第6話 神聖騎士団

ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



五年前。ポポルの街。


「そんな!なんだって神聖騎士団の奴らがこんな場所に?!」


「ルーカス。落ち着け。」


「落ち着けませんよ!カナマ隊長だってあいつらの事は知っているでしょう?!」


「当然だ。」


「俺はまだ入りたての新兵ですが、神聖騎士団の奴らに手を出される事がどんな事かくらい分かります!」


俺はポポルの街に、神聖騎士団と呼ばれる連中が来ている事を知り、カナマ隊長に話をしに来ていた。


カナマ隊長は、当時ポポルの街を守る為に作られた衛兵。その隊長である。

オールバックの金髪に、茶色の瞳。筋肉隆々きんにくりゅうりゅうの体に太い腕。顔に大きな傷がある。剛腕のカナマ。と呼ばれた元Aランク冒険者だ。冒険者を辞めて出身であるこのポポルの街に帰ってきた後、衛兵の隊長としてここに居る。


「ならば追い返すべきでしょう!」


「ダメだ。そんなことをしてしまえば、こんな小さな街など即座にすり潰されてしまう。」


「カナマ隊長!」


「ならん!」


「くっ……」


俺の言葉に全て否で返すカナマ隊長。


言葉に詰まっていると、外からドタドタと足音が近付いてくる。


「カナマ隊長!神聖騎士団の者達が到着します!」


「分かった。」


報告に来た兵士の言葉を聞いて、素直に頷くカナマ隊長。


「………」


「ルーカス。お前はここで少し頭を冷やせ。」


「…………」


衛兵の詰所から出ていくカナマ隊長。何も言えなくなってしまった自分に腹が立つ。


「クソッ!」


机を殴った拳が痛みと熱を帯びる。


神聖騎士団の奴らは、ポポルの街の西側に広がる深緑の森に用があった。正確には深緑の森に住み着くモンスターに…だが。


深緑の森、その中層にはあるモンスターが住み着いている。


緑色の皮膚、人間の子供程度の大きさに、猫背の体躯。髪がなく生ゴミの様な酷い悪臭を身に纏うモンスター。ゴブリン。

Cランクのモンスターだが、多少の知恵が回り、武器も使う。このモンスターはあらゆる者達から嫌われている。

その理由は悪臭ではなく、生殖能力が原因だ。ゴブリンには雌がおらず、ゴブリンは全て雄。ではどうやって数を増やしているか。それはゴブリン以外の人型の女を捕まえ、はらませる。ゴブリンの子を産んでも直ぐにまた次を孕ませ、その女が死ぬまで子を産ませ、死んだら次の女を捕まえてくる。

