第147話 監督責任

 エルスは初めから順序通りに話しだした。


「まず私達が火の担当をしたいってワタルさんの近くで揉めてたじゃないですか?」


「そう…だな。それで確かお前らを遠ざけるように注意したはずだ」


「それでですね…。あの後、小屋の方で誰が火の担当になるかじゃんけんをしよう!って話になったんですよ」


 そもそも火を使わないという答えを導き出して欲しかった。とは言え、実力行使ではなくじゃんけんで決めようとしたのは偉いな。


「それで?じゃんけんで小屋は燃えないだろ」


「そのはずなんですけどね…。まず私がパーの手でハクヤさんの喉元を刈ろうとしたんですよ」


 もうじゃんけんどっかいったが。


「しかし避けられてしまいまして…、ハクヤさんのカウンターによるチョキでライターを取られてしまったんです!」


 バカバカしくて聞く気にもならないが燃えた原因を探るためだ。今は耐えるしかない。


「そしてそのハクヤさんの隙を逃さずイブちゃんがスキルで狙撃。しかしそれも避けたハクヤさんがライターをカチカチして煽りまして……。そこからはイブちゃんとハクヤさんでいろいろ……」


「気付けば小屋は無くなっていたよ」


「気付いたら小屋は消えてたの」


 ……エルスに一票も入らなかった原因はこれか。


「それならエルスはどっちのスキルか攻撃で小屋が燃えたか見てたんじゃないか?」


「気付けば燃えてました」


 無能変態シスターだったか。


 とまあ…話を聞くにエルスが直接燃やしたわけではないのは確実。概ねハクヤとイブが戦っているうちに燃えたのだろう。


「はあ、これじゃあ埒が明かないな。そもそも燃やした関係なく小屋付近で戦っていたことも問題だし二人連れて謝りに行くべきか……」


「謝りに行くべきって何処へです?」


「そりゃ、小屋の管理者さんのとこ……」


「何処だか分かります?」


「……御者の人に聞くか。この時間ならまだ起きてるだろ」


 何故俺がこんな思いをしているのかは分からないが監督責任と言えば監督責任だ。

 俺は未だにギスギスしているイブとハクヤ、自分が無実といなやニコニコしているエルスを連れ御者さんの元へ行く。


「……あれっ?でも確かあの人ってモンスターが来ないよう結界内にいるみたいなこと言ってなかったか?」


「確かに…それなら今どこに……?」


 ここで俺は冷や汗が止まらなくなる。


「おい!手分けして探すぞ!」


「了解したよ。僕とワタルとエルスはこっち、イブはあっちだね」


 アンバランスかよ。


 こうして俺達は別れて探し出した。




✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★


 

 結果としてはすぐに見つかった。

 どうやら小屋が燃えた時点で危険を察知し、馬と共に近くの大木へ避難していたらしい。


「はあ…心臓に悪かった……」


「こちらのセリフなんですけどもね」


 本当にすみませんでした。


 この後、ハクヤとイブに頭を下げさせ謝罪。管理元はギルドだと教えてもらった。またかよ。


 だが本当の危機はこれからだ。


「……なあ、俺達何処で寝る?」


「普通に寝袋ですかね……」


「結界は?」


「今までも大丈夫だったじゃないですか!」


「今まではモンスターが近くにいないか確認してただろ?ここは結構湧くぞ…」


「ワタルさんは心配症ですねぇ…。ならここは私が人肌脱ぎましょう!結界スキルとやら、お見せします!」


 もはや何となく察するものがあるが、結界が無いよりはマシなことを願って了承する。


「アテンション・ハウス!」


 さて、効果を確かめる時間だ。

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