第31話 小さき戦士作戦

上を見ていると、横から服を掴まれる。ニルの方へと首を回すと…手は震え、今にも泣き出しそうな目をしているニル。


俺は馬鹿だ。


大の大人である俺が、この世界に来て、最初の戦闘で何を感じた?


恐怖だ。

色々な事に対する恐怖だったはずだ。


男の、しかも大人の俺だって感じた恐怖を、こんなにも小さな女の子が感じないとでも?断じて否だ。

俺に付いてくると決めた時、死を覚悟したから恐怖を感じないとでも?断じて否だ!


俺はニルの頭を撫でてやる。


ニルは少しだけ安心した顔になり、俺の腕を掴んだ。


俺がしっかりしなくてどうする。ニルは特に聡い子だ。怖いという気持ちを持っていれば間違いなく敏感に察知する。


自分の顔を殴りたくなったが、そんな奇行はニルを怖がらせてしまう。安心しろと心の中で呟いて目を閉じる。


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



数時間後、神聖騎士団陣営では……


「くぁーー!………起きるのめんどくせぇ……

おい。誰かいるかー?」


「は、はい!」


赤い刺繍が入った服を身に纏う男がテントの外から返事をする。


「進行状況はどうなったー?」


「間もなく半分まで到達致します!」


「ちっ。まだその程度か。」


舌打ちに反応してビクビクしている男。


「申し訳ございません!」


「ふぁー!まあ良い。見に行くからお前も付いてこい。」


「はい!」


「小人は出てきたか?」


「いえ。今のところあれから一度も顔を見せておりません。」


「引きこもりやがって。めんどくせぇ…」


「現在金騎士ガルナ様の指揮の元、動いています。」


「やっと来たのか…あいつはバカだからな。一つの事しか出来ねぇんだよ。あー……めんどくせぇ……」


テントを出て前線に向かうと、腕を組んで立っている、長い茶髪のイタチ獣人。


「おい!ガルナ!」


「これはミグズ様!」


いつもいつも無駄に声がでけぇ。いつも元気だし。


「お前いつ来たんだ?」


「二時間程前です!遅れました!」


「何してやがった?」


「来る途中に背信者の村がありましたので!」


「俺は早く来いと言っただろ?」


「背信者の村がありましたので!」


ダメだ。会話が成り立たねぇ。あー……めんどくせぇ。まあいいか。


「……そうか。」


「はい!」


「今はどんな状況だ?」


「森を破壊しています!」


「……そうか。」


「はい!後はお任せ下さい!」


「お前に任せるとろくな事にならねぇ。」


「大丈夫ですよ!」


「大丈夫じゃねぇから言ってんだよ…ダメだ…こいつと話すのめんどくせぇ……もう勝手にしろ…」


「はい!」


その場に腰を下ろして見ていると、団員達が次々に森の中へと魔法を撃ち込んでいく。一番安全にこの森を進行する方法だ。

時間は掛かるが、無闇に突っ込むと、この森では人数など関係無しに殲滅される。


「よーし!撃て撃てー!」


ガルナの声が響き渡り、その度に魔法が放たれる。


「そろそろ夜も明けるなぁ……めんどくせぇなぁ…」


ボーッと菌糸の森を眺めていると、色鮮やかなキノコの横から黄色の丸いボールがコロコロといくつも転がってくる。


「なんだありゃ…?」


取り巻く様に配置していた全ての団員が手を止めてそのボールに注目している。


パンッパンッパンッ!


次々に黄色いボールが破裂し、その瞬間に視界を完全に遮る程の真っ白な光が放たれる。


黄色いボールに注目していた者達全てが目を覆う。


俺の目もやられた。


「な、なんだっ?!」


「見えないぞ!」


ボスッボスッ!


何か軟らかい物が衝突する音が聞こえてくる。


「何が起きている?!」


ガルナの声が付近に響く。


ゴウッ!


聞き慣れた、炎が空気を切る音が聞こえる。


ズガガガガガガーン!


