ペイン

エマンセ

ペイン

あぁ...今日も頭が痛い、ひどく痛い


偏頭痛持ちだからと思っていたけど、最近は特にひどい。人の声が頭に響く。学校の行き帰りや、野球が大好きで入った部活もできない。今も、教室で喋りまくる同級生達の声が頭に響いて割れそうだ...


放課後、誰もいない教室で、頭の痛みのせいで動けず机に伏せている僕を心配し、声をかけてくれる同級生の女の子


「大丈夫?」


「うん...大丈夫だよ。薬を飲んだら少し落ち着くから」


嘘だ。最近の頭痛は、痛み止めの薬じゃ痛みは抑えられない


「本当に大丈夫?先生呼ぼうか?」


「いいから!心配ならほっといてくれ!」 


怒鳴ってしまった。心配してくれるのはありがたいがそれより黙っていて欲しい。頭が...痛いんだ


「ごめん...もう行くね」


そう言うと、教室を出て行く。その姿を見ていると理不尽に腹が立ってくる


あの子は僕の痛みを知らずに、僕以外が幸せな、痛みのない世界に帰るんだ。心配したフリをして、痛みを分かったフリをして...


______


そこからの記憶は曖昧で、気がつくと、頭から血を流し倒れている彼女。それを見下ろし、血のべったりとついたバット


「...、痛い...」


それだけ言うと、彼女は静かになってしまった。逃げた...いや!逃げてなんかない!僕は正しいことをしたんだ、僕が知ってて、あの子が知らないことを教えてあげただけなんだ!


「あはははははは!!!」


無我夢中で走った。実は彼女が静かになってから頭の痛みも無くなっている。頼むから誰も僕を止めないでくれよ。久しぶりに頭がスッキリしているんだ


______


息が切れるまで走ったら、僕は家に帰った。


「ただいま!」


父さんも母さんもまた寝てる。僕に関心がないのか、口を聞いてくれなくなったし、家のこともせず寝てばかりだ


「まぁ、いいんだけどね...」


せっかくのいい気分を台無しにされた僕は、自分の部屋に鞄を放り投げ、ベッドにダイブする


「そう言えば、父さんと母さんが口を聞いてくれなくなって少ししてから頭が痛くなってきた気がする。絶対あの2人に対するストレスのせいだ...」


______


家着に着替え、何気なくスマホを見ていると、全国ニュースに地元の事が記事になっていた


○県○市○○高校で先程、女子校生の遺体が発見されました。第一発見者の教員は、男子生徒が走り去る姿を見た。とコメントしています


「え...」


僕の事じゃないか。時間が止まったようだった。額から冷たい汗が一粒流れる


違う!違う!殺すつもりなんてなかった!ただ痛みを分かって欲しかっただけなんだ!


僕は部屋に篭り、次の日学校に行かなかった。その次の日も、またその次の日も。そうして何日経ったところで、父さんも母さんもノックもしに来ない


______


ピンポーン


うるさいなぁ


ピンポーン


出るわけないだろ...


「○○さーん!○○県警の者ですがー!近隣の方から、異臭がすると苦情がありましてー!どなたかいらっしゃらないですかー!」


黙れよ...


頭が痛いんだ...









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ペイン エマンセ @fuuto0426

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