第12話 怨嗟の地下迷宮

「なんでこんな所に?!」


「ヌゥォォォォ!」


「ひっ?!」


レイスの叫び声にエリーが顔を引きらせる。


「ちっ!そんな事話してる場合じゃないな!下がってろ!」


「ま、魔法を…魔法を撃たなきゃ!」


動転したエリーが魔法陣を描き始める。


「ダメだ!下手に手を出すな!」


「ヌゥォォォ!」


レイスは俺を無視してエリーに向かっていく。

魔法陣を描いている相手を攻撃するのは、この世界では当たり前の事。それが例え霊体のレイスであってもだ。


「くそっ!」


飛び込む様にエリーの前に走り込む。


ガギンッ!


「ぐっ!」


無理な体勢で攻撃を受け止めた為、レイスの刃を受け止めきれず、脇腹を刃が掠めていく。


「オラァ!」


無理矢理レイスの剣を押し返し、距離を取る。


「な、なんで」

「バカが!」


「っ?!」


俺の怒声に肩をすくませるエリー。


「敵の前で迂闊うかつに魔法陣なんか描くな!死にたいのか!」


「なっ?!なんだと!?」


「ヌゥォォォォ!」


「ひっ?!」


強がるのか怖がるのかどっちかにして欲しい。


「オラァァ!」


ザンッ!


「ヌグォォォ!」


「ざ、斬撃が…効いた?!」


「終わりだぁ!」


半透明の肉体を真っ二つにする。


「グォォォォォオオ!」


くぐもった嫌な叫び声が部屋の中に響き渡る。


「や、やった…?」


「まだだ。」


「え?」


倒した一体が消えたと同時に黒い影が現れる。


「ヌゥォォォォ!!」

「グヌォォォ!」


「二体?!」


レイスが二体。新しく登場だ。


「最後は全部で十体になる。ここは俺に任せてエリーは静かにしてろ。頼むから手を出すな。」


「私をバカにするのか?!」


「そうじゃない。だが、とにかく今はここを突破したい。頼む。」


「っ……」


俺の言葉に動きを止めてくれた。


「グヌォォォ!」


「うるせぇ!!」


目の前の二体を殺すと、次は五体、それも倒すと、遂に十体のレイスが同時に出現する。


「お、おい!こんな数どうするの?!」


「どうするも何も、斬るだけだ。」


「数を考えろ数を!」


「考えた結果だ。」


「お、おい!」


レイスがフワフワと蛇行しながら攻撃を仕掛けてくる。


「危ない!」


ザンッ!


「あっ!」


ザンザンッ!


「え……」


「オラァ!」


「う、嘘…」


「これで最後だぁ!」


ザンッ!


