緊急クエスト(S2)準備⑤
アイリスを中心に緊急クエストの準備が進む中、俺は共に遊撃隊として参加するプレイヤーを集めていた。
「遊撃隊のメンバーを選抜してもいいと言われても、知り合いは少ないから……こうなるよな」
結局俺が集めた遊撃隊のメンバーは、メイ、ヒナタ、ヒロアキ、クロ。それと、先日パーティーを共に組んだカナメ、アケミ、イセの3人。
この人数では心許ないと言うことで、パーティーを組める上限人数である12人にするため、面識のあるローズとセリアと【青龍騎士団】所属のプレイヤーが二人参加することになった。
「うぉ! マジ! リクっちすげーな! いや! すげーのは知っていたけど……マジすげーな!」
「カナメは語彙力がなさすぎですわ」
「流石は拙僧の相棒リクたん! ハッハッハ! 英雄とは恐れ入った!」
遊撃隊に招待したカナメとイセは大はしゃぎだった。
「ってか、ここにいるメンバーなら流布されている噂が嘘八百なのはわかるだろ……」
「え? そうか? オレは『風の英雄』がリクっちと聞いて納得したけどなー」
「私もですわ!」
「拙僧もですな。して、色々な噂が先程耳に入りましたが、どこまでが真実なのですかな?」
「ほとんどがガセだ。合っているのは……風属性ってことくらいだな」
「MVPをとったのも事実にゃ」
「リクがゴブリンキングを倒したのも本当じゃない?」
「MVPをとったのは事実だが、貢献度に関してはメイと僅差だったと思うぞ。ゴブリンキングに関しては単独で倒してないし、ワンパンどころか何度も攻撃していただろ」
俺は流布された噂を訂正する。
「ふむ……となると、リクたんが『天才マックス』ではないのですな」
「ハッ! 俺がマックス? 勘弁してくれ」
「ってことは……『覇王ツルギ』様でもないかぁ」
「そうなるな」
この会話の流れは不味いな。聞かれていないから真実を伝えていないというのが俺のスタンスだ。聞かれてしまったら嘘で答えるか、正直に答えるしかない。
別に俺のメインキャラクターがソラとバレたところで、何か支障をきたすわけではないが……無駄に騒がれるのは面倒だ。
「そろそろ時間だ。無駄話はこの辺にして、緊急クエストに備えるぞ」
俺は話を打ち切り、アイリスの定めた防衛ラインへと向かうのであった。
◆
俺たちは遊撃隊だ。
アイリス率いるアルファチームにも、もう一つのベータチームにも所属はしていない。俺たちの役割は、中ボスと呼称される存在と、最終日にラスボスであるゴーレムキングを倒すことだ。
しかし、中ボスはある程度後半にならないと出現しないので、それまでは適当に防衛に参加することとなる。今は先発隊であるアイリス率いるアルファチームと肩を並べていた。
「ねね? 今回うちらが相手する中ボスっていうのは、やっぱりゴーレムジェネラル?」
前回の緊急クエストでの中ボスはゴブリンジェネラルだった。メイはその法則に当てはめているようだ。
「火属性の代表格であるオーガとか水属性の代表格であるリザードマンならジェネラル系だが、ゴーレムだけは少し違うな」
「え? そうなの?」
「メイはゴーレムってどんなイメージだ?」
「なんか岩とか石でできてる、大きくて硬そうな敵」
ゴーレムが雑魚として始めて登場するのは第四五階層だ。この世界のゴーレムを知らなくても無理はない。
「メイのイメージしているゴーレムはロックゴーレムだな。この世界のゴーレムは魔導人形だ。ワラワラと湧き出る雑魚は
「そうなんだ」
「そして、中ボスだが……候補が複数存在する」
「そうなの?」
「攻撃に特化した
「へぇ、楽しみだね」
「楽しみか……期待してるぞ」
「任せて!」
戦闘狂のメイは目を輝かせる。
「あ、リクさん! 一つお願いしてもよろしいですか?」
ゴーレムの説明が終わるとタイミングを見計らっていたのか、アイリスが声をかけてきた。
「お願い……? 俺が応えられることなら?」
「開幕と同時に全力で敵を掃討してくれませんか?」
「プレイヤーの士気を高めたいのか?」
「はい! 流石はリクさんです! まだ、『風の英雄』であるリクさんの強さに半信半疑のプレイヤーが沢山います。お願いできますか?」
「期待に応えられるだけの結果を残せるのかは不明だが……善処する」
「ふふっ。私の知っているリクさんなら大丈夫ですよ」
「どうだか……士気が下がっても、文句は言うなよ?」
俺は肩をすくめて、苦笑する。
「さてと、そろそろ時間だ」
「うん。なんか緊張するね」
「そうだ、メイは『闇の忍者』と『闇の戦乙女』だと……どっちの響きのほうが好きだ?」
俺はふとあることを思いついて、隣に並ぶメイに声をかける。
「なにそれ? 『闇の忍者』ってなんかイマイチだから、強いて言えば……『闇の戦乙女』かな?」
「む? 私は『リク殿の守護者』……いや、リク殿との立場を『リク殿の従者』……『リク殿の下僕』!?」
「いやいや……法則に当てはめるならヒロは『光の守護者』でいいだろ」
「そうなると、ヒナねぇは『水の聖女』で、ボクは『炎の鍛治師』かにゃ?」
「え? 聖女なんて……大袈裟ですよー」
「ハハッ、それを言うなら俺なんて風の“英雄”だぞ」
「それで……リクにぃ、急にどうしたにゃ?」
突然、変な二つ名を付け始めた俺にクロが問いかける。
「さっき、アイリスにプレイヤーの士気を高めろって言われただろ?」
「リクにぃならできると思うにゃ」
「せっかくだから、メイも巻き込もうと思ってな」
「――! にゃるほど! いい考えにゃ!」
「ん? ん? どういうこと?」
「そろそろ敵が来るぞ……メイは俺と共に最前線に突っ込むぞ。残りのメンバーはヒロを中心に防衛ラインでゴーレムを迎撃してくれ」
俺の言葉に遊撃隊の仲間たちが頷く。
そして、視界の先には砂煙が舞い上がり、地に付けた足からは振動が伝わり、風に乗って鈍重な足跡と金属が触れ合う音が耳に届く。
「来ました! 遠距離部隊は攻撃の準備を!」
アイリスの大きな声が響き渡る。
弓を構えていたプレイヤーは弦を引き絞り、杖を構えていたプレイヤーは魔力を練り上げる。
舞い上がる砂煙の中から、無数の
「今です! 発射!!」
アイリスの号令が飛ぶと、無数の矢と色とりどりの魔法の雨が魔導人形に降り注いだ。
「タンク、前進!!」
屈強な重装備に身を固めたプレイヤーたちが遠距離部隊の前に立つと、一斉に盾を打ち鳴らす。
そろそろ出番だな。
「メイ!」
「うん!」
俺は一対の短剣を構え、メイと視線を合わす。
「アイリスさんの命により! 『風の英雄』と『闇の戦乙女』出陣する!」
「え?」
「ほら、メイ行くぞ!」
俺は声高々に宣言し、メイと共に無数の
―――――――――――――――――――――――
(あとがき)
明日は何の日ー?
YES! Happy Mery Xmas♪
(素敵なボケを考えたけど思いつかなかった模様)
と言うことで、記念SSを投稿します(。・ω・。)ノ
金曜日も投稿予定なので、今週は週4投稿!!
今後もトプセカをよろしくお願いしますm(_ _)m
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