相手はモンスター。その性質をどうのこうの言った所で何かが変わる訳では無い。だが、そんなモンスターを嫌うのは当然だろう。


そんなゴブリンからの被害が、最近深緑の森付近で多発していた。


当然冒険者や我々衛兵もゴブリン退治には向かったが、数の暴力を前に撤退を余儀なくされた。

そこで登場したのが神聖騎士団。


彼らは世界的に権力を持った宗教組織で、神をあがめる者達だ。

だが、その実状は酷いものだ。


神の裁きだとか、背信者等と言って神聖騎士団に属さない者達を端から端にと殺しまくり、あらゆる悪事を行っている。

口に出せば神聖騎士団が襲いかかってくる為、誰も口に出さないが、クズの集まり。それが世界共通の認識だ。

ただ、やり方を度外視すれば、今回の様にモンスターから被害の多い場所を巡り数で鎮圧ちんあつするという事も行っている。そこだけ見れば間違いなく善行だろう。

やり方を度外視すれば……


ポポルの街に辿り着いた神聖騎士団は、街にふんぞり返り、我が物顔で練り歩く。巻き込まれないように人々は固く扉を閉ざして家からは出てこない。


そんな日が数日過ぎると、やっと神聖騎士団達がゴブリン討伐に動く事になった。そんな日の朝の事だ。

俺達衛兵は神聖騎士団の前に立っていた。

真っ白な、頭から被る信者服に、彼ら神聖騎士団のシンボルマークである鐘と羽が真っ赤な糸で刺繍ししゅうされている。


「我々衛兵もお手伝いします。」


「当然だろう。くくく…」


信者の一人が下卑げびた笑いを漏らす。


「何がおかしい!」


「やめろルーカス!」


「くっ……」


胸糞悪い笑いに突っかかると、カナマ隊長が止めに入る。


「これはこれは…隊長様。」


「アガビル様。」


カナマ隊長が深々と頭を下げたのは、他の奴らと違う銀色の刺繍の入った信者服を着た男。アガビル。

長い黒髪に黒い瞳。ヘビの様な細い目。かんさわる高い声。この神聖騎士団一行の隊長だ。


「お互いに下の者には手を焼かされますな。」


細い目の中を瞳がスーッと動く。


「申し訳ございません。よく言っておきます。」


「お気になさらず。

それより、これからゴブリンの討伐に向かいます。先導を任せても宜しいでしょうか?」


「はい。お任せ下さい。」


「そうですか。良かったです。それでは、よろしく頼みましたよ。」


アガビルが口を開くと、中から長い舌がべロリと出てきて唇を舐める。気色の悪い男だ。


「行くぞ。」


「…はい。」


俺が騒いだせいで先導する羽目になったと言うのに、カナマ隊長は気にするなと背中を叩いてくれる。


その後、隊長が先頭に立ち深緑の森へと向かう。


「全員抜剣しろ!」


「「「「はっ!」」」」


腰から直剣を抜く。太陽の光を反射してギラギラと輝く刃。


「外層のモンスターは適当に蹴散らす。目的はゴブリンの殲滅だ。遅れるなよ!」


隊長が森の中に足を踏み入れる。

外層には居てもスライムやホーンラビットの様なモンスターばかり。新兵とはいえ、それなりに剣を振ってきたし、ここでつまずく程馬鹿ではない。


順調に森の中を進んで行くと、木々の葉が緑から灰色へと変わる。それが中層に到達した目印だ。


「中層だ!気を引き締めろ!」


「はい!」


隊長の背中を追っていく。まだまだ朝だと言うのに、密集した木々のせいで光が遮られ薄暗い。肌に触れる空気はジメジメとしている。


「静かに。」


隊長が姿勢を低くして草むらに身を隠す。俺達も同じ様に身を隠し、隊長の目線の先を見る。

緑色のモンスターが見える。


「ゴブリンだ。」


「やはり多いですね…見えているだけでも三十は居ますよ。」


衛兵だけで言えば二十人程度。街を守る為に五人は置いてきた。つまり今この場にいる衛兵は十五人。


「いましたねぇ。」


アガビルが背後から声を出す。べロリと舌を出してから横に目をやると、神聖騎士団の一人が移動する。


「何をする気だ…?」


少しすると大きな音が聞こえてくる。


ガラガラガラガラ!


「なっ?!」


森の中から布で覆われた荷車がゴブリン達の元に凄い勢いで向かっていく。


バガーン!


