第140話 幼女以下の
和気藹々と魔王城1階の地図を見ながら談笑する声を聞き、何かが引っ掛かった。
『そこはトイレなの。横がキラキラ部屋なの』。一見何気ない会話の一文に聞こえるがふと冷静になって頭を働かせる。
「……イブ、今断言したか?」
「いちじのきのまよいなの」
無理がある。
……とはいえまだイブも幼女。言葉の使い方がおかしくなる事だって多々あるはず。無理に触れる必要も無いし静観が正解かもしれないな。
「まあ、ならいいが」
「ワタル、それより聞いてくれたまえ。魔王城の地図が見つかったということは僕の覚醒の日も近いというわけじゃなかろうか?」
幼女以下の言語能力者もいるな。
その後は特に目新しい発見も無く俺達はアリアス様に別れを告げ各自部屋へと戻った。
部屋へと戻る途中、アリアス様にもしかしたら今後地図の事でエルクラウンのお偉いさんに呼ばれるかもと言われたがもちろん出席する予定は無い。
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「ハルカイナ公国……私一度も訪れたことがないので行きたかったんですよねー!」
「勇者の作った光の壁。僕の力に耐えきれず崩壊してしまわないかが心配だね」
この厄災どうにか置いて行けねえかな。
現在俺達が集まっているのは俺とイブが泊まっている部屋。明日、ハルカイナ公国へ旅立つための事前準備と言うわけだ。
「ふむ、エルクラウンからハルカイナ公国までは大した距離ないようだね」
「お、なら都合の良いな。どのくらいだ?」
「山5つってところさ」
お前だけ歩いてろ馬鹿。
「エルクラウンからは馬車も出ますしゆっくりで良いんじゃないですかね?今ならお金に物を言わせてランクの高い冒険者を護衛に付けることも出来ますし」
「護衛なあ…。護衛を雇うのは良くない思い出しか無いからあまりしたくないんだが」
「良くない思い出ですか……、私達と出会う前何かあったんですか?」
お前らだよ。
計画段階から前途多難だが目的が決まっているのはありがたいところ。以前までの様に時間が無いということでもない。
この際に詳しく決めておくのも大切だ。
「……ま、馬車には賛成だな。時間はかかると思うが一番無難ってとこか」
「距離的には3日ほどですね!」
「ん、本当にいくの?」
これまた珍しく乗り気でないイブ。前回ハルカイナ公国の話をしたときも少し不安そうにしていたしやはり何かあるのだろうか。
「ああ、言っただろ?イブに何かあったら俺が守ってやるから任せとけって」
「実際はワタルさんが守られる側なんですけどね」
無念。
不安そうなイブを膝に乗せ俺は少し笑みを浮かべる。いくら戦闘の才能があろうがイブはまだ子供。
魔王城近くの国へ行くなど本来は怖いはずなのだ。
「悪い人が来たらおにーちゃんが怒るの?」
「……まあ。そうだな、イブが嫌だってんなら俺が一喝入れてもいいけど」
ここまで弱気なイブは初めてだ。
若干の違和感を感じるも夕食の時間が来たため会議はお開き。エルスとハクヤは自身の部屋へと戻っていく。
その後はイブを風呂に入れ、ベッドへ寝かし付け一日の終了。明日へと体力を残すために早めの睡眠に入る。
その夜、俺は謎のモヤモヤを胸に眠るのだった。
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