第32話 焼聖騎士

「ご主人様。」


「ニル。どうだ?」


外を警戒してくれていたニルに後方から近付き、現状を確認する。


「まだ動きはありません。」


「完全に待ちの体勢だな。このまま帰ってくれれば嬉しいんだが…そうもいかないわな。」


「どうされますか?」


「先にアンデッドの群勢を前に出して、タイミングを見て俺も出る。ニルはここから魔法で援護してくれ。但し、聖騎士には絶対に手を出すな。こっち側が狙われたら困る。」


「分かりました。」


「よし。相手が動き出す前に、こちらから攻めるぞ。」


「はい!」


俺が作り出したアンデッドは約百体。魔力の残りは僅か。

興奮状態で認識しにくいが、先程右に左にと走り回ったせいで疲れも溜まりつつあるはず。いくらステータスが高いからといっても、走れば疲れるし息切れもする。刀を振れば腕も疲れるし、その分スタミナを使う。

全快には程遠い状態だが、今を逃せばチャンスは二度と来ないだろう。


「…う……え゛ぁ…」


ゾンビ、スケルトン、そしてレイスが森の中からゾロゾロと出ていく。


「うっは!アンデッド?!あいつビビットの奴と同じ魔法使えるのかよ!おもしれぇ!」


「ガルナ様?!」


「あれはもうアンデッドだ!殺せぇ!」


アンデッドと神聖騎士団が戦闘を始める。


「ちまちまやってねぇで出てこい!シンヤァ!

俺はしょう聖騎士!ミグズだぁ!」


ゴウッ!


聖騎士周りに集まっていたアンデッドが黄色の炎に包まれた大剣によって消えていく。普通の炎より温度が高く、切断面がジクジクと音を立てて泡立っている。


怨嗟の剣の様に、武器に炎を纏わせる魔法。

上級火魔法、黄炎おうえんの剣。

高温の炎を纏わせ、剣を振るだけで周囲を焼き尽くす。来る途中に森や村が跡形も無く消えていたのは、あれで焼かれたからだろう。灰すら残らないはずだ。


「厄介な魔法を…残り魔力は少ないが…仕方ないな。」


魔法陣を刀の刃に向けて描くと、青色の光が放たれ、刀の周りを水が纏う。


黄炎の剣に対するカウンター魔法である、上級水魔法、流水の剣。

これであの炎は無効化出来る。視界がグラりと揺れる。本当にこれ以上は魔法を使えない。初級魔法でさえ無理だ。


「行ってくる。」


「お気を付けください。」


アンデッドの群勢の中、猛威を振るうミグズの元へ走り寄る。


「がはははははっ!やっと来たかぁ!」


「オラァァ!」


ガキッ!


振り下ろした刀を大剣で受け止めるミグズ。

舞い踊る黄色の炎と水が混ざり合い、ジュウジュウと音を立てながら互いに消えていく。


「そんな細い刀なのに、なんて圧力だよ。」


「軽々受け止めておいて、よく言うぜ。」


「がははっ!ふんっ!」


大剣の圧力を受けて体が後ろへと吹き飛ぶ。


「やっぱり力では圧倒的に不利か。」


「がははははは!行くぞぉ!」


ズガンッ!


走り寄ってきたミグズが、大剣を振り下ろす。左に躱し斬りつけようとしたが、避けた大剣が地面に当たると、炎が舞い、地面に亀裂が走る。


足元が揺れて体勢を崩した俺の腹目掛けてミグズの蹴りが突き刺さる。


ドゴッ!

「ぐっ…」


ギリギリで後ろへと飛び、威力を半減させた。しかし、それでも体が地面と水平に飛んでいく。


なんとか空中で体勢を立て直し、着地する。


ズキッと肋骨に痛みが走る。折れてはいないみたいだが、かなり痛い。何度もあの攻撃を貰うわけにはいかない。


「おいおい。威力を殺したとはいえ、骨も折れないのかよ。お前本当に人族か?」


「お前に言われたくないな。」


「がははっ!」


足に全力を込めて地面を蹴る。


周囲の景色が後ろへと飛んで行き、一瞬で十メートル近く離れていた距離がゼロになる。


「うおっ?!」


ギャリギャリギャリ!