鼓膜こまくが破れるのではないかという爆音。音の衝撃と熱波ねっぱが体へ伝わってくる。


目のくらみが徐々に回復していく。


「これは…」


弧を描く様に配置していた団員。その前列にいた者達のほとんどが即死だっただろう。


百人近くは戦闘不能になった。


「ぎやぁぁぁ!目がぁぁ!」


「俺の……腕……どこに……」


一瞬でここまでの被害が……


「背信者共がぁ!」


ガルナも視界が戻ったのか、現状を見て憤怒ふんぬする。


「ぎぃぁぁぁ!」


「来るなぁ!」


左の方から部下のものであろう叫び声が聞こえてくる。


俺もガルナも同時に目を移すと、そこには一人の男が居た。


黒髪、黒い瞳の男は、ギラギラと朝日を反射する刀を手に、部下達に肉迫し次から次へと切り裂いていく。


付近の土は直ぐに真っ赤に染まり上がり、その男が普通ではない事を物語っている。

鋭く、躊躇の無い太刀筋。俺の部下を盾にしたり、敢えて急所を外す事で叫び声を上げさせ恐怖心を煽ったりと、一対多の戦い方に慣れている。



その男を表す言葉としてはそれが最も正しいだろう。


強過ぎるのだ。普通からは完全にかけ離れている。


「……ふっ……がはははははっ!遂に見付けた!来た来たぁ!」


「ミグズ様…?」


俺の態度に困惑するガルナ。


「俺は神聖騎士団に入ってから、強い奴と戦えなくなって全てがめんどくせぇと思っていた。俺とまともに戦える奴なんざこの世界には聖騎士の連中だけだったと、入ってから知ったんだよ。

だけど、聖騎士同士の殺し合いは禁止ときたもんだ…クソめんどくせぇ事を言い出したから、抜けようかと毎日考えていたんだが…聖騎士以外の奴なら殺し合いが出来る…がはははっ!こんなに嬉しい事は無いなぁー!」


あの刀を振り回している男は、俺と、俺達聖騎士と同じ、異常と呼ばれる側だ。


腕や足がうずき出し、早く剣を振りたいと叫んでいる。


「ミグズ様!お下がり下さい!」


「…………せぇ。」


「うるせぇ!」


「ミグズ様!?」


全て無視して、男に向かって走り出す。


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



作戦が開始し、ニルと小人達の援護の元、俺は単身敵陣へと突入していた。


「ぐぁぁぁ!」


振った刀が簡単に人の首を切り離す。周りに居るのは神聖騎士団の連中で、斬ることに躊躇いは無い。


「ご主人様!」


森の中から聞こえてきたニルの声。


「退けぇぇ!!」


敵陣の中央からヤバそうな奴が走ってくる。


真っ赤な剛毛の髪に黒い瞳。ガタイが良い人種の男だ。黒い刺繍の入った信者服の下に真っ赤な鎧を着込んでいる。間違いなく奴が聖騎士の一人だ。


「ニル!」


「はい!」


俺の声に反応して森の中から青いボールが転がってくる。

先制攻撃で使った黄色いボールもそうだが、これはまとめてカビ玉と呼ばれる物で、黄色い玉はイエローモールド、青い玉はブルーモールドと呼ばれるカビで出来ている。

その名の通りカビが球状に凝集ぎょうしゅうしたもので、外敵からの攻撃等、衝撃によって色々な反応を起こす。

反応は指数関数的に進行し、僅かな猶予の後一気に効果を発揮する。その効果は既に鑑定魔法にて確認済みだ。


【イエローモールド…衝撃を与えると閃光を放つ。】


【ブルーモールド…衝撃を与えると黒い胞子を大量に放つ。】


森の中に待機している小人がカビ玉に衝撃を与えた後、転がしているのだ。


元気満々な聖騎士が寄ってくるが、それを完全に無視してボールの方、つまり森の方へと走る。


ボシュッ!


