第15話 チャム
「息が合わない…か。」
一人一人の実力で見れば、このパーティは決して弱くない。ブルータルウルフ程度に後れを取る事はまず無いはずだ。
しかし、実際は真逆の結果になってしまっている。
「普段ならもっと息が合うのに、戦闘になると突然ダメダメになるにゃ…」
「…………」
「何か気が付いた事とか無いかにゃ?」
「いくつかあるにはあるけれど、それを言っても良いものか迷っている。」
「何かあるなら教えて欲しいだす。」
「こういう事ってのは言ったら直ぐに変わるものでは無いし、言った事で変に意識をしてしまってギクシャクしてしまう。なんて事もある。
そもそも俺の意見が正解かも分からない。三人には三人の戦い方やリズムがあるだろ?それを崩してしまうかもしれないからな…」
あまり他人のパーティの戦い方に口を出すなんて、普通はしない。マナー違反も良いところだ。
「……いや、やはり教えてくれ。」
「良いのか?」
「俺達チャムは、全員Cランクのパーティだ。知っているとは思うが、CランクからBランクに上がる為には大きな壁がある。」
「エリーの言っていたやつか…」
「その壁を乗り越える為には今のままではダメダメにゃ。」
「息を合わせようと意識すればする程、泥沼にハマっていっている気がするだす。」
「何か気が付いたなら教えてくれ。頼む。」
軽く頭を下げる三人。
「そこまで言うなら……
俺が見ていてまず思ったのは、ディニズとベルドが前衛、イシテリアが後衛という形があまり良くない。」
「この形が一番良いと思ったんだがな…俺とベルドは生活魔法程度しか使えない。魔法を使えるイシテリアが後ろから魔法を使ってくれると助かる。」
「確かに魔法を使える奴は後ろから高火力の攻撃をする。ってのは
敵をコントロールして、魔法攻撃を当てやすくする必要がある。いくら高火力の魔法でも当たらなければ意味が無い。」
「うっ…確かに私の魔法は一発も当たってないにゃ…」
「それは大剣も同じ事だ。
大剣は前衛の高火力。一撃が重い分攻撃自体が遅い。ブルータルウルフの様な速い相手に当てるには、敵をコントロールする役割が必要になる。」
「そうか…シンヤがやってたのはそれか!」
「そうだ。一撃は軽くても良い。手数と素早さで相手を翻弄出来る中衛が必要なんだよ。」
「中衛か…」
「この中ではイシテリアの役目だな。レイピアは手数の多さが武器だ。加えてその極端なまでの軽装。素早く動き回る事が出来るっていう自信の現れだと思うが?」
「でも…魔法の高火力は捨てきれないにゃ。」
「別に捨てる必要は無い。状況を見て、魔法を使うか、レイピアを使うかを決めるんだ。」
「状況を見て…そんな器用な事、私に出来るのかにゃ…?」
「イシテリアはこのパーティの中で一番周りが見えている。敵の接近や仲間の動きに口を出していたのがいい証拠だ。中衛に向いていると思うぞ。」
「にゃははー…なんか照れるにゃー…」
嬉しそうに頬に手を当てるイシテリア。
「逆にディニズはブンブンと大剣を振り回し過ぎだ。」
「うっ…」
片方の眉を上げてギクリと擬音が付きそうな反応を見せるディニズ。
「大剣の攻撃力はどんな相手にも脅威だ。高火力の魔法と同じでな。それなのに、ディニズみたいに適当に振りまくる大剣なんて避けられるから怖くもなんともない。」
「ぐほぅ!」
「大剣で怖いのは、確実に当てられて、一撃で殺られる事だ。」
「そ、その通りだな…」
「大剣を振れば絶対に当たるなんて奴が盾の後ろで構えててみろ。攻撃してもいないのにそれだけで相当な圧力になる。もっと落ち着いて確実に当てられる時にだけ振れ。外したら一気にピンチになるし、仲間も危険に晒す事になる。」
「お、おう……」
痛い所を突かれた…といった反応だ。
「最後はベルドだな。」
「御手柔らかにお願いするだす…」
「ベルドはイシテリアと真逆で周りが見えていなさすぎだ。特に仲間の位置。」
「仲間の位置…だすか?」
