第2話

 放課後 桜の下


「ここだよ…ね?」

 美咲が先に桜の下について、腕時計を見ながら葵を待っていた。


「悪い悪い!」

「やっと来た。待っててって言ったの、葵なのに」

 1時間遅れで着いた葵を見て微笑みながら話していた。


「仕方ないだろ、委員会と部活が立て続けにあったから」

「あー、生徒会とバスケ部だっけ?期待されてるんだねえ。」

「まあな…」と葵が言えば、「ほら、タオル」と美咲にタオルを出してもらい汗を拭く葵。


「で、話って?」

 汗を拭きながら、美咲を見る葵。


「それは葵の方が終わってからでいいよ。聞いて欲しいから」


(…たち。貴方達…)


「なぁ、なにか聞こえた?」

「え?何が?怖いよ、ねぇ?」

 葵の問いかけに少し怖がって苦笑いを浮かべながら話しかける美咲。

「なぁ、あそこ光ってね?」

 そこには小さくて白い羽の生えた女の子がいました。

「貴方が呼んでいたの?」

 葵の指差す方向を見て駆け寄る美咲。

「私は、ボヌール。フランス語で幸せ。という意味です。」

「ボヌールかあ、可愛い名前だね」

 嬉しそうにボヌールに微笑む美咲。

「私は、貴方達に、幸せになって欲しくて…」

「私達に…?」

 不思議そうに顔を見合わせる、葵と美咲。

「だって、美咲この桜の噂を知っていたから、待ち合わせをして告白…しようとしていたんだよね?」

「そ…れは」

 美咲は思わず真っ赤になる。

「だからその願いを叶えてあげようと思って私は桜から出てきたんだよ」

「あ…ありがとう」

 恥ずかしそうに頬を染める美咲と葵。

「じゃあ、この粉を被って?」

 ボヌールはふたりの周りを飛び回り、粉をかけました。

「あ、あのね…葵。」

「あ、ああ…」

 二人は向き直り、美咲が先に声をかけた。

「私、葵が好きなの。それでね?この桜、言い伝えがあるでしょう?「この桜の木の前で待ち合わせをして告白したら幸せになれる」って」

「だからやってみた…って?」

「そう、そうなの。でも好きな気持ちは変わらない。子供の頃からだったから」

「そっか。俺も好きだったから嬉しいよ。サンキュな」

「え、じゃあ…」

「ああ、返事か"OK"だ」

ホッと胸をなで下ろす美咲。

「よかったね、美咲」

「うん、ありがとう。ボヌーレ」

「私、これからもふたりの幸せ見守ってる。いつでもこの桜の木の元に来て?待っているから」

「わかった」

そう返事をし、葵と美咲は桜の木を後にして、帰っていった。






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桜の下で... Eri @eri04234

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