第37話 元から汚れてるだろワン
「さて、俺達はそろそろ行くとするよ」
時刻は朝。フェレビアと死闘を繰り広げた翌日の朝である。
魔力を吸われ動けなくなっていたクリスタルワイバーンにもハクヤがとどめを刺し、森から魔力を吸い上げていた機械も無事破壊。
全てを終えた俺達はこの森を抜け、目的地であるドワンウルゴへと出発しようとしていた。
「そ、そのぉ…少し…寂しくなりますね」
「そうだな……もしまたこの森を通る機会があったらその時はよろしく頼むな?」
「バイバイなの!」
これからクラリスは吸われた森の魔力を長年かけて元に戻していくらしい。何年かかるかは分からないが元の精霊がたくさん住む穏やかな森へ戻る事を心の中で願っておく。
「さらばだ…。勇者は振り向かない」
「よし分かった、二度とこっち向くなよ?」
「……勇者ジョークさ」
つまんな。
「相変わらずですね……。ワタルさんもハクヤさんも最後ぐらいしっかりとしてくださいよ!」
エルスはクラリスと長い握手を交わすと荷物を持ち上げハクヤの背中を押して俺から遠ざける。
いや、子供じゃないんだから遠ざけたら解決ってのは違うような……。
そんな俺達を見てクラリスは耐え切れなかったのか声を上げて笑う。
「ふふっ…!次に皆さんがここを通る際にはまた賑やかな森を見せられるように頑張りますね!」
「ああ、楽しみにしてるよ」
最後の最後に今までで一番のクラリスの笑顔を見た気がするな。なんだかこっちまで笑顔になりそうだ。
その笑顔を見届けた俺は回れ右をし、歩き始めようとする。だが――
「あ、最後に少し……いいですか?」
「ん?」
クラリスに呼び止められる。
「ブレッシング・スピリット!」
「おわッ!?」
急な眩い光が俺の身体を包み込む。バフを付与する魔法では無いようだが……。
「今のは……?」
ゆっくりと目を開く。
「わ、私の加護です!効果は……ひ、秘密にしておきます……。いつか役に立つ事があるかもしれないので楽しみにしていてくださると嬉しいです」
加護とはこれまた珍しいな。確か上位の存在が気に入った相手に力の一部を分け与える事を言うらしいが生で見た――いや、体験したのは初めてだ。
「よく分からないがありがとな?ありがたく受け取って置くよ」
取り敢えずお礼は大事。
途中、何故か「加護を渡すなら勇者である僕が相応しい」と加護をせがみにくる不届き者もいたがイブに制裁され動かなくなった。
「本当にありがとうございましたぁ!」
そのまま手を振るクラリスが見えなくなるまで俺達は新たに貰った地図を元にドワンウルゴへと旅立つのだった。
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とある城のとある一つの大部屋。
その中ではある会議が行われていた。
「それは本当かッ!?」
偉そうに座るガタイの良い男が驚きの声を上げて目の前のコボルトに問う。
「ホントだワン!あのクソ上司――じゃなくてフェレビア様はヒューマンの冒険者に討伐されたワン」
コボルトがその発言をした瞬間、ザワザワと空気が揺れ、どこか張り詰めた雰囲気がその場を覆う―――。
「まさか、フェレビア様が……」
「ほんとにヒューマンがやったのか?」
「寿命だろ。あ、元から死んでたわ」
ちらほらそんな声が飛び交うが中には全く動じない者もいた。
「魔王様、早めに処理するのが懸命ワン」
「まあ、待て。だが相手はヒューマンなのだろう?そこまで心配する必要は無い」
魔王様と呼ばれたその男は落ち着きを取り戻し目の前のテーブルにある紅茶に手を掛ける。
その様子を見て安心したのか魔王の前に座る9体のモンスターが喋りだす。
「ふっ…だが所詮奴は我ら魔王幹部の中でも最弱……」
「序列1位だったワン」
「あの脳筋野郎ではやはり駄目だったか」
「いつも計画を魔王軍の考えてたのはフェレビア様ワン」
「ヒューマン如きにやられるとは……我らの面汚しよ」
「元から汚れてるだろワン」
続々と魔法の数々が降り注ぐがそれを悠々と避けるコボルト。そして、その時が来たと言わんばかりに新たな爆弾を投下する。
「それでですね……実は…見つけたワン」
コボルトはある写真を取り出し、魔王へと渡す。
「これは……!」
その写真に映るのは高そうな杖を振り回す青髪の少女だった。
――――――――――――――――――――
〈基本となる五つの属性魔法〉
・火属性魔法
初級……ファイヤーボール
中級……ヒートボム
上級……ネオフレア・エクスブラスト
・水属性魔法
初級……ウォーターショット
中級……アクアランス
上級……ネオアクア・ハイドロスラッシュ
・風属性魔法
初級……ウィンドアロー
中級……フェザーカッター
上級……ネオウィンド・トルネードバースト
・雷属性魔法
初級……サンダー
中級……スパークバインド
上級…ネオライト・フォトンプラズマ
・土属性魔法
初級……アースウォール
中級……ストーンバレット
上級……ネオアース・ガイアキャノン
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