荷車はゴブリン達を押し退けて奥の木の幹に当たりバラバラになってしまう。


「ゲギ?!」


「グゲゲッ!」


ゴブリン達は武器を手に持って荷車を警戒している。


「なにをっ?!」


「静かにしなさい。ゴブリンにバレますよ。」


「くっ……」


何が起きたのか分からず、黙ってしまうカナマ隊長。しかし、その後それを後悔することになる。


「いやぁぁぁぁああああああ!!」


突如荷車の方から聞こえてきたのは、空気を割るような女性の叫び声。悲痛な叫び声に視線を戻すと、ゴブリン達に髪の毛を引っ張られて布の下から出てくる女性達。


「止めて…止めてぇぇぇ!」


「グゲゲッゲゲゲッ!」


五人の女性がゴブリン達に取り囲まれ、覆いかぶさられ、涙を流し叫んでいる。手足には枷が取り付けられ、身動きがろくに取れていない。

そしてその五人は、見た事のある顔ばかり。ポポルの街の女性だった。特に目に付いたのは、二人。


「そんな………サリーさん……テリスさん……」


サリーさんは冒険者ギルドに務める受付嬢。プカさんやシルビーさんと仲が良く、三人組としてギルド名物になっている程。

テリスさんは、ダンビさんの奥さん。ダンビさんは昔衛兵をしていて、カナマ隊長の親友だ。

他の三人もよく知っている。どの人も、神聖騎士団が来ても身を隠せない職に就いている女性ばかり。


「隊長ぉ!」


俺がカナマ隊長を呼ぶより早く、カナマ隊長はゴブリン達の元へと走り出していた。


「その汚い手を離せぇぇぇ!!」


「行くぞ!」


カナマ隊長の後に続こうとした時だった。


「まったく。せっかちですね。やりなさい。」


「「「「はっ。」」」」


アガビルが部下に声を掛けると、数人が魔法陣を描く。


「まさか……」


ゴウッ!!


数人の描いた魔法陣から真っ赤な炎が飛び出し、それが女性達に群がるゴブリン達に降り注ぐ。


「グキャァァァ!」


「ゲギィィィ!」


当然、ゴブリン達は炎に焼かれていく。だが、それは女性達が焼かれていくという事と同義だった。


「い゛や゛ぁぁぁぁぁぁ!」


「あ゛つ゛い゛ぃぃぃぃ!!」


炎に喉を焼かれて潰れた声が、助けを求めてくる。

全身が炎に包まれ、それでも手枷足枷で動けない女性達は地面の上を転がり続ける。


「嘘……だろ………」


「あはははははははは!やはりこの手に限りますねぇぇ!」


のたうち回った女性達は、ゆっくりと動く事を止めて黒い炭の塊へと変わっていく。

サリーさんも、テリスさんも、他の女性達も、とても優しい人達だった。

その顔が、苦痛に歪み、憎悪の中にある。


「………」


ガラン……


走り出していた隊長が、その場に大剣を落とし、地面の上に座り、言葉にならない声を発している。


「あ……あぁ……」


「隊長…このクズ共がぁぁぁぁ!!」


直剣を片手にアガビルの元へと走るが、周りに居た部下達に取り押さえられてしまう。


「このっ!このクズ共がぁ!」


「せっかくゴブリンを殲滅して差し上げたのに、酷い言われ様ですねぇ。」


ニヤニヤと笑みを隠そうともしないアガビル。


「殺す!絶対に殺してやる!」


「怖い怖い。」


そう言いながら炎に包まれるゴブリンと女性達を見てニヤリと口角を釣り上げるアガビル。俺はその時の顔を絶対に忘れない。


「殺れ。」


冷たく響いたアガビルの声。


俺を取り押さえていたうちの一人が刃を突き立てんとする。


ブシュッ!


