第四〇階層攻略③

 メイたちと分かれ、目新しいパーティーメンバーと共に第四〇階層を進んでいると……


「なあ、リクさん一つ聞いてもいいか?」

「ん? なんだ?」


 カナメに声をかけられた。


「さっきパーティーメンバーを決めるときに、リクさんとクロさんは“知識”担当って言ってただろ? アレってどういう意味だ?」

「あぁ……そのことか。メイからは何も聞いてないのか」

「聞いてない? 何をだ?」

「俺はセカンドキャラクターだ」

「セカンドキャラクター……?」

「この世界がゲームだった頃に『無垢なる魂』って課金アイテムを買えばもう一人キャラクターを作れたのは知ってるか?」

「あぁ……なるほど! そういうことか!」


 カナメはようやく俺の言わんとするとことを理解したようだ。


「俺はメインキャラクターで、一度この階層をクリア済みだ。クロも同じだな。だから、初見のプレイヤーよりも知識が豊富って意味だな」

「へぇ、IGOで別キャラを作れるのは知っていたけど、あんまいないじゃん。リクさんって属性だけじゃなくて色々との変わり種なんだな」

「え? と言うことは……リクさんは知識があったのに敢えて風属性を選んだのですか?」

「茨の道と知って進むとは、リクたんもなかなかのドMですな。きかな、善きかな」

「まっ!? リクさんはドMだったのですね」

「風属性を選んだのは趣味に全振り……って、そっちの趣味じゃなくて……あぁ、なんだ……メインキャラクターと違う方向性のキャラクターを作りたかったからだな」

「ハッハッハ! 隠さなくても大丈夫ですぞ」

「だから、ドMじゃねーから!」


 カナメ、アケミ、イセは野良に慣れているからなのか、物怖じしない賑やかな性格をしているようだ。


 ――!


「敵のお出ましだ」

「ですな」


 俺は《索敵》に引っかかった敵の存在を告げると、イセも頭に付けたうさ耳をピクピクと動かしながら首肯する。


「敵は餓鬼3体。このパーティーでは初めての戦闘になる。最初はオーソドックスな役割分担でいいか?」

「ってことは、私はタンクをすればいいんだな」

「ふふふ……燃やし尽くしますわ」

「拙僧は回復ですな」


 三人のプレイスタイルを知らない俺は、オーソドックスな作戦を提案した。


「ギィギィギィ」


 少し進んだ先にお腹だけが膨らんだ130cmほどの小柄な異形のモンスター――餓鬼が待ち構えていた。


「いきますわ! ――《ファイヤーストーム》!」


 餓鬼の姿を視界に捉えると、アケミは激しく燃え盛る炎の風を巻き起こす。


「っしゃ! 来いや! ――《タウント》!」


 続いてカナメが盾を打ち鳴らすと、炎の中から3匹の餓鬼が飛び出してくる。


 お、キレイに並んだな。


 ――《パワースイング》!


 俺はカナメ目掛けて飛び出した3匹の餓鬼を纏めてデスサイズで薙ぎ払った。


「へ? もう終わりかよ?」


 カナメは地に倒れて動かない3匹の餓鬼を見て拍子抜けする。


「炎で弱っていたからな」

「うわっ……私の見せ場ゼロじゃん!」

「ハッハッハ! 拙僧こそ何もしておりませぬな」

「ふふふ……私は満足ですわ」

「先は長い。焦らなくても活躍の場はあるさ」


 新メンバー四人でのデビュー戦をあっさりと終えた俺たちは奥へと進むのであった。



  ◆



 第四〇階層攻略開始から3時間。


 ここまで数回の戦闘を経験し、カナメたちの性格もだいぶ掴めてきた。


 一言で言えば、全員がアタッカー志向だった。


 攻撃も出来るタンク――竜騎士。


 攻撃も出来るヒーラー――モンク。


 攻撃しかできない――魔導師。


 俺自身も戦闘外であれば斥候としての役割はあるが、戦闘中の主な役割は攻撃だ。


 魔導師のアケミはともかくとして、残りの三人はスペシャリストではなくゼネラリストだった。


 まぁ、野良が主体なら……必然とソロも多くなる。役割が固定されるスペシャリストよりもゼネラリストに偏るのは必然か。


 役割で縛るよりも自由に攻撃をさせた方が殲滅速度は上がるのか?


「カナメさんとイセさんも攻撃に参加するか?」

「お? いいのか?」

「承知しましたぞ」


 新たな作戦を伝えたところで、前方から敵の反応を感知。


「前方よりオーガが2体と餓鬼が4匹だ」

「っしゃ! こい!」

「ハッハッハ! 腕が鳴りますな!」

「燃やして差し上げますわ!」


 あからさまにやる気の高まったメンバーと共に敵と対峙した。


「っしゃ! ウォォォオオオオオ!」


 カナメが眼前の敵へと咆哮をあげる。これは、ただの雄叫びではなく、竜騎士のスキル《ハウリング》だ。カナメの咆哮は大気を震わせ、オーガたちは身をすくませた。


「カナメ、ナイスですわ! ――《ファイヤーブラスト》!」


 身を竦ませる敵たちの中心に炎の爆発が巻き起こる。


「いくぜ!」

「善きかな! 善きかな!」


 同時に飛び出したカナメはオーガに槍を振るい、イセはオーガに拳を振るう。


 ――《ウィンドカッター》!


 俺は餓鬼に照準を絞り、風の刃を飛ばし、


「燃えなさい! ――《ファイヤーランス》!」


 アケミは炎の槍を別の餓鬼へと飛ばす。


「ふんぬっ! 効かぬわぁ!」


 イセは振り下ろされた金棒を腕で受け止め、


「拙僧の迸る情熱パッション受け止めきれるかな!」


 オーガへと正拳突きを見舞う。


 カナメも槍と盾を駆使して、オーガを圧倒している。


「――《ファイヤーウォール》!」


 生き残った餓鬼はアケミの展開した炎の壁に阻まれている。


 みんな生き生きしてるな。


 こうなると、俺の役目は……


 ――《ウィンドヒール》!


 癒やしの風がイセの傷ついた身体を包み込む。回復量は本職と比べたらかなり落ちるが、そこまでダメージを受けていないから、俺の回復量でも十分だろう。


「むむ……この優しき風は……リクたんの想い受け取りましたぞ!」


 俺は律儀に礼を述べるイセに「はいはい」と手を振ろうとしたが、


「ギィ!」


 一匹の餓鬼が炎の壁を超えてアケミへと飛びかかろうしていた。


 ――《パリィ》!


 飛びかかってきた餓鬼を短剣で弾き、態勢を崩したところにトドメの一撃を見舞う。


「た、助かりましたわ」

「気にするな。俺の役割だ」


 その後火力に特化した俺たちは短い時間でオーガたちを掃討したのであった。



―――――――――――――――――――――――――――――――

(あとがき)


いつも本作をお読み頂きありがとうございますm(_ _)m


皆さんはゲーム好きですか? 私は大好きです!!


特に好きなジャンルがDRPGです! そして、明日(11/26)長年待ち続けていたゲームが発売します!


※意訳 更新が遅れたら私はダンジョンに潜っています。


可能な限り定期的な更新を心がけますが滞ってもリクたちの冒険、応援よろしくお願いしますm(_ _)m

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