「ヌゥォォォォ!!」


全てのレイスが消え去っていく。


「す…凄い……一人で…全部……」


「ふぅ……」


ギギギギギギ……


奥の扉が開いていく。


「エリー。」


「な、なに…?」


「扉の先はモンスターが現れない安全地帯だ。そこに入って話そう。」


「…分かった。」


エリーを連れて扉を潜る。安全地帯は五メートル四方の小さな部屋で、中には何も無い。だが、休憩は出来る。


「傷薬が大活躍だな。」


傷を受けた脇腹に傷薬を塗りたくる。


「………」


「それで?なんでこんな所にいるんだ?」


「私はお前を殺すと言ったはずだ!どこに逃げようとな!」


「逃げたわけじゃない。」


「うるさい!こんな場所に入っておいて何を言う!」


「はぁ……ここはダンジョンだ。」


「ダンジョン…だって…?」


「怨嗟の地下迷宮。それがこのダンジョンの名前だ。

アンデッド系のモンスターがゴロゴロ出て来る。」


「ア…アンデッド……」


顔を青くするエリー。アンデッドは苦手らしい。得意な奴など見たことは無いが…


「ここは普通のダンジョンとは違う。一度入ったら最深部に居るボスを倒し、その奥にある扉からしか出ることは出来ない。」


「えっ?!そんな…じゃあ…私はこのままここで…」


「いや。そもそも俺がここに来たのは死ぬ為では無く、ここで自分を鍛える為だ。当然ボスも倒して出る予定だった。エリーは俺の通った後を通れば問題無いはずだ。

ただ…エリーには、俺の指示に従ってもらうことになる。」


「そんな事許せるとでも思ってるの?!」


「思っていないが、そうしてもらわないと、ここで二人してアンデッドの仲間入りする事になる。」


「う……」


「指示と言っても、俺の少し後ろで静かにしているだけの事だ。せめてここからエリーを出すまでは指示に従ってくれないか?」


「……分かった…こんな陰気臭いところで死ぬのは私も嫌だから…」


「助かるよ。」


「ふんっ!」


打ち解けてくれるとは思えないが、ここを出るまで静かにしてくれていればそれで良い。

ニーヒスちゃんやプカさん。それに…シルビーさんの為にもエリーは絶対に生きて帰さなければならない。


「それで?これからどうするつもり?」


「ここで休憩を取ったら、奥に進む。

このダンジョンは全部で三階層に別れている。

一階層目はたった今通ってきたから説明は省くぞ。

二階層目は、一階層目と同じ様な作りで、さっきのレイスが通路を占拠してる。」


「えっ?!」


「大丈夫だ。通路の広さも変わらないから、一度に相手する敵の数は多くて三体。さっきの部屋より楽だ。」


「楽って…」


「二階層目のボスはダークレイスだ。」


「ダークレイス?!聞いた事しかないモンスターよ?!」


「レイスの亜種で、珍しいからな。強さはレイスより一段上ってところだな。ただ、Cランクだしそれ程変わらない。」


「変わるから!Cランクでも強い部類のモンスターってことよ?!」


「確かにダークレイスが使うは厄介だが、エリーなら耐えられるはずだ。」


死者の咆哮とは、ダークレイス等のアンデッド系モンスターが使う特殊な攻撃方法だ。不快になる叫び声で、格下の相手がそれを聞くと自我を失う。

俺はステータスだけは高いから問題無い。エリーもCランクのモンスター相手より格下という事は無いだろう。


「また何体も出現する…?」


「いや。そこでは一体だけのはずだ。」


「……ふぅ……」


「アンデッド系モンスターは苦手なのか?」


「に、苦手って程じゃないわ。好きじゃ無いってだけ。」


「そうか。」


「なによ。」


「別に何も言ってないだろ。」


「言いたそうな顔してるじゃない!」


「してないって。気のせいだ。」


「バカにして…」


口を尖らせてそっぽを向くエリー。

元々悪い子ではない。ただ…真っ直ぐ過ぎるだけだ。不器用…とも言うが。

そこに気が付くと、最初の苦手意識も随分と無くなったし、普通に話せる。

三十のオッサンが青臭い事を…と思うかもしれないが。仕方ないのだ。それくらい女性と関わりの無い人生だったからな!はっはっは!……ぐすん。


「それより、さっきのは何よ?」


「さっきの?」


「レイスの事でしょ!」


「あー。あれは怨嗟の剣っていう闇魔法でな。」


「闇魔法………っ!?!」


サッと俺から離れると腰のダガーを抜いて構えを取る。


「そういう事ね……やっぱりあんたが!」


「なんだ?いきなり。」


「闇魔法を使うのは魔族。つまり…あんたは魔族なのね!!」


この世界では光魔法は神聖騎士団の、そして、闇魔法は魔族の十八番なのだ。当然十八番というだけで、人にも使える者は少数ながら居る。


