくりと待つとしよう。


それからは毎日修練し、小人達の防衛強化計画も手伝った。

ゴーレムを生成操作する者も決まり、強化計画も大詰めになった頃、プリトヒュからの連絡が帰ってきた。

書簡を送ってから十日目の朝、いつもの様に森の外でニルと修練を行っていると、書簡を渡したナームの部下が走り寄ってくる。


「シンヤ様。こちらを。」


「返事が来たか。」


書簡を開き、プリトヒュからの返事を読む。


「……さすがプリトヒュ。いや、族王か。」


「なんと書かれていたのですか?」


「獣人族王から送られてきた兵がこちらへ向かっているらしい。

少数だが、精鋭揃いだってさ。明日には着くと書いてある。」


「一安心ですね。」


「そうだな。ただ、ゆっくりもしていられないみたいだ。

プリトヒュが手に入れた情報からすると、神聖騎士団は次々と小さな村や街を占拠しているらしい。放置していれば、あっという間に飲み込まれてしまうだろうとも書いてある。」


「相手も待ってはくれませんね…」


「阻止する為にも、明日早くに西に向かう。」


「ここから西というと、タナルポ大洞窟に向かうのですか?」


「よく知ってるな?」


「何度か話を聞いた事がありますので…同じ奴隷であったの方々から…」


ここから西へ数日。そこにはタナルポ山脈と呼ばれる高く長い山脈があり、その山脈を東西で繋いでいるのがタナルポ大洞窟である。

迂回する道もあるが、当然数倍の時間が掛かるし、万年雪が掛かる山脈を越えるなんて選択をする奴はいない。

この辺りから山脈より西へ向かうには、このタナルポ大洞窟を通らなければならないというわけだ。


そして、そのタナルポ大洞窟を抜けた先に広がるのが、エルフ達の領土である。

向かう先はエルフの領土内にある首都、ヒョルミナという街だ。


「ヒョルミナに向かうつもりなんだが…」


「大丈夫でしょうか…?」


「うーん……」


エルフという種族は、とてもプライドが高い事で有名な種族である。ニルの反応を見るに、ゲーム時の設定と変わりなさそうだ。

そしてもう一つ懸念しているのは、全種族の中で、最も人族を嫌っている。という事だった。

理由は簡単な話だ。エルフはプライドが高いが、お人好しが多く、人族に何度も騙され、奴隷へ身をやつした者が多いからだ。

エルフは、長寿、容姿端麗ようしたんれい、魔力が高いという特徴を持っているが、肉体的には他の種族より弱く、人族の狡猾さの餌食となったらしい。

生々しい内容のフレーバーテキストだったから覚えている。何より、一度だけゲーム時にヒョルミナへ入った事があるが、NPCが会話してくれなかったり、いきなり攻撃してくるなんて事もあった為、よく覚えているのだ。

そこまでリアルにする?!って思った記憶がある。


「拒否されたら、拒否されたでその時考えよう。

神聖騎士団に攻撃されている事は間違いないんだ。何か役に立てるかもしれない。」


「嫌われているのに、助けるのですか…?」


「嫌われているからって何もしなければ、嫌われたままだろ?

俺は別にエルフの事嫌ってないし、むしろ会いたい!だからとにかく何かしてみないとな。」


「………」


俺の言葉を聞いて、時が止まったかのような反応をするニル。


「ポケーっとしてどうした?」


「…いえ…そんな考え方があるのですね。」


「嫌われたくらいで折れてたら社畜なんて出来ないぞ?」


「シャチク…?」


「なんでもない。さあ、今日中に別れを済ませて、明日一で西に向かうぞ。」


「はい!」


ニルと共に森の中に入ると、世話になった小人も、そうでない小人にも、別れを告げる。


「シンヤー!ニルー!行かないでよー!」


「カラ!我儘言わない!