「盾はパーティの最前線。敵から初めに攻撃を受ける位置だ。敵から目を離せない。それは分かるが、ディニズとイシテリアの位置を見ずに把握して、攻撃のタイミングだけで良いから一歩だけズレてやれ。それだけで攻撃する方はかなり楽になる。
ベルドを避けて大回りするだけで、敵には体勢を立て直す時間が出来るんだ。」
「踏ん張っていれば良いというものでは無いだすな…」
「俺が気が付いたのはそのくらいだな。偉そうに色々言ってしまってすまない…」
「…………」
俺の話に、三人がポカーンとしている。
「あのー……?」
「………凄いにゃ!」
「あぁ。俺達の問題点がハッキリ分かったよ。」
「あくまでも俺の意見だからな?」
「いえ、言われて納得しただす。」
「そうなると、私はディニズの前に出たり、後ろに下がったりしながら戦う方が良いのかにゃ?」
「魔法陣を描いている時は無防備になるだす。」
「そうだな。魔法を使う時は下がってくれたら、俺とベルドで前を塞ぐ。」
「逆に素早く掻き回す時はシンヤみたいに動き回って敵をコントロールするのにゃ!」
「これは息が合わないとかそんな話じゃなかったな。」
一度理由が分かると、その後の流れが想像出来る。これは良いパーティの証だろう。
「シンヤ…何者なのにゃ?」
「何者って…駆け出しのDランク冒険者だ。」
「またまたそんな嘘言ってー。さすがにそんな嘘を信じる程馬鹿じゃないぞ。」
「謙遜も過ぎれば嫌味だにゃ。」
「いや。本当だぞ。ほら。」
首から下げている冒険者ギルドの登録証を見せる。
「………うにゃ?!本当にゃ!」
「嘘だろ?!その実力でDランクなんて……ギルドは何やってんだ?!」
「あー。いや、俺がこなしたクエストの数も少ないし、あまり目立ちたくないから。このままで俺は満足なんだよ。」
今は神聖騎士団の事もあるから、特に目立ちたくない。
「にゃー?!シンヤはバカなのにゃ?!」
「それだけの実力があるなら、ランクを上げて報酬の高い依頼をこなした方が色々と良いだろ?」
「普通に生きていけるし、別に問題無いかなーって…」
「なんと言うか…欲の無い奴だなシンヤは。」
「いや、のんびりやりだいだけだよ。ランクが上がっていくと色々と面倒な話も増えてくるからさ。」
のんびり…というのは今となっては考えていないが、面倒な話が増えるのは本当に嫌だ。
「否定はしないけれど…変な奴なのにゃ。見返りの方が全然大きいのにゃ。」
「俺はこれで良いんだよ。それに、更に目立つわけにはいかなくなったしな。」
「…神聖騎士団の連中か。」
「…あぁ。」
神聖騎士団を許すつもりは無いし、事を構える覚悟もある。だが、俺一人で神聖騎士団に風穴を開けた所で、大壁に空いた針の先程の穴だ。そんな穴を末端の無意味な場所に空けた所であまり意味は無い。
大壁の
どうせやるなら勝てる一手を確実に打っていく。
「それより、馬車を使うとここからはどれくらいでデルスマークに辿り着くんだ?」
「後三日ってところかな。」
「馬車でも三日か。やっぱり遠いんだな。」
「お陰で俺達にも仕事が回ってくる。嫌な事ばかりじゃ無いさ。」
「私としては毎度護衛を頼まなければならないので悩ましいですけどね。」
ドルトーさんが困り顔で前を見たまま話に混じってくる。
「その分素材はドルトーさんに入れてるから良いだろ?」
「商人はどうしても勘定してしまうものですからね。」
「これだから商人は。」
「ははは。本当に仲が良いんだな。」
「これはお恥ずかしい所をお見せしてしまいましたね。」
「仲が良いのは良い事ですよ。」
「それよりシンヤは一人みたいだけれど、パーティを組まないのかにゃ?」
「ずっとソロでやってるぞ。」
「それにしてはパーティの動きに詳しかったな。」
「昔…一度だけパーティを組んだ事があってな。その時に色々と学んだんだ。」
「へぇー!どんなパーティだったのかにゃ?」
「それは…」
平原のずっと奥を見て、昔組んだパーティの事を思い出す。ゲーム時に、俺がソロプレイをする切っ掛けとなったパーティを。
「コラッ!イシテリア!踏み込み過ぎだ!
