緊急クエスト(S2)一日目④

 一日目の迎撃を終えた俺は防衛拠点の前で遊撃隊のメンバーと共に休息していた。


「なんか今回は前回よりも楽勝だったね」

「今回は最初から統制が取れていたからな」

「これが普通にゃ。前回の緊急クエストがイレギュラー過ぎたにゃ」

「前回は由々しき旅団の存在もさることながら、初心者が多かったのも苦戦した原因だな」


 余裕の笑みを浮かべるメイの言葉に俺とクロが答える。


「でも今回はいつもに増してリクさんが輝いてました!」

「不肖ヒロアキ、リク殿の活躍に興奮しておりますぞ!」

「ハッハッハ! 拙僧も相棒リクたんの活躍に年甲斐もなく興奮しておりますな!」

「なんで……興奮なんだよ……お前らの感情ぶっ壊れてるだろ」


 ヒナタの言葉に続く変態コンビの言葉に俺は苦笑する。


「あの二人ほどじゃねーけど、オレもリクさんの強さには興奮したぜ!」

「だよなー! 強いのは知っていたけど、今日のリクさんの強さはダンチだったよな!」

「カナメ、はしたないですわ」

「ローズには【青龍騎士団】の一員としてもう少し気品も磨いて欲しいですね」


 すっかりと意気投合したカナメとローズに、アケミとセリアが苦言を呈する。


「今日は初日だ。明日以降は襲撃の勢いは増していく一方だ。油断はするなよ」

「はーい」

「はい!」

「承知!」

「〆るところは〆る。流石はリクにぃにゃ」


 一日目を終えた感触としては、今回の緊急クエストの失敗は万が一もないだろう。このまま順調に事が運べばSランクの達成も難しくはないと思う。


「あれ? 今回ってSランクペース?」


 メイが疑問を投げかけてくる。


「このまま順調にいけばSランクだろうな」

「今回のが普通ってことは……緊急クエストってSランクが当たり前だったの?」

「いや、俺の経験則になるが、Sランクを達成できる確率は50%を下回っているな」

「緊急クエストが実装されてから、最上位階層での緊急クエストのSランク達成率は37%にゃ。一番多いのはAランク達成で43%にゃ」

「わぁ! クロちゃんは何でも知っていますね!」

「にゃはは……ボクは統計を取るのは趣味なのにゃ」


 クロはまるで歩く攻略サイトだ。IGOの世界に閉じ込められて、インターネットに繋げない現状……クロの蓄積している知識の力は計り知れない。


 ここまでIGOの統計に詳しいプレイヤーは俺の知る限りではマイくらいだ。


 まさか……クロの正体はマイ……?


 んー、マイなら……と言うか、【天下布武】のメンバーだったら俺に正体を隠す意味がわからない。


 クロの正体は大手の攻略サイトの管理人あたりか?


 俺はクロの正体が誰なのか気になり始めた。


 今度聞いてみるか。


 俺が悩んでいる間も話は続いていた。


「じゃあ、今回はSランクペースってことは、前回もSランクだったらしいから……指揮をとっている【青龍騎士団】ってかなり凄い旅団なんだね!」

「そうだな。団長のアイリスさんを筆頭に【青龍騎士団】は凄い旅団だな」


 他にも理由はあるが、周囲には【青龍騎士団】所属のプレイヤーが大勢いる。ここは、無難にメイの意見に乗っかろうと思っていると……


「あはは……『風の英雄』と『闇の戦乙女』にお褒め頂けたのは光栄ですが、理由は他にありますよ」


 話題の張本人アイリスが苦笑いを浮かべながら、登場した。


「え? ちょ……『闇の戦乙女』って……リクが勝手に言っただけだよ」

「ははは! メイも遂に素敵な二つ名が付いたな! おめでとう!」

「うん! ありがとう! って、違ぁぁぁあう!」


 メイは元気なノリツッコミを披露する。二つ名で呼ばれる恥ずかしさが伝わったようで何よりだ。


「あはは! 本当に素敵なパーティーですね」


 アイリスはそんな俺とメイのやり取りを見て、楽しそうに笑い声をあげる。


「それはそうと、リクさんなら本当の理由を分かっていますよね?」

「本当の理由とは、今回の緊急クエストがSランクペースの理由か?」

「はい」

「【青龍騎士団】、強いてはアイリスさんの指揮能力が理由の一つと言うのは本音だぞ?」

「他にも大きな理由がありますよね?」

「え? そうなの?」


 メイがアイリスの言葉に首を傾げると、


「ハッハッハ! 笑止! 私にはすぐにわかりましたぞ!」


 何故か自信満々のヒロアキが答え始める。


「え? ヒロ、本当?」

「無論! リク殿の存在ですな! 我が主――リク殿の圧倒的な強さに敵はおののき、味方の士気は鰻登り! まさしく、英雄の名に相応しいリク殿の存在こそが――」

「ヒロ、違う」

「な!? またまた、ご謙遜を! イセ殿も言っていましたが、過ぎたる謙遜は良くないですぞ」


 ヒロアキが明後日の方向に逸れた答えをドヤ顔で告げ、


「仰るとおり、リクさんの存在も大きな理由ですね」


 何故かアイリスも何度も頷き、その意見に賛同し、


「ひゅー! さっすが! 『風の英雄』様だね!」


 最後にメイが先程の仕返しとばかりに、俺を煽った。


「ったく、いい加減にしろよ……本当の理由は――」


 俺は本当の理由を答えるのであった。


―――――――――――――――――――――――

(あとがき)


明けましておめでとうございますm(_ _)m


年末年始は一切執筆が出来ずに……こちらも昨日スランプに悩まされながら書いた話となります。


何とか執筆モードに体調を整えますが、更新が不定期になったら申し訳ございません。


今年もよろしくお願い致します!!

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