第四〇階層攻略④
第四〇階層攻略開始から60時間。
想定よりもかなり早い速度で階層を進んでいた。
しかし、基地がないと不便だな。
道中で二度の野宿を余儀なくされたが、基地の所有権はヒナタにあり、カナメたちは基地を所持していなかったので、寝袋での野宿となっていた。
もう少し高級な寝袋を買おうかな……。
この世界がゲームの頃はそこまで気にしていなかったが、この世界がある種の現実となると……衣食住を妥協するのはダメだなと実感してしまう。
とはいえ、第四〇階層を突破したら再びヒナタたちとの固定パーティーに戻る。そうなると、基地も戻ってくるので寝袋は不要だ。第五一階層に到達すれば、最高の居住空間とも言えるマイホームもある。
寝袋は不要だな。
と、どうでもいいことを考えている内に第四〇階層の最初の難関へと到達した。
「この扉の奥がボスだな!」
カナメは獰猛な笑みを浮かべる。
「ボスというか……中ボスだな」
ボス――階層主はここから更に先のヒナタたちと合流後に到達出来る最奥の間にいる。
「思ったより早く着きましたわ」
「ヒロたんと拙僧ら、どちらが早いか楽しみですな!」
向こうのパーティーとこちらのパーティーか。
安定感があり、トータルバランスに優れているのは間違いなく向こうのパーティーだ。
しかし、ヒロアキとヒナタは役割に特化しており攻撃は苦手だ。クロもある程度のPSがあるとは言え、生産職だ。
向こうのアタッカーはメイのみとなる。
メイの殲滅力はここにいるどのメンバーよりも優れているが……多勢に無勢。流石にカナメ、アケミ、イセの三人と比べると劣ってしまう。
「多分、こっちのほうが早いだろうな」
「にしし……メイっち悔しがるだろうな」
「メイさんは負けず嫌いですからね」
メイは野良パーティーでも負けず嫌いを発揮していたようだ。
「早く到着する分には何も問題はない。サクッとオーガジェネラルを討伐するか」
「おうよ!」
「了解ですわ!」
「ふむ。作戦は道中と一緒でよかったかな?」
「いや、流石に
「おうよ! 任せとけ!」
「委細承知!」
ここまで来て死に戻りは笑えない。万が一の事故すら起こさないよう、オーソドックスな作戦を選択した。
「オーガの弱点は水属性だが……アケミさんはどうする?」
「各種魔法は使えますが、私は火属性に特化していますわ」
「水属性強化の装備品とかは……ないよな?」
「残念ながらないですわ……」
「まぁ、火耐性が高いわけじゃないから……そのまま火属性でいいか」
熟練の魔法使いになれば、各種属性装備を揃えており、敵に合わせて装備を変えるのが普通だが……この階層はそこまでのレベルは要求されない。
「各種属性に合わせた装備品は揃えた方がいいのですか?」
「んー……火耐性に強いモンスターもいるから、少なくとも二種類以上は揃えたほうがいいかもな」
「お金がかかりますわね……」
「最終的に魔法使い系は一番金がかかるクラスだからな。ゆっくりと揃えたらいいと思うぞ」
「了解しましたわ」
「それじゃ、行くとするか」
「おー!」
逸るカナメを先頭に俺たちはオーガジェネラルの待つ扉の先へと進んだ。
「グォォォオオオオ!」
大きな一本の角を生やし、大剣を担いだ土色の巨大な鬼――
「で、でけーな……」
鬼将軍が手にした大剣だけでも2メートルはゆうに超えており、鬼将軍自身も全長3メートルほどの巨漢だ。オーガ種特有の馬鹿力は当然備えており、更には分厚い筋肉の上に鎧を着込んでいるため耐久性も高かった。
「ビビったのか?」
「ハッ! 武者震いだっつーの!」
カナメは犬歯を剥き出しにして獰猛な笑みを浮かべる。
「いきますわよ?」
アケミの声に全員が首肯すると……
「――《ファイヤーランス》!」
一本の炎の槍が鬼将軍の顔面に命中。
「っしゃ! 来いっ! オラッ!」
続けて、カナメが盾を打ち鳴らす。
――《アクセル》!
俺は自身の敏捷を大きく増幅させ、鬼将軍を迂回。
「グォォォオオオオ!」
鬼将軍が大剣を振り上げてカナメへと突撃したタイミングを見計らって、
――《バックスタブ》!
背後から兜と鎧の隙間に短剣を振り落としたが、鬼将軍は構わずカナメへと突進し、
「グォォォオオオオ!」
巨大な大剣をカナメへと振り下ろした。
「――ッ!?」
カナメは盾を構えたが……反応が遅い! 鬼将軍の大剣の威力を殺せず後退。
「にゃろ! ――《一閃突き》!」
カナメはダメージを受けながらも、果敢に槍を突き出した。
――!
バカか……!
タンクの仕事は敵の攻撃を受け止めることだ。敵にダメージを与えることではない。
俺は慌てて疾走し、鬼将軍の側面から魔力を練り上げる。
「カナメ! 退け! ――《ハイプレッシャー》!」
「むむ? イカン! ――《飛龍脚》!」
圧縮された空気と、後方から飛び出したイセの飛び蹴りがカナメに刺突されながらも大剣を振るおうとしていた鬼将軍を吹き飛ばす。
「てめーの相手はこっちだ! ――《ショウミー》!」
俺は人差し指でクイクイっと鬼将軍を招き寄せる。
「グォォォオオオオ!」
ふぅ……釣れたか……。
鬼将軍はこちらへ突進してくる。
「イセはカナメの体力を回復! こいつは一旦俺が引きつける! その間に体制を立て直すぞ!」
怒りを露わにしながら振られる大剣を回避しながら、パーティーメンバーに大声で指示を出す。
「承知!」
「ご、ごめん……」
「カナメ! 何をしているの!」
雑魚相手なら力押しでも構わないが、格上相手に力押しは愚の骨頂だ。
このまま俺がタンクをした方がいいのか?
食らえば瀕死確定の大剣を避けながら、俺は先の展開が不安になるのであった。
―――――――――――――――――――――――
(あとがき)
更新少し遅れました……(汗)
当面は投稿時間が不安定になるかも知れません……(例のDRPGは神ゲーでした☆)
※ストックが無くなり定期更新が崩れたので……(汗)
定期的な更新が崩れるかも知れないので……更新は作品フォローによる通知か、私のツイッターを見てくれると助かります。
ご迷惑をおかけして申し訳ございませんm(_ _)m
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