「いやいや。違うから。」


「騙されたりしないわ!私達に接触して何を企んでいるの!答えなさい!」


「魔族でも無いし、企んでもいないから。」


というか接触してきたのエリーの方からだろ。


「……」


「渡人ってのは全ての属性に適性がある事くらい知ってるだろ?」


「魔族は人に化ける事が出来るって聞いた事がある!あんたが悪魔じゃない証拠なんて無いでしょ!」


「証拠ならあるぞ。ほら。」


俺は腰に差していた鋼鉄の剣をエリーに向かって鞘ごと投げる。


「わっ?!とっと!何するのよ!」


手に持った俺の剣が、フッと消え、俺の手の中に現れる。


「っ?!」


「渡人の剣は他の人には使えない。このエンブレムが本物だって分かったろ?つまり、俺は魔族ではなくて、本物の渡人って事だ。」


「うっ……」


バツの悪い顔をするエリー。


「分かったならダガーをしまってくれ。」


渋々といった感じで腰にダガーを戻すエリー。


「俺は眠ったから大丈夫だが、エリーは眠くないのか?」


「バカにしないで。」


「してないっての……腹はどうだ?」


「だからバカにしないでって言って」

キューー……


「随分と可愛い腹の虫だな。」


「バッ!バカにするな!」


「腹が減ったなら素直にそう言えば良いだろ。前に調理したホーンラビットの肉があるからエリーもこっちに来て食え。」


「そんなものどこに…」


「渡人はインベントリって魔法が使えるって知らないのか?」


「インベントリ?」


「そうか。エリーくらいの歳だと知らない可能性もあるのか。単純に考えて十年だからな…」


「またバカにしたでしょ!」


「だからしてないって。毎度毎度突っかかってくるなって。」


「ふんっ!」


何かに当たりたい気持ちは分からなくは無いが、ダンジョン内にいる間くらいは抑えて欲しいものだ…


「インベントリってのは、渡人のみが使える…簡単に言えば物を収納しておく魔法だ。」


魔法陣を描き、インベントリから調理したホーンラビットの肉を取り出す。ルーカス達に渡した物と同じ物だ。


「ほら。」


驚きを隠せないエリーに手渡す。


「毒が」

「入ってねぇ!さっさと食わないと二度とやらないぞ!」


「……」


恐る恐る手を伸ばし、ホーンラビットの肉を手に取る。


「温かい?!」


「インベントリの中に入れる前の状態を保ってくれる仕組みでな。焼き立ての状態で入れたから温かいまま食えるんだ。」


「インベントリ…」


「ほら。さっさと食え。」


「わ…分かってるわよ。

…………っ?!塩?!」


「味が無い方が好みだったか?」


「そんなわけないでしょ?!美味しいわ!」


「それは良かった。あまり満腹にならない程度で抑えろよ。」


「分かってるわよ!」


食事を終え、少し腹の具合いが良くなってきた頃、次に向かう。


「そろそろ行くぞ。」


「えぇ。」


「あ、その前に、エリーのダガーを貸してみろ。」


「は?!そんな事出来るわけないでしょ?!」


「さっき話してた怨嗟の剣をエリーのダガーにも掛けるんだ。貸すのが嫌なら出してくれれば良い。

もしもの時に戦えないと危険だからな。」


「………」


疑りの眼差しを向けられたままダガーを抜いて俺に向ける。


「よし。これで良い。ただし、くれぐれも戦闘には参加するな。」


「分かってるわ。」


出来ることならば、エリーにはインベントリ内に入っている防具を無理矢理にでも着せたい所だが、防具にも渡人専用の物が多く、エリーの使える物となると、今エリーが身に着けている物とあまり変わらない。それに…素直に着てくれそうにも無い。

つまり…怪我をさせないように細心の注意を払って進まなければならないようだ。


「よし。じゃあ行くぞ。」


安全地帯を出る。階段を下へと降り、すぐ目の前にある通路には、既に何体かのレイスが漂っている。


「はぁぁ!」


「ヌゥォォォォ!」


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



「この中に…ダークレイスが?」


二階層目、中ボスの部屋の前に辿り着けたのは、数時間後の事だった。


「あぁ。入ったら直ぐに壁際に寄って、動くなよ。」


「分かってるわ……」


「行くぞ。」


ズズズズズッ…


一階層目と同様に、ほとんど抵抗無く開いていく扉。


扉の奥は、一階層目のボス部屋より一回り大きい。


「何も…居ない…?」


「下がれ!」


「う、うん…」


「さあ…来いよ。」


ガキンッ!