目の前にあった青いカビ玉が破裂して中から大量の細かな黒い胞子を飛ばす。一気に半径数メートルの空間を完全な黒に染め上げる様は、さながら煙幕だ。


その中を突っ切って森の中に飛び込む。


「ミグズ様!森の中に入っては危険です!」


団員数人に声を掛けられて、煙幕の手前で足を止めた聖騎士。その顔が黒い胞子の隙間から一瞬だけ見える。


その顔は、信じられない程に嬉しそうな笑顔。


子供のような、屈託くったくのない笑顔と言えば良いのだろうか…?

心の底から嬉しそうな顔をしながら……手に持った真っ赤な大剣で、自分を止めた部下達の胴体を水平に切り裂いている。


あまりにも不釣り合いな光景に、身の毛が逆立つ。

その光景に違和感と不気味さを感じたのは俺だけでは無かったはずだ。


それに、大剣を片手で軽々と振り、数人の人をケーキでも切り分けているかのように簡単に切り裂いている。

オーガでさえ簡単にねじ伏せるられるであろう腕力。人族の域を超えている。


「次だ!」


黒い胞子が晴れる前に、森の中を一気に移動する。


聖騎士から離れ、全く別の場所からもう一度敵陣へ突撃し、場を荒らしたら、また森の中へと引っ込む。


これが作戦の第二段階だ。


一段階目は閃光と爆発による奇襲。


二段階目は、森から離れた場所に立って魔法を撃ち続ければ、こちらからは手を出せない。その意識を払拭ふっしょくする為のものだ。

そこは安全な場所などではないと思わせる必要がある。


聖騎士は厄介だが、相手にしなければどうという事は無い。

俺が戦っているのは聖騎士ではなく、神聖騎士団だ。

戦闘が目的ではなく、小人族を守るという目的を果たす為の手段が戦闘なのだ。

四百人もいる団員はそれだけで脅威となる。まずは確実に数を減らし、行軍を止める。

森から飛び出し姑息に攻める。危険になれば小人達の援護の元、森に戻る。これを繰り返すだけでも数は減らせる。


「なんだあいつ……強いなぁー!がはははははっ!」


「ミグズ様?」


「ガルナ!あいつの事何か知ってるか?!」


「恐らく死聖騎士ビビット様を殺害したシンヤという冒険者かと!」


「シンヤ…シンヤか……良いねぇ…たかぶるねぇ!」


「随分と団員が殺られました!」


「あんな姑息なやり方、プライドの高い軍や騎士なら絶対にやらないからなぁ…」


神聖騎士団の連中が喋る声が聞こえてくる。

姑息、卑劣、狡猾こうかつ。上等じゃないか。一対多の場合、どんな手段でもとにかく相手の数を減らす事が優先だ。

敵にどれだけののしられようと、それは俺にとっては賞賛しょうさんでしかない。


「ニル!」


「はい!」


森に戻った俺は少し離れた位置に陣取っていたニルに声を掛ける。


返事をしたニルが指先で魔法陣を描き始める。


ヒットアンドアウェイは、相手が混乱している間にのみ有効な手段だ。隊列が整い始めると、相手に与える打撃は少なくなり、危険度は上がる。

もう一度突っ込んできたら討ち取ってやると構えている連中に、別の打撃を与える。


三段階目の攻撃。


ニルに合わせて俺も魔法陣を描き出す。


「いきます!!」


ニルが魔法陣を完成させた合図だ。


付近に居る小人達が、数人でサッカーボール程の大きさのキノコを持ち上げる。

青と黄緑色の縞模様のキノコ。出来る限り触りたくないキノコだ。鑑定魔法の表記は…


【チハキキノコ…薄い膜の内側に、即効性の猛毒を持った胞子が入っている。吸い込んだ者は血を吐いて絶命する事から名付けられた。】


下手に割ればこっちが危ない。


ゴウッ!