すまない、シンヤ。」
俺の視線に何かを感じ取ったのか、ディニズがイシテリアを叱り付ける。
「ごめんにゃ…」
「いや、気にしないでくれ。大丈夫だ。」
ショボーンと落ち込むイシテリア。
「イシテリアはそういう所が良くないぞ。気を付けろといつも言ってるだろう。」
「うにゃー…ごめんにゃー…」
「俺は気にしていないからその辺にしてあげてくれ。」
「シンヤ優しいにゃー!」
「ゴフッ!」
イシテリアが頭から俺の腹…というより
物理的にも、猫耳女性に突撃されるという精神的にも、強い衝撃を受ける。
琥珀色の耳が胸元でピコピコ動き、腰の辺りから出ている尻尾がくねくねと揺れている。
「あっ!コラッ!イシテリア!」
「ディニズはいつも怒ってばっかりにゃー。」
「誰のせいだ!誰の!」
「ご、ごくり……」
頭を俺から離してディニズと言い合うイシテリア。目の前でピコピコする耳から目が離せない。
「私のせいじゃにゃい!」
「イシテリアのせいだろうが!」
「二人とも落ち着いてだす。」
「そもそもお前はいつもいつも!」
「ディニズだっていつもにゃはーー……」
「なんだっ?!」
「はっ?!しまった!ついつい触ってしまった!」
目の前の耳に我慢出来ず、気がついたら触ってしまっていた。
「いきなり何するのにゃ?!」
「すまん。自分でも制御が不能になっていた。」
「真顔で怖いこと言うなにゃ!!」
「これが魔法……か。」
「違うにゃ!なに馬鹿な事言ってるのにゃ?!」
「イシテリアが手玉に取られている所なんて初めて見ただす。」
「シンヤ……やるな。」
「まあな。」
「そこで変なタッグを組むにゃー!」
「冗談だからそんなに怒るなって。」
「フシャー!」
ガリガリ!
「いでぇー!イシテリア!こいつ!」
「ディニズが悪いにゃ!」
「この!この!」
「離すにゃ!ベルド!」
「喧嘩は良くないだす。」
両手で二人の首元を掴むベルド。どうやらよくある事のようだ。発端は俺だが、ここは無言が正解だろう。
「馬も疲れてきたみたいですし、日も暮れてきました。今日はここまでにしましょう。」
「そうですね。分かりました。」
周囲の草丈が低めの場所をドルトーさんが見つけ、馬車を止める。
「よーし。さっさと終わらせるぞー。」
ディニズがパンパンと二回手を叩くと、三人がテキパキと野営の準備を始める。俺も手伝おうとしたら、ベルドが無言で手と首を振り、押し戻された。
「シンヤは休んでてくれ。準備は俺達がするからよ。素材を貰ったんだ。これくらいはさせてくれ。」
「…分かった。頼むよ。」
「おう!」
護衛任務で野営に慣れているのか、手際良く準備が進み、あっという間に完了してしまった。手を出さなくて正解だった。
「イシテリア。今日の晩飯は何にするんだ?」
「んー…そうだにゃー…」
「ブルータルウルフの肉は食わないのか?」
「あの肉はちょっと癖が強いだろ?獣人の俺達には臭すぎるんだよ。」
「あー。鼻が良いからか。人族でも好き嫌い別れるからな。
それにしても、イシテリアがこのパーティの食事を担当してるのか?」
「なんだにゃ。意外とでも言いたそうな顔だにゃ。」
「正直意外だ。」
「失礼な男にゃ!」
耳をピンと立てるイシテリア。
「いや。シンヤだけじゃなくて皆に言われてるだろ。意外なんだよ。」
「にゃんだと!」
「と言っても、イシテリアの料理の腕前は本物だぞ。俺とベルドが保証する。」
「イシテリアの料理は美味いだす。」