地面から飛び出してきた長く湾曲した真っ黒な刃。それを受け止め、弾き返す。


ゲームの中で最初にこの部屋に入った時は、この攻撃を避けられず、いきなりダメージを貰ってしまった事を、明確に覚えている。


このダンジョン内に入って、一階層目の中ボスからここまで、数え切れないレイスと戦ってきた。そして、その中で無意識にこう思ってしまう。


『レイスはダンジョンの壁や床を抜けられない。』


もしかしたらそれは事実なのかもしれない。しかし、それはこのダークレイスには当てはまらない。


地面から突き出していた刃がスススっと部屋の中心まで移動すると、床からダークレイスの本体が現れる。


通常のレイスと姿形は全く同じでありながら、纏う圧力は一段階上を行く。

手に持っているのは剣ではなく巨大なサイス。かまだ。


「ひっ…」


「怯えるな!」


格下でなくても、恐怖を抱いた者は死者の咆哮の影響を受ける可能性がある。


「こ、こ、怖くない!」


「死者の咆哮が来るぞ!耳を塞げ!」


俺の声に強く目を瞑り耳を塞ぐエリー。


ダークレイスがガパッと口を大きく開く。


「ブォォォォォォーーーー!」


低音とも、高音ともつかぬ不快な声が部屋に反射する。


「う…くっ…」


エリーはなんとか耐えてくれている。


「悪いが俺には効かないんだよ!」


ガキンッ!


振り下ろした剣が、ダークレイスの鎌に防がれる。

どうやら俺の剣が自分を傷付けられると気が付いているらしい。


ブワッと黒い霧の様に姿を変えると、背後に移動される。


お返しだと言わんばかりに振り下ろされるサイスを、体を捻って避ける。


「お返しのお返し…だっ!」


横薙ぎの一撃を、床に入る事ですり抜けるダークレイス。


床や壁の中に居続ければ強いと思うのだが、どうやらそれは出来ないらしい。入れてせいぜい数秒。その後には必ず体を出してくる。

とはいえ壁や床に入れるというだけでかなり厄介な相手に違いはない。

今まで戦ってきたモンスターや神聖騎士団の連中と比べても、圧倒的に動きがトリッキーだ。壁や床に入れる事を除いたとしても、独特のフワフワとした動きが実に読みにくい。ゲーム時のように力押しでも勝てなくは無いが、それでは成長に繋がらない。


「ここまでトリッキーな相手に、技術で戦えたら…大抵の相手には戸惑う事は無さそうだな。」


「ヌゥォォォォォォ!」


「オラァ!」


ギンッ!ガンッ!


ダークレイスの動きは実に不規則。

人や普通のモンスターと違い、実体が無い為、速くは無いが有り得ない動きをする。

自分の体を貫通させて攻撃を仕掛けてきたり、背後に首を向けて背面のまま戦ったり。

半透明でなければ、エリーは気絶していたかもしれない。


「かなりトリッキーだが…見た事が無いわけじゃないからな。だんだん読めてきた。

それに、散々体を動かしてきたし、この体にもかなり慣れた。」


ガンギンッ!


ダークレイスのサイスを絡めるように剣を回し、ダークレイスの構えを崩す。


「ここだ!」


ブワッ!


「と見せ掛けての…ここだろ!」


背後に向けて突き出した剣の先にダークレイスが現れる。


「グヌォォォーー!!」


深々と胸に突き刺さった剣。ダークレイスの体が半透明から完全な透明へと変わっていく。


「エリー。」


「………」


端っこで目を瞑り、うずくまり、両手で耳を塞ぐエリー。確かに静かにしていろとは言ったが、せめて目は開いておかないと、もしもの時に対処出来ないだろうに…いや、怯えて変な事をされるより余程良い…か。逆を言えばそれだけ信頼されているわけだし、そこまで含めてエリーを送り届けるのが俺の役割だろう。


