緊急クエスト(S2)準備③
指定されたA拠点前に仲間たちと共に移動。
到着したA拠点前には、すでに多くのプレイヤーたちが賑わっていた。
「ぱっと見……6,000人くらいか?」
「多分8,000人くらいにゃ」
俺の見込みはかなりズレているようだ。
セロ曰く俯瞰的に見て、密集している面積から人数を割り出せば簡単だ……だったか?
どうやるんだよ。
「ということは……今回の参加者は12,000人くらいでしょうか?」
「ほぇー、前回よりもかなり少ないね」
「戦闘に自信のない生産職のプレイヤーは参加を見送ってタウンで待機しているにゃ」
「あ!? 強制参加じゃないんだ」
「強制参加ではないが、ゲームの頃と同じ仕様なら……この階層から移動するのは不可能とかだったかな?」
ソラだった頃は緊急クエストの参加率は100%だった。不参加の仕様は詳しくないが、たしか緊急クエスト開催中にログインしても該当の階層から移動できないという話は聞いたことがあった。
「この階層にいることが参加になっているにゃ。実際にタウンに籠もっていても、防衛拠点を全て破壊されたらモンスターはタウンになだれ込んくるから、非戦闘員は消滅を免れないにゃ」
「タウンに引きこもっていても参加なんだね」
「貢献度が最低ランクになるから、報酬は雀の涙になるにゃ」
「何人くらい引きこもっているんだ?」
「んー……第五一階層に行くのを諦めたプレイヤーも含めたら……10,000人くらいだと思うにゃ」
「結構いるな」
「今でも怖くて震えているプレイヤーはいっぱいいるにゃ」
スリーアウト制という独特なデスペナルティの影響で2回までは死んでも復活するとはいえ……やはりこの世界に馴染めないプレイヤーは一定数存在するようだ。
「と言うことは……敵の規模は20,000人以上が参加している想定になるのか」
「前回よりマシとは言え……そうなるにゃ」
「まぁ、前回も似たような状況でSランクだろ? 【青龍騎士団】のお手並み拝見といくか」
「にゃはは、さっきの感じだと期待できるにゃ」
俺は一般参加者の一人として、気楽な気持ちで緊急クエストに臨むことにした。
「高いところから失礼します。皆様、ご協力ありがとうございます」
10分ほど待機していると、アイリスが【青龍騎士団】が用意した壇上に立ち、挨拶をする。
「只今、集計が終わりました。今回の防衛に参加するプレイヤーの数はおよそ12,000人。この場には8,400人のプレイヤーが集まっています」
クロの見立てはほぼ正確で、俺の見立てはやはりズレていたようだ。
「今回は、こちらに集まったプレイヤーを2つのグループに分けたいと思います」
「え? 2つ? ここにいるプレイヤーが防衛する拠点は3つじゃないの?」
俺の隣にいるメイがアイリスの作戦を聞いて首を傾げる。
「まぁ、作戦を最後まで聞いてみようか」
「うーん……わかったよ」
俺の言葉にメイはアイリスの言葉に集中する。
「今回スタンピードを起こしたゴーレムは耐久が高く厄介ですが、敏捷は低く突破力に欠けます。よって、私たちは防衛ラインをここに形成します」
アイリスは隣に控えていたプレイヤーが広げた地図を指し示す。
A
B C
D 【防衛ライン】 E
「私がリーダーを務めるチームアルファと、【青龍騎士団】副団長のガラハが務めるチームベータにて4時間交代で防衛ラインを守ることにより、Sランクの達成を狙います」
「ローテーションは4時間なんだ」
「3時間きっちり寝たかったら4時間の休息がないと無理……って計算じゃないか?」
ちなみに、【天下布武】が指揮をとるときのローテーションは3時間だ。3時間もあれば1時間は寝れるから十分だろうという、廃人気質な水準になっている。
「各防衛拠点から100メートル離れた位置に《アラート》を仕込みます。待機となるチームは万が一の事態に備えて各防衛拠点の前にて休息をお願いします。ここまでで質問はございますか?」
おおまかな作戦の説明は終わった。ここまでの流れはセオリー通りだった。ならば、次にくる流れは……チーム分けだろう。
緊急クエストの指揮のとりかたは、動画に多数アップロードされているし、攻略サイトなどにも取り上げられていた。