刀の刃が、防御に動いた大剣の上を走る。


「あぶねぇ!」


そのままミグズの首元に迫る刃。体を後ろへと逸らして躱すミグズ。前髪しか斬れなかった。

その体勢のまま大剣を振り抜こうとしたミグズの横腹に、俺の蹴りがめり込む。


メキッ!


「ぐぅっ!」


体が真横に吹き飛んでいくミグズ。


ガリガリガリガリ!


ミグズは大剣を地面に突き刺し、威力を殺す事で地面に着地する。


「……がはははははっ!こりゃ間違いなく化け物クラスだなぁ!」


蹴られた横腹をさすりながら笑うミグズ。相変わらず不釣り合いな屈託の無い笑顔。


「これだよこれ……楽しい…楽しいなぁ!」


周りの神聖騎士団員は、ニルが魔法で蹴散らしてくれている。頼んでおいて良かった。この男を相手にしながら他の奴にまでは気を回せない。


ゴウッ!


大剣が通り過ぎる度に、風圧と熱が全身を打ち、トラックでも通ったかのような空を切る音が聞こえてくる。


軽々と振るわれる大剣を受け流すだけで関節が軋み、地を穿うがてば大穴を作り出す。

聖騎士はどいつもこいつもこんな奴らなのか?!


「がはははははっ!」


刀の刃が頬をかすめても、眉一つ動かさずに大剣を振り抜いてくる。


「はぁぁ!」


ガンッギンッ!


手数で勝ってはいるものの、今一つ決めきれない。

ミグズは鎧の無い腕や足の部分が刀傷だらけで、血もかなり失っているはず。だと言うのに、爛々らんらんと輝く瞳は全く力を失っていない。

こっちはあの馬鹿力を受け続け刀を握る手が震え始めているというのに…


「聖騎士の連中以外に、これ程楽しめる奴が居るなんてなぁ!がはははははっ!」


「光栄な事だな。」


「おっと…」


足元が定まらず、ふらつくミグズ。元気なのは精神的なものだけで体は血を失って限界が近付いているらしい。


「…がはは!足元が定まらないなんて何年振りだろうか!良いねぇ…昂ってきたぜぇ!」


今までで最も強いミグズの殺気が俺の身を包んでいく。ミグズもふらついているが、俺も似たような状態だ。傷はほとんど無いが、立っているのもやっとだ。


「お互いにあと一撃だなぁ。」


「………」


ミグズが切っ先を後ろへ向け、腰を落とす。大剣を両手で固く握り、次の一撃が最高の一撃だと目が言っている。


俺は刀を下段に構え、荒くなった息を整える。


その時、俺とミグズの間にだけ、静寂せいじゃくが訪れる。


自分の心臓の音が聞こえ、ミグズの息遣いが聞こえてくる。


「………」


「…………」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


互いが同時に走り出し、ミグズが大剣を横薙ぎに、俺の刀は下から上へと流れていく。


バガァァァン!


左から流れてくる大剣がを突き破り、飛んできた石の塊が俺の体を横へとズラす。


顔面を狙った俺の刀は右へとズレていき、ミグズの腕を切り裂き、左の脇から肩口へと抜けていく。

石の壁を突き抜けた大剣。その前に当たった石のせい…いや、お陰で、既に俺の体は横へと流れ、切っ先が左腕を掠めるだけ留まった。


そこまでは見えた。


目に映る景色が横に物凄い勢いで流れていく。

疲れきってボーッとする頭では何が起きているのか理解出来ない。


ドカッ!


背中の辺りに強い衝撃が走り、鈍い痛みを感じる。その数瞬後…


ガガガッ!


