第144話 手順通りに
後にバトルロイヤルが待ち構える中、俺達は夕食の準備に取り掛かっていた。
「いや〜、運が良いですね!こんな料理セットを貸して頂けるなんて!」
「そうだな、簡易セットとは言え魔力で火は尽くしライターいらずで助かった」
「包丁を貸したまえ。僕の調理技術をヌタヌタと見せるときが来たようだね」
「美味しいものは全部混ぜれば良いと思うの!」
若干不安のある面子ではあるが料理とは手順通りにしっかりとやれば基本的に食べることのできる食事が完成する。
余計なことをさせないことがポイントだ。
「よし、早速調理に取り掛かっ――」
ここで俺達は現状に気付いた。目の前には御者の男性が長旅になるので良いものを食べなと快く貸してくれた料理セットのみ。
「………食材を」
「虫とかでいいかい?」
よくない。
「その辺の葉っぱとか集めます?」
集めません。
「毒体制はあるの」
俺には無いです。
全滅。料理セットを用意したとこで食材が無ければ作ろうとも作れない。現在俺達の手持ちにある食料は保存のきくパンと最近勇者が発明したことで話題になったみかんの缶詰。
両方エルクラウンで買ったものだ。
「……刑務所ですか?」
「刑務所でももっと良いもん出るだろ」
「ふむ、しかしこれならば料理自体は出来るのではないかい?」
「本当か?」
「ああ、先程うさぎが跳ねているのを見つけたよ。動物がいるのならば現地調達ができるさ」
「サバイバルみたいで格好いいですね!」
中々乗り気なエルス。たしかに大抵のものはパンに挟めば料理みたいなもんだし……。
「……そうだな。よし!各自調理に使えそうな動物、果実などを集めてこい!」
我がパーティーの散策が始まった。
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一時間が経過――
「これより、各自集めたものを出してもらう。取り敢えずまずは俺とイブが集めたものからだな」
そう言って俺は大きな葉に乗せたそれらのものを切り株へと置いた。
今回、俺はイブと共に近くの木が生い茂る方へ様々な食料を探しに行った。途中、イブがよくわからないキノコを蹴飛ばし近くのキノコ型モンスターに追いかけられるなど大変な事はあったが最終的には上出来。見たことのある食材だけを集めたこれらには何の問題も無い。
端から木苺、恐らくクリ、そして、
「これは…バナナ………に似たハナナですかね」
問題が発生した。
「……待ってくれ。これはバナナだよな?」
「黄色で長いの!」
「いえいえ、よく見てくださいね!この皮を剥くと……」
『やめてええええええええええええええええ』
『痛い痛い痛い痛い』
「この様に喋ります。子孫を残すための食材なりの知恵ですね!私も聖女修行の日々に疲れたときはこうして弄んでましたね」
後半さえなければ普通の知識人だったな。
余計な情報と共にまた知識が一つ増えたところで俺達の手持ちは終了。幸いハナナの中身はバナナと大差無いらしく食材には追加出来そうだ。
「よし、次はエルス、見せてくれ」
「はい!ご覧ください!」
エルスが袋を広げ切り株へと乗せる。
中からでてきたのは俺達と同じく木苺、そしてこれは恐らく――。
「芋か」
「御名答です!先程人でも埋まってないかな〜っと穴を掘っていたところ見つけました!」
見つかったのが芋で本当に良かった次第である。
そして、最期の順番が回ってくるのは、
「動物狩猟犯リーダー、僕を崇めると良いよ」
そんな気の良い発言をするハクヤ。するとハクヤは同時にアイテムボックスに手を入れ何かを取り出す。
夕食がまともに出来上がるのか、審判の時だ。
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