第146話 誰でも燃やす可能性
どうしてだろうか。俺は今、仲間を担いで逃げる仲間を追い掛けている。
「ちょ、おいっ!お前ら止まれ!」
「怒らないなら止まります!」
「分かったから!話を聞いてからな!」
ひとまず説得して動きを止めようとするも、
「話を聞いてから制裁を加えるつもりさ。今は逃げるが吉だよ」
「了解しました!ハイリスクアップ!」
「感謝するよ。ふっ、捕まりたまえ。ステルス…」
何故かばっちりなチームワークを経てハクヤとエルス、そして捕まっているイブの姿が消える。
確かステルスは姿を消すスキル。更に使用者に触れたものにも効果がある……だったな。
既に二人の気配は消え俺は二人がどこへ逃げたか検討もつかない。だが…
「……そろそろじゃないか?」
ドスンッッ!!! 「「ぎゃっ!」」
想像通りの音が聞こえてきた。その方向へ少しずつ近付いていくとその惨状はすぐに目に入る。
「……どうして俺はこんな奴らと…」
うつ伏せで手を伸ばしビクビクとしているハクヤに股をおっぴろげて白目を向いているエルス。
そしてそんな二人をポカンと見ているイブ。
そりゃ目を瞑って強化されたスピードで走ればこうなるに決まっている。
「イブ…手伝ってくれるか?」
「なの」
俺とイブはハクヤとエルスを引っ張って帰っていくのだった。
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「小屋が無い」
「下の方はあるの」
それはもはや無い。
引き返し小屋を探して数分、事の発端は明らかとなった。そう、小屋が消えている。
いや、正確に言えば小屋が燃え、焼け残ったあとがあると言うべきかもしれない。
そんな中、エルスとハクヤが目を覚ます。
「……言い訳ってしてもいいですか?」
「ちょっとだけなら」
「ハクヤさんがやりました」
なるほど。
「一つのいいかい?」
「一つな」
「イブがやったよ」
ふむ。
「ハクヤが燃やしたの」
この流れで何でハクヤに2票入ってんだよ。
多数決であればほぼほぼハクヤで決まりなのだがこの3人だ。誰でも燃やす可能性はある。
もう少し慎重に考えるべきだろう。
「そもそも火属性の魔法はハクヤさんしか使えません!」
これハクヤで決まりだろ。
「待ちたまえ。その考えは早計と言える」
「反論があったりするか?」
「当たり前さ。よく考えてみたまえ、何も小屋を燃やす手段が火属性魔法だけということはない。イブのスキルならば爆発を起こして燃すことも可能だとは思わないかい?」
……確かに言いたいことは分かるな。
「そんな爆発したらおにーちゃんが気付くの」
これ犯人ハクヤで間違いないだろ。
もはや殆ど断定出来てしまっている気がするがやけに認めないハクヤ。そこで俺は3人に実際その時に何があったのかを尋ねる。
「起きたことを順序立てて説明してくれ」
初めに話し始めたのはエルス。
「えっと…確かワタルさんがフルーツサンドを作り始めて私も火でお手伝いしようと―――あ」
早速墓穴を掘ったエルス。ライターがあることを俺に思い出させてしまい容疑者候補へ舞い戻る。
そして始まる3人の物語。
それはそれは恐ろしい話だった。
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