第148話 聞き取れない言語

「アテンション・ハウス!」


 エルスがそう唱えると半径役20メートル程の赤いバリアのようなものが広がった。

 だが今までのスキルを考えれば疑惑はでる。

 

「……なあ、本当にモンスターが入ってこれないのか?」


「ワタルさんこの私を疑ってるんですか!?」


「いや…今までのスキル考えたら追加効果で小型モンスターは入ってくるみたいな馬鹿げた事があってもおかしくないなと思ってだな……」


「スキルがデメリットになるなら本末転倒じゃないですか!」


 どの口が言ってんだ。


「ふむ、何事もやってみれば分かることさ」


「入ってきたら追い出すの!」


 どうやらハクヤもイブと協力的。何の話か理解出来ていない御者の男性と白馬には申し訳ないが今は見守ることにする。

 そして直後、


「早速お出ましのようだね」


 いち早く察したハクヤが笑みを浮かべる。

 その視線の先には弓矢、槍を持ったゴブリンが数匹。聞き取れない言語を話しながらこちらへ向かって来ている。


「……入って来たら頼むぞ」


「ふっ、ビンタで撃退するさ」


 舐めプ勇者をビンタで正気を取り戻させた直後、一匹のゴブリンが弓を引く動作を見せた。


「……これ、結界が機能してなかったらやばくないか?」


「機能するのでやばくないです」


 まあ、エルスがここまで言うんだ。仲間を信じてみようじゃないか。


 そして矢は放たれる。……が、


 ガキンッ!!


 目の前で矢は弾かれた。それだけでなく、走ってこちらへ突撃してきたゴブリンまでもがその結界内に入れず武器を打ち付けるばかりだ。

 更にはその後ろから。


「あ、オークも来ました!人を攫うこともある非常に不愉快で汚らしいモンスターです」


 口の悪い紹介と共にオークが現れるもデカい棍棒を振るうばかりで結界内に入ってくることは出来ない。


「……確かに凄えな」


「そうですよね!どうですか?私にお礼の一言でも言うべきじゃないですか!」


「……確かにそこは―――」


「おや、何やらコボルトも来たようさ」


「あっちからはおっきい歯の生えたゴリラが走って来てるの」


「冒険者の方々!上から鋼の鳥型モンスターが!」


 既に感じ始めた違和感。不穏な空気。


「なあ、エルス――」


「……何ですか?」


「流石にモンスターが集まり過ぎだろ」


「……偶然です」


「ワタル、更に後方からレモン汁型モンスターの襲来さ」


「お箸みたいなモンスターも来たの」


 何だかちょいちょい気になるモンスターもいるが流石に襲撃が多すぎる。


「……おい、今なら怒らないから話してみろ」


「絶対ですか?」


「絶対だ」


「――です」


「ん?」


「―――ちょ、ちょっとフェロモンだしてるだけです!」


「いい加減にしろおおおおおおおおお!!!!!」


「絶対に怒らないって言ったじゃないですかあああああああ!!!!!」





✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★



 モンスターがガンガンと結界を攻撃する中、結界内では俺によるエルスの尋問が始まっていた。


「全部話せ」


「うぅ…今話すなら怒らないし逆に胴上げして褒めてくれるって言ってたのに酷いじゃないですか…」


 そんなキチガイいてたまるかよ。


「で、効果は何なんだ?」


「はい…一応結界としての効果は高いです」

 

 そこは心配ないか。不幸中の幸いだ。


「それでフェロモンって?」


「この結界スキルを使用すると辺りにモンスターを刺激するフェロモンを出すんです。それに刺激されたモンスターが結界を目指して集まってくるってだけで………」


「結界は持つのか?」


「私の魔力依存ですし、その辺のモンスター程度なら壊れないかと」


「……うーん、それならまあ…」


「欠点で言えばモンスターが集まるので『うるさくて眠れない』『結界を解除したときに面倒くさい』くらいですかね」


 集まったモンスターは魔法では一網打尽に出来るだろうが睡眠阻害は面倒なところだな。


「ちなみに耳栓は一つだけあります」


 もはや恒例爆弾発言。


 御者の男性、ハクヤ、イブ、俺の目がエルスの指の先へ持っていかれる。


 さて、俺が頂くとしよう。

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