「おい!エリー!」


「っ?!」


肩をトントンと叩くと、やっと顔を上げるエリー。


「終わったからもう大丈夫だ。行くぞ。」


「ま、待ってよ!」


ボス部屋直後は安全地帯。それは変わらない。


「一度ここで寝てから三階層を攻略するぞ。」


「はっ?!寝るの?!」


「思っているより長くここに居るし、疲れも出て来る頃だ。」


「こんな所に二人で寝れるわけないでしょ!」


「ならエリーは寝なくても良い。好きにしてくれ。」


「はっ?!ちょっと?!」


その場に横になると目を閉じる。

シルビーさんの事を消化しきれたわけではないが、こうして忙しくしていると少しだけ気分が楽だ。考え過ぎなくて良い…というだけの事かもしれないが。


「ほ、本当に寝るの?!」


「…………」


「ねぇ!ちょっと?!」


「…………」


「なによ……」


ゴソゴソと部屋の反対側で音がすると、直ぐに寝息が聞こえてくる。

エリーも随分と疲れていたらしい。俺もそのまま眠りに落ちる。


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



フラフラと落ちてくる白、ユラユラと揺れる赤。

痛む全身にむちを打って体を起こした時、俺の目の前に広がっていたのは、そんな光景だった。


ユラユラと揺れる赤に手を伸ばすけれど、どんどんと離れていき、届くことは無い。


この光景は見たくない……見たくないんだ……


「っ?!」


気が付くと、自分の手が真っ黒な天井に向かって伸びている。


「夢……か……」


伸ばしていた腕を目の上に乗せる。


「……ふぅ……」


一度息を吐き、気持ちを落ち着ける。腕をズラして視界を通しても、ダンジョンの真っ黒な天井は変わらない。


嫌な夢を見てしまった……


「どれくらい寝てたんだ…?」


顔を横に向けると、蹲って眠っているエリーが見える。


「目が覚めちまったな…エリーが起きるまでに準備をしておくか。」


インベントリを開き、必要な物を取り出して床に並べていく。


「……ん……」


小さく言葉を発したエリーが薄く目を開き、俺の顔を見る。まだ頭が覚醒かくせいしていないのか、ボーッと見詰めてくる。誰だろう…とか考えているのだろうか。


「おはよう。」


「…………っ!!!」


飛び上がるように体を起こすエリー。


「な、何見てるのよ!?」


「起床時の挨拶をしただけだろ。それより、飯を食ったらこの先の話をするぞ。」


「わ…分かったわ。」


ポポルで買ったパンにホーンラビットの肉を挟んでエリーに渡してやる。


「あ…ありがと。」


「どういたしまして。」


少しだけ頬を赤くして横を向くエリー。お礼を言われたのはこれが初めてだ。少しは信用してくれたらしい。

食事を終えたところで話を切り出す。


「三階層について話をするぞ。」


「うん。」


「三階層目は、通路に敵がいない。迷路も無い。直線的な一本道があるだけだ。」


「罠が有るとか?」


「それも無い。」


「随分と難易度が下がったわね?」


「通路だけ見ればな。ただ、ここは最下層であり、残るのはダンジョンボスのみだ。最後は小細工無しで…って事かもな。」


「誰が作ったか知らないけれど、趣味の悪い物を作ったわね。」


「…そう言えばダンジョンってのはどうやって出現するって話になっているんだ?」


「魔族が作り出したらしいわ。噂だけどね。そんなことも知らないの?」


「あまり噂に詳しくなくてな。」


「このダンジョンについてはかなり詳しいみたいだけれど?」


「う……」


魔族が作り出したという話を信じるとすると、詳しいのは俺が魔族に近しい存在だから…という事になる。


「別に魔族と繋がりが有るとか考えてないから大丈夫よ。」


「へ?」


「詮索するつもりも無いし。なんで駆け出しのDランクがこんな危険な場所の事を知っているのかは気になるけれどね。」


「あははー…」


なかなか鋭い……


「それで?」


「あ、あぁ。

ダンジョンボスは、ランプグラッジというモンスターだ。」


「ランプグラッジ?マスグラッジじゃなくて?」


マスグラッジは、Bランクのモンスターで、いくつもの霊体が集合して出来たモンスターだ、遠距離タイプのモンスターで、死者の咆哮と魔法をバンバン放ちまくるタチの悪いモンスターだ。

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