報酬

「MVPのメイ様はなんか当たりはあったのか?」

「んー、どうだろ? 土属性の鎖鎌はあったけど、『風威』みたいな特殊能力はないかなぁ? 見た感じだと、リジェネ効果の付いてる『フォースバンド』って防具が一番の当たりなのかな? あと、リクから様付けされるとなんか怖いから止めてね」

「お! 『フォースバンド』は当たりの頭防具だな」

「見た目もお洒落だし嬉しいかな。あ! 後……『卵』があったよ!」

「MVPの報酬だから、産まれてくる従魔に期待大だな」

「楽しみだなー!」


 メイは嬉しそうに笑顔を浮かべる。


「ヒロは?」

「私は『フォースアーマー』と……メイ殿と同じ『卵』が当たりですな」

「『フォースアーマー』は特別な能力はないが、全耐性アップの効果があるし、素の耐久も高いから当たり装備だな。『卵』は何が産まれるか期待だな」

「更に精進しますぞ!」


 フォースシリーズは緊急クエストでしかドロップしないレアアイテムだ。今回は上位を独占できたこともあって、フォースシリーズは身内に集まりそうな予感がする。


 揃ってないフォースシリーズは、フォースブーツとフォースリングか。


 ヒナタあたりがどちらかをドロップしているだろうか?


「ヒナは?」


 俺は期待を込めてヒナタに問いかけた。


「えっと……私は……うーん……今回はハズレみたいです」

「へ?」

「みなさんの言う、フォースシリーズの装備品は報酬になかったですし、ユリちゃんがいるので『卵』もなかったです」

「ヒナタも上位だったから……何かしら当たりアイテムはあるだろ?」

「うーん……『大地の杖』というのはありますが……当たりですか?」

「悪くない装備品だが……当たりとまでは言えないな。他にも能力が高かったり、特殊効果が付与された装備品はないのか?」


 大地の杖は土属性の魔法を強化する杖だ。


「うーん? 耐久も上がる大剣はありましたけど……これが当たりなのでしょうか?」


 ――!?


「耐久が上がる大剣……? 名前は?」

「えっと……『アスカロン』って名前の大剣です」

「は?」

「にゃにゃ!?」


 俺とクロが同時に驚く。


「え? なになに! また、ヒナお得意の『私、何かやっちゃいました? 』系?」

「もぉー! メイ! 私そんなことはないから!」


 楽しそうにからかってくる妹にヒナタは頬を膨らませる。


「で、実際はどうなの?」


 メイは俺とクロを見て尋ねる。


「超レアアイテムだにゃ! 今回の緊急クエストだと、一番のレアアイテムだと思うにゃ!」

「すごく欲しかった大剣だな」


 土属性の大剣――『アスカロン』は、大剣使いが垂涎するレアアイテムだ。


「え? そうなのですか? それなら、リクさんにお譲りしますよ」

「いや、今はいらないかな……」


 ヒナタが嬉しそうに『アスカロン』を差し出すが、俺は首を横に振る。


 『アスカロン』を欲したのは昔――ソラだった頃の話だ。残念ながら、今は大剣を扱えない。


「え? いらないのですか?」

「今の俺だと大剣は扱えないし、ジョーカーになっても大剣は得意武器じゃないからな」

「えっと……それなら……」


 ヒナタはメイ、ヒロアキ、クロに視線を向けるが、


「うちも使えないからパスー」

「私も槍がありますゆえ」

「生産職のボクがもらっても宝の持ち腐れにゃ」


 残念ながら、身内に大剣を扱える者はいなかった。


「え? じゃあ……どうすれば?」

「売るのは勿体ないから、いずれトレードかな?」

「『アスカロン』なら、かなり良いものと交換できると思うにゃ……むしろ、交換できるレベルのレアアイテムを持っているプレイヤーを探すのが大変にゃ」

「うぅ……しばらく保管しておきますね」

「それがいいにゃ。それにしても、ヒナねぇは豪運の持ち主にゃ」

「うんうん。ヒナは当たりIDだよね」

「ステータスに運があったら、カンストしてそうだな」

「流石はヒナタ殿ですな」


 俺たちは口々にヒナタを褒め称える。


「そうは言いますけど、私は自分で使えるレアアイテムを拾った記憶がありませんよ! これで本当に運が良いのでしょうか?」


 言われてみれば、ヒナタがドロップしたレアアイテムはことごとく誰かの手に渡っている。


「んー……強運だとは思うが……言われてみれば……」

「ですよね! ですよね!」


 悩む俺にヒナタは嬉しそうに言葉を被せてくる。


「でも、ヒナはユリちゃんを引き当ててるし、リクも引き当てたじゃん!」

「ユリは……そうですし……リクさんは……うーん、確かに強運なのかもしれませんね!」

「何度も言うが……俺はドロップ品じゃないからな……」

「――! そうなると、私はリク殿が拾ったドロップ品……つまり、リク殿の所有物ということですな!」

「どんな理屈だよ……」


 その後、遊撃隊のメンバーとも報酬品について盛り上がり、みんなで今回の結果に満足し、笑いあった。


「っと、そろそろ旅団ホームに戻らないとまずいな。リクさん、祝勝会の開始時間は18:00だ。遅刻しないで来てくれよな」

「それでは、お先に失礼します」


 【青龍騎士団】のローズとセリアが足早に立ち去ると、俺たちも暫しの休養を求め宿屋へ向かうのであった。

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