「………かっ……はっ……」


頭上から振ってきた生温い液体が俺の全身に降り掛かる。襟元えりもとをグイッと引かれて後ろへと投げ飛ばされた俺の目に映ったのは、カナマ隊長の背中だった。


「隊長っ!」


「こいつの首は俺が取る!お前達は街に戻って防御を固めろ!」


「俺も隊長と」

「ダメだ!!」


あまり声を荒げない隊長の、強い言葉。


「た、隊長…」


「お前達が死んだら誰が街を守るんだ!」


「……」


「ルーカス…すまんな。お前が正しかった。最初から戦うべきだった。」


一度だけ俺の事を見たカナマ隊長は、神聖騎士団の連中に視線を戻す。


「隊長……」


「行けぇぇぇ!!」


大勢の神聖騎士団が居る中に突撃して行くカナマ隊長。


「隊長ぉ!」


「ルーカス!行くぞ!」


衛兵数人に無理矢理引っ張られて森の外に連れ出される。


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



「それが、俺が見たカナマ隊長の最後の姿だった。」


暫く沈黙が流れた。あまりにも非道な内容の話に、言葉が見つからなかったのだ。


「………その後、神聖騎士団はここに?」


「いや。来なかった。まだ残っていたゴブリンを討伐し、そのまま帰っていった。本来なら殲滅されていてもおかしくはなかったが、本部の方から何か伝令があったらしい。」


「それで柵を?」


「こんなもので止められる様な奴らじゃないが、無いよりはマシだろ。」


「………」


バッカルの悲しげな笑みに、何も言えなくなってしまう。


「サリーさんは、エリースの姉だ。テリスさんとも仲が良くてな。エリースと一緒によく宿に顔を出していた。」


「そうだったのか…それでニーヒスちゃんはエリーさんの事を知っていたのか…」


「皆辛かったが、一番辛かったのはダンビさんだろうな。親友と奥さんを同時に亡くし、その死体は無惨なものだったからな…」


その悲しみは想像を絶するものだっただろう。


「その話をしたがらないのも頷けるな…」


「俺達にとっても悔しい事件だった。だから門番も立てているんだ。」


「エリースはその後冒険者になってな…その事件があるまではよく笑って、よく喋る奴だったんだが…」


「その話から察するに、エリーさんはドジルと共にアガビルに仕返しを?」


「考えているかもしれない。ドジルは何度か他の街にクエストで出た事があるからな。どこかでアガビルの話を聞いていてもおかしくは無い。」


ドジルは人数が足りないとか言っていた。

神聖騎士団と事を構えるつもりなら、この街の冒険者全てを集めても足りないだろう。


「…助かった。その話を聞けて良かったよ。」


「気にするな。それより、エリースが危ない橋を渡ろうとしてるなら俺達にも声を掛けろよ。」


「分かった。」


ルーカスとバッカルと別れ、冒険者ギルドへ向かう。ルーカスの話の中で出てきた内容の中では、サリーさん、プカさん、そしてシルビーさんは仲良し三人組。

サリーさんと仲が良かったのであれば、間違いなくエリーさんとも仲良くやっていたはず。エリーさんの事を聞く相手として、プカさんとシルビーさんは外せないだろう。


「神聖騎士団…か。」


この世界には三つの勢力が存在すると記憶している。

魔王率いる魔王軍。これについては分からないところが多い。聞いた話では、魔族という者達が集まって出来ている軍という事だが…魔族に会ったことは一度も無い。魔族が支配している魔界という地域が存在する…らしいが、その場に行った事も無い。


そして二つ目の勢力が神聖騎士団。

確か……アイシュルバールとかいう女神を信仰している連中だったはず。どんな女神かは覚えていない。

ファンデルジュとしてプレイしていた時は、今回の様な横暴な連中という話は聞かなかった。興味が無かったから知らないだけかもしれないが……

一度神聖騎士団のイベントが発生して、受けた事があった。その時にいくらか情報が書いてあった。確か刺繍の色で位が決まっていたはずだ。赤色が一番下で、銀、金、そして黒と位が上がっていく。

黒い刺繍を許されているのは数人しかいなかったはず。


そして最後の勢力は、その他。

魔族にも神聖騎士団にも属さない、ここポポルの街にいるような者達だ。冒険者も基本は、その他に属している。神聖騎士団や魔族がその他の勢力を取り込めないのは、この冒険者の存在が大きい。


この三勢力が世界の均衡を絶妙なバランスで保っている。神聖騎士団は、神を信仰している為、魔族とは相容れず、その他の勢力は基本的に傍観ぼうかんしている。といった感じだ。


「神聖騎士団もその他の勢力には手を出していなかったはずだが…話ではかなり好き勝手やってるみたいだし、その辺もゲームの時とは違うのか…?」


「何を一人でブツブツ言っているの?」


「………どこ、ここ?」


「ここは冒険者ギルドですよ。」


「あ、プカさんにシルビーさん。こんにちは。」


「はい。こんにちは。」

「こんにちはー。」


挨拶後数秒、沈黙の時が流れる。


「………えっ?!いつの間にギルドにっ?!」


「フラフラーっと来てずっとブツブツ言ってるからびっくりしたよ。」


「わ……ワープした…」


「いや。普通に入ってきたよ。歩いて。」


「っ?!」


寝てないのに……夢遊病…?