全身に激しい痛みと衝撃が訪れ、景色の動きが止まった。


自分が吹き飛ばされていたのだと、その時初めて理解した。


身体中を走り抜ける激痛。それがゆっくりと遠ざかっていく。


「ご主人様ぁ!!」


ニルが走ってくるのが見える。菌糸の森に突っ込んだらしい。


「うっ……」


頭の上から流れてくる暖かい何かが、頬を伝い、流れ落ちていくのを僅かに感じる。


奥に見えるミグズ。その左腕が地面の上に落ち、血溜まりが出来ている。鼓動に合わせてピューっと吹き出す血がここからでも見える。

両膝を地面に預け、気絶しているのかこうべを垂れるミグズ。

周囲に居た神聖騎士団員達が集まり、彼を担いで下がっていく。


それをボーッと見ていると、やけに周りがうるさい事に気が付く。


「ご主人様!ご主人様ぁ!」


「いかん!左腕が半分いっておる!」


「傷薬を!ご主人様ぁ!」


あー…俺の状態に慌てているのか………


「ご主人様!しっかりして下さい!ご主人様ぁ!」


俺の事を何度も何度も涙目で呼ぶニル。その顔を見ていると、視界が周りから暗くなっていく。


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



「………ぅ……」


「ご主人様?!」


左腕の痛みに目を覚ますと、デルスマークでの時と同じ様に、イベント完了を告げるウィンドウが見える。

その奥に見える、銀髪の青い目をした少女の輪郭が徐々に鮮明になってくる。


「……ニル…」


「……よか……良かったです……」


俺の右手を両手ですがる様に掴み、涙を流すニル。


「心配掛けたな……っ!!」


起き上がろうとして、左腕に体重を掛けると、強い痛みが走る。


「まだ動いてはいけません!傷口が開いてしまいます!」


左の上腕に巻かれた白い布が、一部赤くなっている。


出続けているウィンドウに目を移す。


【イベント完了…小人族の街、イガルテを守り切った。

報酬…操形そうぎょうの指輪

報酬はインベントリに直接転送されます。】


「神聖騎士団は?!」


やっとハッキリした意識の中で、神聖騎士団の事を思い出す。


「大丈夫です。連中は既に引きました。」


「そうか…あの聖騎士の男は?」


「戦場に左腕が残っていましたが、恐らく生きていると…」


「仕留め切れなかったか……いや。逆か。ニルが居なければ、今頃死んでいたのは俺の方だった。また助けられたな…」


「…私の力なんて…」


「ありがとう。」


「……はい。」


礼を言ってもニルの表情は明るくならない。ここは話題を変えよう。


「ここは?」


「小人達が休める様にと運んでくれました。」


「そうか。お礼を言わないとな。」


「お礼を言わねばならないのは、こちらの方だ。」


「族王?!」


俺が寝ているフカキノコの端からテリ族王と、数人の小人達が歩いてくる。


「起きなくて良い。安静にしていなさい。頭も腕も、まだ痛むだろう。」


族王に言われて、頭部にも白布が巻かれている事に気が付いた。


血塗ちまみれで運び込まれた時は心臓が止まるかと思ったぞ。」


「全然覚えてないな…」


「……すまなかった。」


テリ族王が、深々と頭を下げる。


「族王?!」


「頭をあげてくれ!」


「いや。これは必要な事だ。」


姿勢を戻すと、真剣な表情で話を進める…といっても毛でほとんど見えないが。


「…我々が不甲斐無いばかりに、君に大怪我を負わせたのだ。」


「この場で聖騎士の相手を出来るのは俺だけだった。私怨しえんも大いに含まれていたし、そこまでしてもらう必要は無いよ。」


「もしそうだとしても、我々の問題なのだ。我々が犠牲を覚悟してシンヤへの負担を少しでも軽くするべきだった。小さき戦士…その言葉を使うのはあまりにも烏滸おこがましい事だった。

その身一つで、我々小人族の負担を全て受け止めてくれたのだ…そんな者に、頭を下げる事を躊躇する様では、小人族に未来など無い。

本当にすまなかった。」


王の言葉に、周りにいた小人達も同じ様に深く頭を下げる。


「俺を含めて皆無事だったんだ。もう頭を下げないでくれ。」


「…ありがとう。」


この空気はあまり得意じゃない…また話を変えよう!