「へぇ。それは期待しちゃうな。」
「にゃはは!期待するにゃ!今日はゴロゴロ野菜とゴロゴロ肉のあっさりスープにゃ!」
「おっ!久しぶりに食うぜ!美味いんだよなー!」
「それならホーンラビットの肉を使うか?」
「ホーンラビットの肉?」
インベントリの魔法を使い、生で取っておいたホーンラビットの肉を取り出す。アーマーベアの肉でも良かったが、野菜と合わせたあっさりスープとなると臭すぎるだろう。
「にゃんだ?!いきなりホーンラビットの肉が出てきたにゃ!」
「ど、どっから出した?!」
「そう言えばウルフの素材が道中で手に入ったと言っていただすが…それも見当たらないだすな。」
「インベントリの魔法ですか。という事は、やはり渡人でしたか。」
「ドルトーさん何か知ってたのか?!」
「十年程前には沢山居たのですがね。剣の鞘に付いているエンブレム。あれが渡人である事の証明です。」
「聞いた事あるだす。どこかからかやって来て、不思議な剣を持った人達だすな。」
「最近は見掛けなかったので、気が付くのに時間を要しましたが。
先程のは渡人の方々にのみ使える、インベントリという魔法です。新鮮なまま荷物を持ち運ぶ為の魔法。ですね。」
「便利な魔法だな…」
「便利過ぎて目立つからあまり人前では使わないようにしているんだよ。」
「ならなんで見せてくれたんだ?」
「皆には見せても良いと思ったからだ。黙っててくれるだろ?」
「当然だろ。」
「シンヤが嫌がるのに人に言ったりしないにゃ!」
「だす。」
三人とドルトーさんも、直ぐに頷いてくれた。
「それより、こいつを使ってくれないか?」
「良いのにゃ?」
「その為に出したからな。」
「ありがとうにゃ!」
これで干し肉スープは回避出来た。グッジョブ俺!
「それならば、馬車に積んであるブルータルウルフの素材も街中まで持って頂けませんか?」
「構わないけど…良いのか?」
「私も、チャムの皆も、シンヤさんを信用しておりますから。それに、新鮮なままの方が高く売れるので。」
「商人だなぁ…」
「はい。商人ですから。」
「はは。
荷物を収納し、少しゆっくりしていると、料理が完成する。
「いただきまーす!んー!美味い!」
「本当だな。美味い。」
あっさりスープは野菜と肉の旨味がしっかりと溶け出していて、口に含むと
「こっちに来てから一人で飯を食う事がほとんど無くなったな…皮肉な話だ。」
「シンヤ?」
俺の独り言にディニズが反応する。
「いや。こっちの話だ。」
「そう言えば、シンヤって剣の扱いが独特だけど、誰かに習ったのか?」
「そんなに変だったか?」
「いや、別に変ではないぞ。鋭い剣筋だったから気になってな。」
「そうか……実は亡くなった父に、小さい頃から叩き込まれてきたんだ。」
「良かったら聞いても?」
「面白い話じゃないぞ?」
「シンヤの事を知りたいにゃ!」
「じゃあ軽く話すかな。」
「やったにゃ!」
「そうだな…俺の父は色んな意味で凄い人でな…あれは七歳くらいの時だったかな。」
ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー
俺が七歳の時。家にある小さな道場内での出来事だ。
「よーし!真也!父の胸に飛び込んで来い!!」
「たぁー!」
ゴスッ!
「ぐえっ…」
「どうした!真也!まだまだ出来るはずだぞ!さあ!父が受け止めてやる!」
「やぁー!」
ドスッ!
