お祭り騒ぎ
(まえがき)2/24 16:00に物語の矛盾点を解消するために加筆しました
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『全ての襲撃者を撃退した為、緊急クエストが完了となります。防衛に成功したプレイヤーの皆様お疲れ様でした』
緊急クエストの完了通知――プレイヤー側の勝利を告げるシステムメッセージがポップアップされた。
「完・全・勝・利!!」
「うぉぉおおおお!!」
「っしゃーーー!!」
周囲のプレイヤーたちが一斉に歓喜の雄叫びをあげる中、
「あ! そうだ! システムメッセージを非通知にするのはどうかにゃ?」
クロが提案を持ちかけてきた。
「非通知……? クロちゃんどうして?」
「今回のMVPは多分……リクにぃかメイねぇにゃ!」
「うちはリクと思うけどなぁ」
「俺はメイの気がするな」
「と、予測不能だから……みんなで一緒に確認してドキドキを共感するにゃ!」
「ん? どういうこと?」
クロの提案にピンと来ないメイは首を傾げる。
「勝利宣言の通知から、順位の通知が届くまでは……集計の関係でラグが5分ほど生じる」
「うん」
「だから通知を切って……仲間たちと一斉に冒険者ギルドに掲示されたランキング表を見ることで、喜びや驚きを共感しよう、って提案だな」
メッセージを一人で受け取るよりも、仲間と同時に順位を確認したほうが盛り上がる。これは、緊急クエストに慣れたプレイヤーがよくする遊びの一つだった。
「わわっ! イイね、それ! 楽しそう!」
「私も参加しますー!」
「私も参加しますぞ!」
「お? 何か面白そうだな、オレも参加するか」
「拙僧も参加しますぞ!」
「私も参加しますわ!」
メイが賛成すると、遊撃隊として共に戦った仲間たちも次々と賛同する。
「んじゃ、時間がない。一斉に通知をオフにするぞ」
俺は仲間ともにシステムコンソールを操作し、システムメッセージの通知を切った。
「ふぅ。とりあえず、お疲れさんだな」
「お疲れー!」
「お疲れ様です」
システムメッセージの通知を切った俺は遊撃隊のメンバーたちと共に、改めて労をねぎらいあった。
「プハーッ! 今回の緊急クエストは前回より楽だった……というか、楽しかったね!」
「今回は目の前の敵だけに集中できたからな」
「由々しき旅団がいなかったのが大きかったのですね」
「集中できたのはソレだけじゃなくて、アイリスさんの存在も大きかったにゃ」
「またしてもリク殿の名声が高まりましたな!」
「
「人の噂もなんちゃら……って言うだろ? すぐに忘れられるだろ」
「ならば私はリク殿の従者として……」
「拙僧はリクたんの相棒として……」
「「風化させぬよう、喧伝――」」
「せんでいい……!」
アホ二人は放置するとして、これからどうするかな。
本音を言えばすぐにでも冒険者ギルドに出向き、貢献ランキングを確認し、報酬を受け取りたいが……、
「リクさん、団長のところにいこーぜ!」
「団長が首を長くして待っていますわ!」
遊撃隊として共に戦った仲間であるローズとセリアの誘いを
「アイリスに挨拶してから冒険者ギルドに向かうか」
「「「おー!」」」
俺たちはアイリスの元へと向かった。
「ふむ……忙しそうだな」
「人気者にゃ」
「わぁ……大人気だね」
「わわ……大変そうですね」
「ご多忙の様子ですな」
アイリスがいると思われるA拠点の前は多くのプレイヤーでごった返していた。
周囲からは万歳三唱をする者や、アイリスコールをする者、互いに褒め合う者に、互いが無事に生き残れたことを喜ぶ者……と、お祭り騒ぎで様々なポジティブな感情が溢れていた。
「よし、遊撃隊はこれにて解散! みんな、本当にお疲れ様!!」
少し悩んだ結果、俺は遊撃隊に解散を宣言した。
「お疲れ様ー?」
「お疲れ様です?」
「リク殿、お疲れ様でした!」
「おつかれー! って! え? リクさんどういうこと!」
メイとヒナタは首を傾げながらも、流れ的に俺の言葉に返事したが、残念ながらローズからツッコミがはいった。
「緊急クエストをSランク達成に向けて編成された遊撃隊は解散。これからは各自で自由行動だな」
「えー! 団長への挨拶は!」
「見ての通り忙しそうだ……日を改めて挨拶するよ」
「ダメだって! 団長絶対に寂しがるって!」
「とは言え、アイリスさんは今回総指揮をとった有名大規模旅団の団長だぞ? 色々と大変だろ」
「いやいや、リクさんが有名大規模旅団とか言っても皮肉にしか聞こえないから!」
「今の俺は無所属だからな。例の旅団を指しているなら、有名かもしれないが、規模は【青龍騎士団】よりかなり小さいぞ」
俺は人目を気にして、【天下布武】の名前は出さずに答える。
「いやいや、それでも! せめて、団長に挨拶しようよ!」
ローズは中々折れてくれない。
「仕方がない……本音で話そう……」
「お、おう……」
俺が真剣な口調に、ローズが構える。
「今回の緊急クエストは色々あったが……正直、少し目立ち過ぎた」
「少しと言うか……リクさんの知名度は一気に跳ね上がったと思うぞ」
「知名度が跳ね上がったか……ならば、俺があの場に飛び込んだらどうなると思う?」
俺は鈍感ではない。客観的にみた自分の評価はある程度推測できる。
「え?」
「だから……あそこに――『風の英雄』だったか? 何か二つ名まで付けられた俺が飛び込んだら、どうなると思う?」
俺は大勢のプレイヤーが万歳三唱し、アイリスコールをハイテンションで唱和している場所を指し示す。
「え、えっと……リクさんもあんな感じで祭り上げられるかな……」
「奇遇だな。俺の推測も同じだ。ローズ、一つ質問していいか?」
「な、なんだい?」
「ローズは今回の貢献度ランキングが何位だったか――貰える報酬が何なのか気にならないか?」
「そ、それは……気になるけど……」
「だろ? 俺も気になる。正直、
属性の優位性もあって……俺が若干有利だとは思うが、メイもかなりの数の敵を倒していた。
正直、どちらが
ゲーマーとしての
「という訳で……今は一刻も早く冒険者ギルドに――」
「あ! リクさん!! お疲れ様でした!!」
本音でぶつかり、後はこの場から立ち去るだけ……だったはずなのに、お祭り騒ぎの中心――アイリスに発見されてしまった。
「ん? アレは!」
「『風の英雄』じゃねーか?」
「おい! 『風の英雄』だぞ!!」
「『風の英雄』が帰還したぞ!!」
「っしゃ! 胴上げだ!! みんなで『風の英雄』を胴上げしようぜ!」
「え……ちょ……ま……待――」
群がってきたプレイヤーたちの波にあっという間に呑み込まれた俺は、空中へと投げ出された。
「ワショーイ!」
「「「ワショーイ!」」」
「『風の英雄』バンザイ!!」
「「「『風の英雄』バンザイ!!」」」
数の暴力には勝てず……群がったプレイヤーたちに解放されたのは1時間もの時間が経過した後となったのであった。
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