「そ、それより!街の防衛はどうなっているんだ?また来る可能性も十分考えられるだろ?あの焼聖騎士ミグズって奴は生きているわけだし。」


「あの傷で直ぐに戻って来るとは考えにくいが、当然無いとは言い切れない。森の周りにカベキノコを使った外壁を建てさせたり、罠を仕掛けさせたりしているところだ。

我々は考えが甘過ぎたのだ…色々な面でな。」


「そうか…まだ本調子ではないけれど、手伝える事があったら言ってくれ。」


「いや。これ以上頼るわけにはいかない。それよりも…」


王が後ろを振り向くと、三人の小人族女性が現れる。


「この者達は、この街でも優れた医療技術を持ち合わせている。

良いか!持てる最高の力を注ぎ込んでシンヤの治療に当たれ!無礼は一切許さない!」


「「「はい!」」」


「シンヤ。今はとにかく傷の治療に専念してくれ。」


「お、おう…」


最初に見た時、優しそうな印象しか無かったが、今の族王はかなりキリッとしている。変われば変わるものだな…


「シンヤ様。傷の具合を見てもよろしいでしょうか?」


「助かるよ。」


族王が去った後、白布を外して傷口を処置してくれる三人の小人達。傷口を確認し、何か白い粉末状の物を塗ろうとしている。


「それは?」


「この森に自生するカビの一種で、ホワイトモールドと言います。自己治癒力を高める効果があります。」


「へぇ。見た事ない気がするけど。」


「限定的な環境でしか生きられないカビですので、私達が人工的に培養ばいようしています。」


「そんな事もしてたんだな。水を差してすまなかった。頼んでも良いかな?」


「お任せ下さい。」


テキパキと処置してくれる三人。新しい白布を巻き終わると、お辞儀をして去っていく。


「ふぅ…これで一段落ついたかな。」


「………」


「ニル?」


「…………」


思い悩んでいる様な顔で俯いているニル。何か考え事をしているのか、俺の声が聞こえていないらしい。


「ニル?」


「あ!はい!なんでしょうか?!」


気が付いたのか、慌てて返事をしている。


「何か悩み事?」


「い、いえ!」


「??」


こんなニルはあまり見ない……大丈夫だろうか?


