MVPの行方

(まえがき)

前話に矛盾点があったので、2/24に加筆にて修正をしております。まだ、未読の方はそちらから……!

―――――――――――――――――――――――

 たっぷりと1時間近く拘束された後、ようやくお祭り騒ぎなプレイヤーたちから解放された。


「リクさーん! 祝勝会には必ず顔を出して下さいね!」


 俺はアイリスの叫ぶ声に、手をひらひらと振って応えた。


「わぁ! 祝勝会あるんだ!」


 疲れ気味の俺とは対象的にメイは目を輝かせている。


「緊急クエスト後の祝勝会はとある旅団……と言うか【天下布武】がその様子を動画に配信してから、定番になったにゃ」

「え? 嫌がってるけど……大元の原因リクじゃん!」

「いやいや、祝勝会を最初に企画したのはメグとマックスだな」

「祝勝会に参加したいから……という理由で入団するプレイヤーは大勢いるから、大成功の企画だったにゃ」


 仲間内での小規模な祝勝会は楽しいが、大規模になると収拾はつかないし、金はかかるし……と、何かと苦労したものだ。


 まぁ、祝勝会は【天下布武】の財源の一つである配信動画――『天下布武ちゃんねる』のキラーコンテンツの一つなのはたしかだった。


 所属メンバーの多くがプロゲーマーである【天下布武】では、個々の収入を伸ばすためにも、知名度を高める企画は推奨していた。


「祝勝会については後で考えるとして……冒険者ギルドに急ごうぜ!」

「後で考えるって……リクさん、参加するよな!」

「リクさんが不参加だと、団長が荒れますわ!」


 俺は団長想いのローズとセリアの叫びに答えることなく、冒険者ギルドへと早足で向かうのであった。



  ◆



「さてと、いよいよだな」

「ふぅ……緊張するね」


 ソラだった頃も仲間内でランキングを競い合っていたときは、毎回ランキング表を見る前にワクワクしたものだ。


 いざっ!


 プレイヤーでごった返す掲示板の前へと進むと……、


 ――!?


「いぇい♪ やったね!」


 メイの歓喜の声が耳に届いた。


『貢献度ランキング

 MVP メイ  (未所属)

 2位  リク  (未所属)

 3位  ヒロアキ(未所属)

 4位  ヒナタ (未所属)

 5位  イセ  (未所属)

 6位  マルセイ(金狼)

 7位  イサロス(赤壁)

 8位  ガラハ (青龍騎士団)

 9位  セリア (青龍騎士団)

 10位 アケミ (無所属)』


「最後のLAラストアタックが大きかったか……」


 残念ながら俺は2位だった。


 最後のLAもそうだが、短剣と違って複数攻撃の手段がある風属性の鎖鎌――『風威』の存在も、メイをMVPにした要因だろう。


「わわっ!? わ、私が4位ですか!?」

「ヒナねぇの場合は回復量だけじゃなくて、ヒナねぇのバフを受けたプレイヤーが与えたダメージも貢献ポイントに寄与されるにゃ」

「ハッハッハ! リク殿と私が並びましたな!!」

「クッ……ヒロたんに阻まれるとは……リクたんの相棒としてまだまだ修行が足らなかったか……」

「むぅ……また、ボクだけ仲間ハズレにゃ……ボクの作った武器で与えたダメージとか、ボクの作った防具で受けたダメージも貢献ポイントに寄与される仕様にして欲しいにゃ」

「それを言うなら、昔からよく言われてるのは指揮している者には別に貢献ポイントを……ってのもあるよな」

「指揮官への貢献ポイントの寄与は何度も要望を送ったけど、結局叶わなかったにゃ」

「数値化するのは難しいだろうからな」


 蓋を開けてみれば、上位は身内が独占。ベスト10の内7人もの数が遊撃隊のメンバーであった。


「まぁ、1位を逃したのは残念だが……メイ、おめでとう!! そして、頑張れよ!」

「ありがとう! って、何を頑張るの?」

「メイも祝勝会に参加するだろ?」

「うん」

「MVPなら、壇上の挨拶は必須イベントだろ」

「え? 嘘? リクがするんじゃないの!」

「ハッハッハ! 今回のMVPは俺じゃなくてメイだ。当然、挨拶をするのはメイだろ」

「えーーーー!?」

「報酬を受け取りに行くか」

「え? ちょ、ま、待ってよー!」


 心地よいメイの叫び声を聞きながら、俺は報酬を受け取るべく、カウンターへと向かった。


「本日は防衛お疲れ様でした! 貴方の貢献度を確認させて頂きます。タグの提出をお願い致します」


 俺は首に掛けたドッグタグを受付嬢へと手渡す。


「リク様ですね。ありがとうございます。貢献度ランキングを確認しますので、少々お待ち下さいませ」


 受付嬢は受け取ったドッグタグの番号と、手元にある端末の番号を見比べる。


「リク様、お待たせ致しました。おめでとうございます! リク様の貢献度ランキングは2位となり、報酬はこちらとなります。お受け取り下さいませ」


 受付嬢がカウンターの上に置いた箱を開けると、光の粒子が俺の中――アイテムインベントリーに収納された。


 さてと……お宝はあるかな……? 


 武器は……『マグナイフ』。


 土属性が付与された短剣だ。魔法の触媒にもなるが、面白味に欠ける武器だった。メリットを挙げるなら、見た目がSFっぽい機械仕立てでカッコいいと言う一点のみだ。


 まぁ、貴重な土属性の短剣だ。どこかで出番はあるだろう。


 後は……お!


 パッとしない防具の中に、唯一使えそうな装備品を発見した。


 『フォースシールド』


 名称にシールドと入っているが、盾ではなく籠手ガントレットの一種だ。


 非常に軽い素材で出来ており、見た目は銀を基調とした中に青い光の線が幾つも散りばめられた近代的なデザインだ。


 特殊効果も備わっており、実用性の高い装備品だった。


 前回の緊急クエストの報酬みたいに、大幅な戦力アップには繋がらないが、末永く使えそうな装備品に俺はほくそ笑むのであった。

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