すいません。シンヤさん。」


「ライも大変だな。」


「ふぇーん!」


カラは特にニルと別れるのを寂しがっているみたいだ。


「ニル。族王に挨拶してくるからカラ達と居てくれ。」


「分かりました。」


豪快に泣きじゃくるカラをニルに預けて族王の元に向かう。


「シンヤ。」


「族王。」


「行くのか……本当に世話になった。この恩は絶対に忘れない。」


「そんなに感謝されても恐縮するからやめてくれ。」


「ほっほっほっ。またいつでも来い。シンヤ。」


「必ず。族王。」


「テリだ。」


「え?」


「これからはテリと呼べ。友として。」


「…分かったよ。またな。テリ。」


「ほっほっほっ!」


小人族との別れを済ませた翌日。ニルを連れて森を西へと抜ける。


「ぶばぁぁぁー!」


「カラ。そんなに泣かなくても…」


「びぶばばんべぼんばびー!」


「何言ってるか一ミリも分からないよ…」


「ぶべぇぇー!」


「シンヤさん。ニルさん。本当にありがとう。また…必ず。」


「あぁ。必ずまた来るよ。」


鼻水と涙を滝のように流すカラと、僅かに瞳を湿らせたライに手を振り、西へと向かう。


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



その頃…某所。


「っ!!」


切り落とされた腕が痛む。


「あー………腕半分の差だったなー。」


「尻尾を巻いて逃げ帰ってきたというのは本当らしいわね。ミグズ。ビビットのチビも死んだらしいし。」


「うるせぇ。治療の為に帰ってきただけだ。あいつとは必ず決着を付ける。」


「随分とご執心ね。私、気になっちゃうわ。」


「手を出すんじゃねぇ。俺の獲物だ。」


「あの面倒くさがりのミグズがそこまで言うなんてね…片腕失ったっていうのに。」


「片腕を失ったからこそだ。あー…お前と話すのはめんどくせぇ……俺は絶対安静だ。じゃあな。」


声を掛けてきた女の廊下を進む。


「…………ふふ。シンヤ…だったかしら。気になるわねぇ…」


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



「っ?!」


「どうかされましたか?」


「いや、なんか寒気の様なものが…」


「風邪ですか?」


「いや。違うと思うけど…」


なんだろう。嫌な感じだったな…噂でもされたか?


「それより、やっぱりニルの剣は綺麗過ぎる。」


「うっ……」


「そんなに正直で真っ直ぐな剣では、高い知能を持ったモンスターや、人相手には通用しないぞ。」


「は、はい…」


小人族の街イガルテを出た俺達は、三日間歩いて、タナルポ大洞窟付近まで辿り着いていた。今は日課の修練を行っていたところだ。


ニルと修練をし始めて、分かった事が二つある。

一つは、ニルの剣術は誰に教わったのか知らないが、綺麗にまとまっていて、とても子供の剣術とは思えないものだ。しかし、それは逆を返せば駆け引きが下手という事になる。これから相手にしていくのは神聖騎士団の連中が中心になる。

ゴブリンの群れの中に躊躇無く女性を放り込む様な奴らだ。駆け引きが出来なければ話にならない。


「もう一度お願い致します!」


「よし来い!」


カンッキンッ!ガンッ!


「うっ!」


「盾を上手く使うんだ!」


「はい!」


もう一つ分かった事は、ニル自身が、という認識が無い攻撃に対しては、ニルの体に掛けられた魔法が発動しないという事だった。

最初流れで攻撃を当てた時に気が付いた。


「よーし。ここまで。」


「はぁ…はぁ…ありがとう…ございました……」


「体を流して休憩したら行くぞ。」


「…はい……」


毎日修練しているが、ニルは一度も弱音を吐かない。本当に強くなりたいと心から思っているのだろう。

汗を流してやった後、その場に座って暫し風を感じる。ザワザワと背丈の低い草を鳴らす風が、頬を掠め、タナルポ山脈の山肌を登っていく。


「近くまで来るとタナルポ山脈というのは、凄く大きいのですね。雲で頂上が見えません。」


「頂上付近は、雪が一年中溶けない程に標高が高いからな。」


「あの下に空いている大きな穴がタナルポ大洞窟ですか?」


ニルが指差した先には大きな洞窟。


「その入口の一つだな。タナルポ大洞窟は自然に出来た洞窟で、入口も出口も沢山あるんだ。一番太く広い道がここっていうだけなんだよ。」


「そうなんですね。それは初めて知りました。」


「中はもっと凄いぞ。行こうか。」


「はい!」


休憩もそこそこにタナルポ大洞窟へと向かう。

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