緊急クエスト(S2)一日目③

 俺は慎重にヒロアキへと攻撃を仕掛けるジェノサイダーを見極める。


 厄介な4本の腕は別々の意思を宿しているかの如く不規則な攻撃を繰り返していた。


 4本の腕全ての動きを把握するのは無理だが……2本なら? 俺はジェノサイダーの左側に回り込み左側面から生えた2本の腕のみを注視する。


 イケるな……!


 ジェノサイダーを攻略するイメージが掴めた俺は、突進した。


 ――《パリィ》!


 《パリィ》は守りだけのスキルに非ず。


 俺はジェノサイダーの左側下部の腕がヒロアキへと振り下ろされたタイミングで、左側上部の腕を短剣で打ち払う。


 そのままジェノサイダーの背後に滑り込み、短剣を首筋の連結部に突き立てた。


 プシューと蒸気があがり、ジェノサイダーの動きがぎこちなくなると、


「今!」


 ジェノサイダーの胴体部分にメイの投擲した風を纏った分銅が命中。メイはそのまま突撃すると、ジェノサイダーを覆った暴風を鎌で切り裂いた。


「――《風威》!」


 うぉ……マジかよ!? 俺とヒロアキの動きを見てからの判断だが、ジェノサイダーに《風威》のような大技を当てるか……。


 いつの間にか、メイの成長速度は俺の想像を超えていた。


「イイね! イイね! この調子でサクッとジェノサイダーを倒すぞ!」


 予期せぬメイの成長に俺のテンションは上がり、自然と笑みを浮かべる。


「にはは! リクとヒロがいないと無理だったけどね」


 メイも笑みを浮かべ、再びジェノサイダーと対峙するのであった。



  ◆



 ジェノサイダーと対峙してから10分。


 ヒロアキはヒナタのサポートもあり、安定した立ち回りでジェノサイダーの攻撃を引きつけており、俺とメイはダメージを積み重ねていた。


 成長したのはメイだけじゃないな。


 不規則に動く4本の腕による攻撃を、巧みな盾捌きで最小限の被害に抑えているヒロアキ。そして、そんなヒロアキを一切危険な状態にすることなく適切な回復をするヒナタ。


 ヒロアキもヒナタもメイと同じく大きな成長を遂げていた。


 良い仲間たちに巡り会えた。


 俺は躍動する仲間たちの姿に心打たれながら、もはや作業と化したジェノサイダーへの攻撃を続けた。


 ん?


 ヒロアキはジェノサイダーの攻撃を受けながら、後退りする。


 そして、ある場所まで後退すると再び大地に根をはやしジェノサイダーの攻撃を受け止める。


 なるほどね。


 ヒロアキが後退りして到達した場所は――ヒナタの展開した結界から外れた場所だった。


 ヒロアキの意図に仲間の全員が気付く。


 始点は俺でいいか。


 俺はジェノサイダーへ突撃すると、左側上部の腕を《パリィ》で弾き、背後へ回り込む。


 ――《バックスタブ》!


 すると、俺の動きに連動してメイが分銅を投擲。すかさず突進し、ジェノサイダーを覆った風を切り裂いた。


「感謝致す! ――ハッ!」


 最後にヒロアキは蓄積したダメージを盾に乗せて、ジェノサイダーへと叩き付けた。


 蓄積したダメージ――《カウンターアブソーブ》の強烈な一撃を受けたジェノサイダーはその機械仕掛けの身体を大きく凹ませ、煙をあげると、無機質なガラクタと化した。


「よし! ヒロ! 勝どきをあげろ!!」

「むむ? わ、私がですか!?」

「倒したのはヒロだろ? ほら? 早く」


 俺は笑みを浮かべながらヒロアキを急かす。


「クッ……承知。『風の英雄』リク殿の従順なる下僕ヒロアキが敵将ジェノサイダーを討ち取り申した!」


 ヒロアキは声高だかに勝どきをあげる。


「……おい」

「あはは! 敵将だって! ヒロ、武将みたい!」

「ヒロさんらしい、素敵な勝どきですね」

「いや、違う……ツッコむところはそこじゃない!」

「おぉ……! ヒロたん、流石は拙僧のソウルメイトですな!」

「うはっ!? 倒したのはリクさんでも、メイっちでもなくて……ヒロっちなんだ!」

「おいおい! リクさんのパーティー強すぎだろ!」


 遊撃隊の仲間たちが素っ頓狂なヒロアキの勝どきに盛り上がる。


「遊撃隊に告ぐ! 周囲の魔導人形ゴーレムを掃討! その後、速やかに撤退!」


 ヒロアキが勝どきをあげたのに……俺のほうが辱められるとは……解せぬ。


 俺は遊撃隊の仲間たちに指示を出し、半ばヤケクソ気味に周囲の魔導人形ゴーレムを掃討するのであった。



  ◆



 緊急クエスト一日目。魔導人形ゴーレムの襲来から6時間後。


 襲撃してきた全ての魔導人形ゴーレムを掃討。


 緊急クエストの一日目は順調な滑り出しで終えたのであった。



―――――――――――――――――――――――――――――――

(あとがき)


あけましておめでとうございます!


新年一発目のトプセカはいかがだったでしょうか?


そして、新年早々謝罪をば……m(_ _)m


年始は色々と立て込んでおり、執筆の時間が満足に取れません……。次回の更新は1月11日(月)となります。


私の別作『勇者召喚に巻き込まれたクラスメイトたちは異世界を気ままに生き抜くみたいです』

https://kakuyomu.jp/works/1177354055266760029


は、年始も休まず毎日更新となっております。


年始でお時間が許すようであれば……トプセカの代わりに読んで頂けると幸いですm(_ _)m


地域によっては寒波で大変だとは思いますが、読者の皆様が素敵な年始を過ごせることを祈って……


本年もよろしくお願い致しますm(_ _)m


ガチャ空

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