魔法陣が淡く緑色に光ると、ニルを中心に激しい突風が吹き荒れる。


初級の風魔法、ガスト。効果は突風を巻き起こすだけだが、今回はそれでこそ都合が良い。

ニルの巻き起こした風に向けて、小人達がチハキキノコを優しく投げ入れる。


風船の様に飛んで行ったいくつかのチハキキノコが敵陣の真上に到達する。


「ここだ!」


俺の魔法陣も完成し、緑色の光が発せられると、チハキキノコが真下へ向かって一気に下降する。


中級風魔法、ダウンドラフト。


下降気流という名前には全くそぐわない範囲攻撃魔法。下降する風は腕や足ならば簡単に切断する程の鋭さを持っており、十メートルにも渡る範囲に威力を発揮する。

当然それだけでも多くの者を戦闘不能に追いやることが出来るが、この下降気流に巻き込まれたチハキキノコが破裂して猛毒の胞子を更に広い範囲へと散乱させていく。

数十メートルの範囲に広がった毒の胞子を吸い込んだ者は、その場に血を吐きながら、バタバタと倒れていく。


四百人居たはずの神聖騎士団は、既に半分程に減っていた。


「えげつねぇな!がはははははっ!」


「……うがぁっ!この背信者共がぁ!突撃だぁ!」


ガルナと呼ばれていた金騎士が、直剣を前へと突き出し、突撃を命じる。


中途半端な位置に陣取っていては危ないと判断したのだろう。下がるか前へ出るかの二択を迫られたわけだ。

小さき戦士作戦は、ここで相手が下がれば一時的に休戦状態へ、前に出るなら………第四段階へと進む。


「全員下がって配置につけ!来るぞ!」


「下がれ下がれー!」


「遅れるなー!」


俺の声に反応して小人達がワラワラと散らばりながら下がっていく。


敵の残った奴らのうち、半分が槍や剣を構えて森へと向かってくる。金騎士も真ん中辺りに居る。


「おー!ガルナ頑張れー!」


聖騎士は相変わらず満面の笑みを浮かべながら、その場を動いていない。


「切り開けぇ!」


突撃してきた部隊が、一気に森の中へと流れ込んでくる。


「殺せぇ!背信者共を殺せぇ!」


「うおぉぉ!」


「逃げろー!下がれ下がれー!」


森の中をちょこまかと動き回る小人達を追う神聖騎士団。


「はははは!最初からこうしていれば良かったのだぁ!」


森の中を逃げている小人達の背中を見て、意気揚々と剣を振り上げるガルナ。


ここが死地とも知らずに。


「今だ!」


「やぁー!」

「たぁー!」


俺の合図と共に付近に隠れていた小人達が一斉に手に持った松明を振り下ろす。


ズガガガガガガッ!


突撃してきた神聖騎士団を取り囲む、突然現れた真っ白な壁。完全に神聖騎士団をその中に閉じ込めてしまう。


「なんだこれは?!」


ガンッ!ガンッ!


「クソッ!壊れないぞ!」


真っ白な壁の正体はカベキノコと呼ばれるキノコである。


【カベキノコ…火によって爆発的な成長をするキノコ。強度が高く小人達が家の建材等に使っている。】


ウィンドウに表示された通り、面白い特性を持っていて、使い方によってはこんな事も出来るキノコだ。

火を与える前は一センチ程度、真四角で真っ白な傘の無いキノコだが、火を与えると数千倍、要するに数十メートルにもなる。


壁の上に飛び乗り、中を見下ろすと、壁をなんとか壊そうと躍起になっている。


「貴様!」


俺の顔を見てガルナが直剣を向けてくる。怖くもなんともない。


「菌糸の森は小人族のテリトリーだ。安易に踏み込んで痛い目みたのを忘れていたらしいな。」


「八つ裂きにしてやる!」


会話にならない。ダメな奴か?


「自分の状況を理解していないのか?ここは助けを懇願こんがんするところだと思うが?」


「背信者にそんな事をするつもりなど無い!」


「そうか。まあ懇願されても許す気など無いがな。」


魔法陣を描き始めると、中からいくつかの魔法や武器が飛んでくる。


ズズズッ!


