第145話 モンスターと動物
ドサッ――、ハクヤが不敵な笑みを浮かべアイテムボックスから荷物を出す。
「ふむ、まずは――」
『キャインキャイン!!!』
はい、ストップ。
「………おい」
「すまないね。仕留め損なっていたようだ」
ハクヤは動き回るウサギのような生き物の耳を掴むと持ち上げて褒めろと言わんばかりに俺達へと見せつけてくる。
本来ならば手を叩いてハクヤを称賛するはずだったのだが、
「…イブ」
「ムーンスラッシュ、なの」
俺の横にいたイブの鋭い一閃がウサギモドキへとヒット。真っ二つになるわけでもなくそのウサギモドキの身体は光の粒子へと姿を変える。
「やっぱり……ハクヤお前、モンスターと動物を考えずに適当に取ってきたろ?」
「……半分……ともう半分だけさ」
全部だよそれは。
「えっと…、今のはガビロイウサギヌスってモンスターですね!ウサギに似てはいますがれっきとしたモンスターです!」
モンスターと動物の違いは魔力を持っているかどうかだ。世の中には魔力を感じ取り、モンスターと動物を完璧に判断出来る者もいるらしいが素人の俺達では瞬時に判断できるわけがない。
「ま、仕方ないか。他には?」
「この蛇を見たまえ」
「ジャイロスネークですね!口から岩を吐き出して攻撃するモンスターです!」
蛇ならまあ見間違えることもあるか。
「仕方ない、次」
「この奇妙な生物を見たまえ」
「アルカンセントリアヌペヌペですね!協力な毒を持ち見た目が奇妙なことで有名です!」
「通りで手が痺れると思ったよ」
モンスター狩りお疲れさまでした。
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そんなこんなで食材は揃った。俺は調理セットを持つと少し離れた場所にある高さの丁度良い岩へと設置。全ての食材を並べ袖をめくる。
「その…結局タンパク質が見当たらないんですけど一体何を作るんですか?」
「そればっかりはどうしようもないからな。今日はフルーツサンドで我慢してくれ」
「しません」
「妥協は良くないね」
「お肉食べるの」
このパーティーに優しさは無いと見た。
ならば肉を取って来いと言いたいところだがもう夕方と言える時間ではない。辺りが暗い中モンスターと戦うわけにもいかないので我慢してもらう。
「……ったく、暇なら手伝ってくれよ」
「私、火付けましょうか?」
かつてフルーツサンドを作る工程で火を使うことがあっただろうか。
「待ちたまえ。火なら僕の出番さ」
「火ならイブが適任だと思うの!」
大人気かよ。あっちでやってきなさい。
3人が言い争っているうちに俺はパンを薄く切っていく。それが済めば次は果物の準備。
一人で黙々と作っているときが最も順調に進んでいるのが非常に悲しい次第である。
バナナに類似したハナナの皮を向き、こちらも薄くカット、薄く切ったパンに木苺を乗せ…ミカンの缶詰を開けて均等に乗せていく。栗はこのまま食べるには難しいか。
そして最後にパンを重ねて見事完成。
「……こんなもんか。結構時間掛かるし、やっぱ集中すると疲れるもんだな。ちょっと身体も暑くなって――」
「おや?完成したのかい?」
横から顔をのぞかせたのはハクヤ。若干顔が苦笑い気味だがまあ大したことはない。
「まあな、エルスとイブは?」
「わ、私ならここにいますよ!」
そう慌てて会話に入ってくるエルス。そしてこちらも若干苦笑気味。妙ではあるがエルス達が妙なのはいつものことだ。
「お腹空いたの!」
エルスの側にいたイブも発見。打って変わってイブは機嫌の良さそうな様子。
これまた妙だ。
「……エルス、何かあったか?」
「……いえ、何も」
「なら聞き方を変える。良い事があったか?」
「と、特には…」
「……なるほどな」
何かあったっぽいが現状俺に何の害はない。エルス達に好きにさせておくのもありだな。余計な事に首を突っ込むのも良くない。
「ま、なら精々気を付けてくれよ?この後は小屋で寝るやつを決めるんだから」
「ほぼ決まっているようなものさ」
「まあ、決まってますよね…」
「小屋なんてもう無いの!」
各自、自信満々だな。俺もどうにか実力勝負にならないように策を――――
そこで俺の思考は停止した。
「……イブ、今何て――」
次の瞬間、俺の目に映ったのはイブを抱えて逃走するハクヤとエルスだった。
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