「そんな事より、はい。」


カウンターに出される金。


「なんだ?」


「クエストの報酬。ホーンラビットの肉と毛皮を納品したでしょ?」


「あー!」


「あー!って…忘れてたの?」


「ワスレテナイヨー。」


「その顔と声で嘘だと直ぐに分かるね。」


「いや、ちょっと別の事を色々と考えててさ。

それについて二人に聞きたいことがあったんだ。仕事が終わったら少し話を聞かせて貰えないかな?」


「私達に?」


「夕食ご馳走するから、頼めないかな?」


「良いの?!行く行く!」


「シルビー。あまり好ましいとは言えませんよ?」


「大丈夫大丈夫!たんまり報酬を貰えるみたいだしね!」


「たんまり…?」


プカさん。そこで心を揺らさないで…


「ホーンラビット討伐クエストの報酬は、十万ダイスだよ。」


「じゅっ?!」


「それって…凄い事だよな?」


「普通なら三匹分の肉と毛皮で一万ダイスくらいかな。」


「ちなみに…何故そんな事になったのか聞いても?」


「血抜き等の後処理が素晴らしくて、肉の品質が高い状態だったんだって。直ぐに高値で買い手が見つかったらしいよ。

ただ、この金額になった理由は、毛皮の方。高く売れたみたい。傷も無く状態は最高級の品質。相当良い値で売れたらしいよ。」


「……解体って大切なんだな。」


これからも丁寧に解体しよう。


「それだけあれば美味しい物が食べられるねー!」


「…実は俺が作ろうかと思ってたんだけど…食べに行った方が良さそうだな。」


「シンヤ君が?」


この世界の食事事情は、あまり良いとは言えない。大きな街に行けばそれなりの物が食べられるが、かなり値が張る上にそんなに美味しくない。理由は調味料が高いから。塩だけでも、えっ?!ってなるくらい高い。ゲーム内でも同じだったけれど、キャラクターが食べる物なんて空腹度が回復すれば良いので味なんて気にしていなかった。

こんな田舎の街ではそんな高価な物は売れないし、薄味だったり、パンや芋が主食になっている。

だからこそ門番の二人があれだけ食い付いたのだ。


「食べたい!シンヤ君の手料理!プカは来なくても良いよ?」


「私も行きます!是非!」


「ちっ。」


「ちっ。ってなによ、ちっ。って!」


「えーっと…それじゃあ仕事が終わったら香ばし亭に来て貰えるかな?」


「行く行くー!」


「お邪魔させていただきます。」


二人の約束を取り付けて、工房に向かう。ホーンラビットの肉を調理した時もここを使ったが、工房には調理場もある。


「よし。サクッと作るか!」


インベントリの魔法陣を描くと、一覧が表示される。


「下手な肉を使うと疑われるし、ホーンラビットの肉だな。結構あっさりした味だから、濃いめの味付けが必要か。

となると…煮込み料理はこの前食べたし…

お、パスタの麺があるな。後は…トマトか。ホーンラビットのトマトパスタで決まりだな。」


パスタの麺やトマトなどは、高くない物だしこの街にも売っている。パスタは全て生麺だが、インベントリがあれば生麺だろうが関係ない。インベントリ様様だ。


「ふふふ…ここに来て独身の料理スキルが役に立つとはな………悲しい…ぐすん。

こうなったら最高のパスタを作ってやる!うおぉぉぉぉ!」


ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー



コンコン…


「プカとシルビーです。」


「どうぞ!」


ガチャ…


香ばし亭の宿部屋で待っていると、二人が入ってくる。

二人とも私服姿で、美人さんだから、眼福ここに極まれり。


「来たけど……料理ってどこでやるの?」


「もう作っておいたよ!とりあえず、座って座って。」


二人を中に案内する。


ニーヒスちゃんに頼んで三人で食べられるテーブルと椅子は用意してある。


「座るのは良いけど…」


二人は頭の上に?マークを浮かべながら椅子に座る。


「じゃあ出すね。」


インベントリの魔法陣を描き、調理して直ぐに入れておいたパスタを二人の目の前に置く。


「えっ?!どこから?!」


「そう言えば、渡人の人達はインベントリという魔法が使えるのでしたね。」


「あー!忘れてた!」


「渡人しか使えない魔法らしいし、結構有用な魔法だから外では極力使わないようにしてるんだ。」

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