目の前に、オーガの時と同じ様に石の壁が現れる。


「残念ですが、ご主人様への攻撃は私が許しません。」


「助かるよニル。ここからじゃないと中が見えなくてさ。」


魔法陣を描いていく。


「登れ!どうにかして抜け出すんだ!」


「クソッ!退け!魔法が使えないだろう!」


「お前だけ逃げようとしやがって!」


「やめろ!離せ!」


ガルナの指示に、皆が押し退け合う様に壁に張り付く。


協力すれば何人かは壁を越えられるだろうに、我先にと互いの足を引っ張り合っているせいで、誰も壁を登ることは出来なさそうだ。魔法一つ使えず、わちゃわちゃしているだけ。Fランクの冒険者でも、もっとまともな判断が出来るだろう。


「数人が逃げ出した場合の事も考えていたんだが……無意味だったらしいな。」


描き出した魔法陣が茶色に光り出す。


上級の土魔法。荊棘けいきょく


本来、とげのある小木の総称として使われる言葉だ。この言葉を冠する理由は魔法を見れば分かる。


ズガガガッ!


「ごふっ……なん…だ……これ…」


ガルナの腹部を貫通した二メートル近い石の棘。腹から突き出した棘には赤黒い血糊がベッタリと付いている。

百人近くがひしめいている壁の内側。その地面や壁から大小様々な大きさの石棘が勢い良く突き出し、神聖騎士団の連中を串刺しにしている。


「う゛あ゛ぁぁぁぁ!」


「ごっ……がふっ……」


顔面を貫かれ即死している者もいれば、急所を外れて叫ぶ者。胸部に刺さった棘を見詰めながら、糸を引く血を口から垂らす者。

被害はそれぞれだが、無事で済んでいる者は一人としていない。

壁の中は、小人達が目を覆うほどの地獄絵図じごくえずと化していた。


「ニル。数人連れて聖騎士の動きを見張っててくれないか?」


「分かりました。」


ニルが森の外側へと向かって行く。


「お前達にはもう少し働いてもらうぞ。」


魔法陣を描くと、青白い炎が壁の中へと飛んでいく。


即死した者の一人が、その炎を胸中に取り入れると、短い声を出しながら動き出す。


「う゛……あ゛ぁ……」


「ひぃっ?!ゾンビっ?!やめろ!来るなぁ!」


足を石棘に貫かれ、動けなくなった者の元にゾンビがのそのそと近付いていく。


「いやだぁ!いやだぁぉぅ………」

ゴキンッ!


壁の上まで届く、首の骨が折れる音。


自分の行いに不快感を隠せない。それでも、俺は魔法陣を描き続けた。


数十分が経過した頃、壁の中には、俺の支配下に無い死体は無くなっていた。


「さすがにこれだけ魔法を使うとキツいな…」


「シンヤ……」


カラが複雑そうな顔をして近付いてくる。


「カラ…嫌なものを見せてすまないな。」


「…ううん。私達を守る為だから。それに、シンヤが本当は嫌だって思ってる事くらい顔を見れば分かるから。」


「そうか…」


きっと酷い顔をしているのだろう。自分でもなんとなく分かっている。


「聞いていた作戦、小さき戦士作戦は引き込んだ連中を閉じ込める所までだったよね?ここからはどうするの?」


「…ここからは簡単だ。恐らくあの聖騎士は絶対に森へは入って来ない。

俺達が出てこないと分かれば、また森を削り始めるだろう。援軍を呼ぶ可能性も高い。

そうなる前に、俺がこのアンデッドの群勢と共に攻めに出る。」


「聖騎士と森の外で戦うの?!」


「外で戦う為に、アンデッドの群勢を作り出したんだ。

俺一人では百人プラス聖騎士はどう足掻いても無理。せめて聖騎士以外の連中を足止めする何かが必要だったんだよ。」


「それがこのアンデッドって事ね…」


「小人達はもしもの時の為に守りを固めておいてくれ。」


「でも…」


「森の外で戦うんだ。小人達にはどうする事も出来ない。俺がやるしか無いんだよ。」


「……」


「そう気にするな。大丈夫だ。」


カラの不安そうな顔に笑顔で返し、ニルの居る場所へと向かう。


少ししか動きを見ていないが、この先に居る聖騎士。恐らく死聖騎士よりも強い。

頭のネジが一本残らず吹き飛んでいるのは一緒だが、油断していると瞬殺されるかもしれない。最初から全力で行く。

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