不特定多数のプレイヤーを指揮するのであれば、広く知れ渡っているセオリーに沿うのが適切だ。
「順当な流れにゃ」
「奇抜な作戦もないし、慣れた感じだな」
セオリー通りの流れに安心して流れに身を委ねていると、
「お? リクさん発見!」
「ローズ! リクさんは見つかり……あ!?」
以前パーティーを組んだアイリスの仲間――ローズとセリアが声を掛けてきた。
「ん? ローズさんとセリアさんか、久しぶりだな」
「おっす! 久しぶり! この階層に到達したなら連絡くれよー」
「リクさん、お久しぶりです……あ、団長にメールを送りますね」
ローズは相変わらずな感じに、セリアは俺に挨拶をするやいなや慌ただしくコンソールを操作している。
「団長といえば……二人は【青龍騎士団】だったんだな」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「ふぅ……メールは送信できました。改めまして、その節はお世話になりました」
ローズは些細なことを気にするなとばかりに笑い、セリアは丁寧に頭を下げる。
「ん? リク、この人たちは?」
「あぁ……前に野良募集で組んだプレイヤーだ」
「うっす! はじめまして! 【青龍騎士団】のローズだ。よろしくな!」
「初めまして。【青龍騎士団】のセリアと申します。以後、お見知りおきを」
「え? え? 【青龍騎士団】って……あの人の旅団!?」
メイは慌てふためき、壇上で質疑応答に答えているアイリスを指す。
「そうなるな。実はパーティーを組んだメンバーの中にはアイリスさんもいた」
「え? え? アイリスさんって今話してるあの人だよね?」
「うむ。世の中狭いな」
「えーっと……"リク"の知り合いなんだよね?」
メイは必死に言葉を選んで問いかけてくる。
「そうだな。風属性のリクが知り合って、野良パーティーを組んだ知り合いだな」
「カァーッ! 知り合いとか寂しいこと言うなよ! オレたちはフレンドだろ!」
「というわけで、フレンドだな」
突然の乱入者に戸惑いながらも会話を弾ませていると、
「アイリスさん! 一つ質問いいか?」
「どうぞ」
「Sランクを狙うということだが、今回の相手は厄介なゴーレムだ。Sランクの達成条件の一つ――ゴーレムキングを倒せる算段はあるのかい?」
壇上のアイリスに質問が投げかけられた。
「はい! ございます!」
ゴーレムキングは物理防御のみならず魔法防御にも優れている。更に、キングの名を冠するモンスターは往々にして高耐久だ。過去に俺もゴーレムキングを倒しきれず、Sランクを逃した過去がある。
俺はアイリスの答える算段とやらに興味を惹かれると、
「あ! そだ! やべ……リクさんの許可をとるんだっけ?」
「ほら! ローズ! 何をしているのですか!」
「……許可? 何のだ?」
「えっと……そのなんて言えばいいんだ……?」
ローズが何やら言葉に悩んでいると、
「皆さんは前回の緊急クエストで、突如現れた『風の英雄』をご存知でしょうか?」
アイリスの口から何やらよろしくない単語が発せられたのであった。
―――――――――――――――――――――――
(あとがき)
いつも本作をお読みいただきありがとうございます!
本日、新作(と言っても書き直し作品ですが……汗)を投稿しました!
個人的に凄くお気に入りの作品となっております。
お時間が許すようであれば……こちらの作品も応援よろしくお願い致しますm(_ _)m
↓↓↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354055266760029/episodes/1177354055266769924
『勇者召喚に巻き込まれたクラスメイトたちは異世界をきままに生き抜くみたいです』
新作に力はいれておりますが、トプセカに関しても更新は滞らないように致します!
今後もお付き合いのほどよろしくお願い致します。
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