「シンヤー!」


カラとライが走ってくる。


「カラ!ライ!」


「目が覚めたって聞いて飛んできたのよ!」


「心配掛けたな。とりあえず大丈夫みたいだから安心してくれ。」


「良かった…倒れてから半日以上目が覚めなかったから、心配していたんだ。」


そんなに経っていたのか…


「それより、二人は何していたんだ?随分汚れているみたいだが。」


「森の周辺に散らばった死体の処理さ。そのままにしておくとアンデッドになるからね。」


「あー…そう言えば、俺の支配下にあったアンデッドはどうなったんだ?」


「ほとんど残っていなかったけれど、残った数体は森の外周でじっとしてるよ。」


「森を守れっていう指示を出してあるから、見合った行動をするのか…思った以上に優秀な魔法だな…」


「ちょっと不気味だけど…森を守ってくれているなら、居てくれた方が良いわよね。」


「見た目がポップな感じになる魔法とかあれば良いけど……超リアルRPGにそんな機能は無いわな。」


それはそれで逆に不気味な気もするし…


「え?」


「なんでもない。」


「うん?あ、そう言えば、シンヤに必要な物が無いか、族王様に聞いてくる様言われたんだけど、何かある?」


「必要な物か…出来れば使えそうなキノコやカビをいくつか持っていきたいんだが。」


「それくらいなら全然平気だと思うよ!私達に任せてよ!」


「ありがとう。頼むよ。」


「ライ!行くわよ!」


「待ってよカラ!」


二人はバタバタと走り去っていく。


「……いつでも慌ただしい奴らだな。

ニルも行ったらどうだ?ここにいても暇だろう?」


「いえ。私はここに居ます。」


「…そうか。」


「はい。」


さっきからニルの表情が暗い。無理に聞き出すのもなぁ……今は他のことでもしておくか。


「そう言えばイベント完了してたな…」


インベントリを調べて報酬を取り出す。茶色の透明な宝石が一つ付いた銀の指輪。とてもシンプルなデザインで、飾り気は無い。


「初めて見るアイテムだな…どんな効果があるか見てみるか。」


【操形の指輪…ゴーレムを生成し操る土魔法が込められた指輪型の魔具。[言霊…ゴーレム生成]】


「ゴーレム…?」


「どうされたのですか?」


「ゴーレムの生成と操作が可能な魔具らしい。」


「前に教えて頂いたイベントというもので手に入れたのですか?」


ニルにはイベントの話をしてある。そもそもニルを買おうと思ったのもイベントがあったからだし、ニルに隠す必要は無いと判断した。


「そうだ。今回の報酬がこの指輪なんだ。」


「魔具となると、それだけでもかなり高価な物になります。」


「魔具ってのは魔力が無くても使えるんだよな?」


「はい。魔石が魔力を供給するとの事です。

ゴーレムの生成と操作という事は、任意に発動させるタイプのはずです。発動条件があるはずですが…」


「この言霊ってやつか。」


説明欄にある言霊という文字。発動条件はこれだろう。


「装着者が特定の言葉を放つ事が発動条件という事ですね。」


「やってみるか。」


指輪を人差し指に差し込むと、ヒュッと大きさが勝手に調整される。


「おぉ…フリーサイズ!ってそんな事はどうでもいいか。

………ゴーレム生成!」


言葉を放つと、指輪にはめ込まれた魔石が淡く光り、目の前に土塊つちくれのゴーレムが現れる。


それと同時にゴーレムの使い方や、最大で出せる数など、必要な情報が頭に流れ込んでくる。


「魔法書とは違って、忘れていた事を思い出した。みたいな感覚だな……それにしても、このゴーレム…使い方が難しいな。」


「そうなのですか?」


「流れ込んで来た情報からすると、こいつらを数体出しても、壁として使う事くらいしか出来ない。力はそれなりに強いみたいだが、足は遅いし指示した事しか出来ない。」


「確かに、私達では使い勝手が悪いかもしれませんね…」


ゴーレム生成と一口にいっても、様々なタイプのゴーレムがある。

戦闘に特化したゴーレム。身の回りの世話に特化したゴーレム等様々だ。今回指輪に込められていた魔法のゴーレムは、建築や重いものを運ぶ際、特に効果を発揮するタイプのゴーレムだ。

戦闘に使えなくも無いが、先程言ったように壁くらいにしかならない。


「もし戦闘に使うなら、どこかを守ったりする時は強いかもしれないが…籠城戦ろうじょうせんとかな。

だが、最大の問題は、この程度の魔法なら普通に使えるところにある。俺もニルも普通に使えるからな。」


「そうですね。それに…」


「魔具を使った魔法だとどうしても一段階弱くなる。つまり、このゴーレムの能力値も、一回り弱くなってるってことだ。

何か別の意図でもあるのか…?んー………分からんなぁ……」


「………」


「どうした?」


「あ…えっと……」


何かを言いたそうにしているニル。


「とりあえず聞かせてくれないか?」


「その…とても高価な物だとは分かっているのですが…もし使わないのであれば、小人族の方々に使ってもらえれば、この街の防衛に役立つかも…と思いまして…」


「うーん…」


「こ、高価な物ですので!そんなに簡単に渡せる物で無いことは分かっておりますので!」


「うん。ニルの言う通りにしよう。」


「ふぇ?!」


変な声が出たな。ニル。


「使わない魔具を持ってても仕方ない。使える人に渡して使ってもらった方が百倍マシだ。

さすがニル!良いこと言う!」


「よ、よろしいのですか?」


「よろしいのです!

渡すとしたら、族王だよな?」


「そうですね…この場合はその方がよろしいかと。」


「よし。次に会った時に渡そう。」


「はい。」

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