「ぶぇっ!」
「すまない真也!これもお前を強い男にする為に仕方ない事なんだ…すまない真也ーーーー!」
ゴスッ!
号泣しながら自分の七歳になる息子をボコボコにしているのは、俺の父、海堂
我が家は、道場でもないのに…父親が息子に、代々古武術を教えるというよく分からないシステムを導入していた。
我が家の古武術で教えるのは、体術と剣術。
なんでも、戦時中に始まったシステムらしく、男なら強くあれ。と、息子を鍛え出したのが始まりらしい。
「真也ー!」
「あ…な……た……?」
「っ?!!!」
俺にまたしても一撃を放とうとしていた父。その後ろ…扉の隙間から血走った目だけを覗かせているのが俺の母、海堂
長いストレートの茶髪に黒い瞳。薄い唇にパッチリした目。整った顔で、スタイルも良い。なぜこの父と結婚したのか分からないと言える美人な母だった。
「なにをしているのかしら?」
ギィー……
隙間から現れたのは、ニコニコした母。満面の笑みだ。
「ま、待ってくれ栄子!これは真也の為に!俺も愛する息子を泣く泣くだな!」
「いつの時代の話をしているのですか?今はそんな時代ではありませんよ?」
なんだろう。声と顔が合っていない気がする。
「ままままままま待ってくれ!」
ガシッ…
母の手が父の襟元を掴む。
「きゃぁぁぁーーー!」
ズルズルと引っ張られて扉の奥に連れていかれる父。母の細腕のどこにあんな力があるのだろうか…
バタンッ……
ゴスッガスッドスッベキッボギッゴリッ!
「ふるだべりがるべとぶっ!」
扉の奥から、聞いてはいけない音と声が聞こえてくる。
ギィー…
母は後ろ手にハンカチを仕舞いながら出てくる。ハンカチが赤く見えたのはきっと模様だろう。チューリップとかの。
「真也!大丈夫?痛かったわよね!ごめんね助けるのが遅くなってしまって!んーちゅっ!んーちゅっ!」
俺を抱き締めながらキスの嵐をくれる母。
「お、お母さん。苦しいよー。」
「あらやだ!ごめんなさいね!」
「お父さんは?」
「ちょっと外に買い物に行くって言ってたわ。」
「そ、そうなんだ。」
なんかこれ以上聞いてはいけない気がする。
「真也はお母さんと遊びましょうねー!」
これが我が家の家族構成……というか力関係だった。
こんな日が続いても、父は母の目を盗んでは古武術を俺に教え込み続け、母はその度に父を外出させていた。
高校に上がる頃には、いつの間にか俺も大体の事は覚えていた。今思うと、普通の父がキャッチボールをする感覚で俺に古武術を教えていたのだと思う。爺さんから受け継いだ子育て術を信じていたのだろう。
後にこれがファンデルジュでのプレイに大きく役立つ事になったのだが、この時はまだそんな事は誰も知らなかった。
教わっていた剣術は、西洋の剣術とは全く異なり、また、剣道で振るわれる剣術とも異なっていた。
戦時中に実際に使われていたという話だったし、より実戦的な剣術なのだろうと思う。
これが、ディニズが言っていた独特な剣術の正体である。
父からは古武術を習っていたが、母からは、その他の多くの事を学んだ。
重い愛情や、優しさはもちろんだが、何より大きな学びは、愛するものの護り方だった。
自分の身を呈して護る方法。自分から害するものを排除する方法。あらゆる方法で俺は母から護ってもらった。世の中の多くの子供はそれを知らず知らず教わっているとは思うが…
今はそれがとてもありがたい。
ポポルの街という愛するものが出来た俺には、この教えが何より必要だったから。
ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー
「へぇー…父親から剣術を習うなんて、なかなか珍しいな。」
「そうなのか?」
「普通はそんな危険な職に就いて欲しくなくて、家の手伝いをさせる事の方が多いにゃ。私はそれで料理が作れる様になったにゃ。」
「親に剣術を教わるのは貴族くらいのものだす。」
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