第三章 第一〇階層攻略編

新たな仲間

 騒ぎの元凶であるバカ男から逃げるように、第七階層から第八階層へと移動。モンスターの生息が少ない場所で基地を取り出して、一休みすることにした。


「もう少し稼ぎたかったね」

「凄い勢いで経験値が増えましたよね」


 初めて経験する経験値稼ぎに特化した狩りを経験したメイとヒナタが、楽しそうにはしゃぐ。


「悪目立ちするのは避けたかったからな。それに、当初の目的も達成出来た」


 俺は当初の目的である、ヒロアキに視線を移す。


「――?? 当初の目的とは?」


 事情を知らず、三人からの視線を受けたヒロアキが困惑する。


「当初の目的は――ヒロアキさんだよ」

「――な!? リク殿も……わ、私を……」


 ヒロアキは何故か顔を赤らめる。


「正確に言うと、タンクを任せられる新たな仲間だな」

「……左様でしたか」


 先程の言葉を補足すると、ヒロアキは沈んだ声で答える。


「それで……ヒロアキさんに確認だが、俺たちはタンクの仲間を探していた。それも一時的な仲間ではなく、共に第五十一階層を目指せる仲間だ」

「ふむ」

「それを踏まえた上で今一度確認するが、俺たちの誘いを受けてくれるか?」


 先程のカニ狩りで再確認したが、ヒロアキは優秀なタンクだ。タンクとしての立ち回り、攻撃の受け方、俺、メイ、ヒナタとの相性……全てが文句なしの逸材だった。


「騎士とは主に仕える者。そして、私の魂は全てリク殿に捧げる。この言葉に偽りはございませぬ」


 騎士道に重んじるロールプレイをしているのだろうか。ヒロアキは真剣な眼差しで、誓いの言葉を立てた。


「そこまで堅くなる必要はない。俺たちは仲間だ。俺たちの関係は対等であり、上下の関係ではない」

「む? しかし、騎士ならば……」

「騎士ならば、仲間の盾となって俺たちを護ってくれ! 当然、俺たちも与えられた役割に応じてヒロアキさんを助ける! 共に支え合い、高めあって……この世界を生き抜いて行こうぜ」

「承知しました」


 最後は軽い口調で告げたこっ恥ずかしい言葉だが、ヒロアキは真剣な表情で頷いてくれた。


「そういえば、聞いていなかったが……ヒロアキさんの属性は?」

「私の属性は光属性です」

「光属性か……悪くない」


 タンクに最も適した属性は何か?


 と、問われると……ある階層までは土属性と答える者が多く、ある階層を堺に光属性と答える者が多くなる。


 最もVITの成長率が高く堅固な属性が――土属性だ。デメリットを受けるステータスはAGIとなるが、土属性のタンクは受けてナンボの存在だ。低いAGIはデメリットにはなり得ない。

 また、STRの成長も悪くない為、攻撃にも参加出来るのが大きなメリットとなる。


 対して、光属性は土属性に次いでVITの成長率が高く、魔法攻撃に対する耐性でもあるRESの成長率も水属性に次いで高い。反面、デメリットを受けるステータスはSTRとAGI。

 魔法職になれば高いVITは活かせず、タンク職を選ぶと低いSTRが仇となり攻撃に参加しづらい。


 第二十階層までのモンスターの多くは物理攻撃が主体で、タンクも攻撃に参加する機会が多いことから土属性のタンクと比べると、人気は落ちる。


 しかし、第二十一階層以降は魔法を扱うモンスターも増え始め、第五十一階層以降はタンクが攻撃に参加出来る機会が激減するので、光属性のタンクが日の目を見始める。


 風属性はハズレ属性であったが、光属性は大器晩成の属性であった。


「属性と言えば……リク殿の属性は風属性でしたな?」

「風属性のプレイヤーが仲間にいるのは不満か?」

「滅相もない! 私は自身の目でリク殿の強さを確認しております。属性など、リク殿の強さの前には些少の意味もありませぬ!」

「ヒロアキさん、ありがとう。と言うか、俺たちは対等な関係の仲間だ。もう少し砕けた話し方にしないか?」

「承知しました。では、リク殿は私の事をヒロアキ……もしくは、ヒロとお呼び下さい」

「了解。ヒロ、俺のこともリクと呼び捨てで呼んでくれ」

「お断り致します」

「何でだよ!」

「この話し方は性分故……お許し願いたい」


 その後、何度もヒロアキに口調を改めるように交渉したが、『今の話し方が私の自然ゆえ』の一点張り。


「ああああ! もういい! ヒロはそのままでいいよ!」

「ご配慮感謝致します」


 押し問答の結果、根負けした俺にヒロアキはニカッと笑い頭を下げる。


「ヒロのレベルは……俺たちと同じ18だったか」

「これも運命ですな」


 ヒロアキは満足そうに頷く。


「ヒロ、俺はこれから第十階層の階層主に挑む予定だ」

「むむ? 第十階層の階層主ですか? 『百花繚乱』の虎の巻に記載されていた推奨レベルは確か――20。大丈夫なのですか?」

「18も20も強さは劇的には変わらない。問題はないだろ」


 この世界の推奨レベルは階層+10と言うのが、一つの指針とされていた。


 しかし、推奨はあくまで推奨だ。


 推奨レベルを超えていても、プレイヤースキルが低かったら、或いはパーティーバランスが悪かったらクリアすることは不可能だ。


 逆に言えば、高いプレイヤースキルを身につけており、正しい知識とバランスの良いパーティーを組めば、推奨レベルを満たしていなくてもクリアは出来る。


「リク殿のご指示とあらば!」

「リクはイケル、と判断してるんだよね?」

「こんな世界だ……確実とは言えないが、多分大丈夫だろ」

「それなら、大丈夫だね!」


 みずちは強敵だが、俺、ヒナタ、メイ、ヒロアキが揃い、ちゃんとした戦略を立てれば十分に勝ち筋が見える。


「私もリクさんの判断を信じますが……一つだけ、お尋ねしてもいいですか?」


 ヒロアキとメイは早々に俺の提案を受け入れたが、ヒナタが難色を示した様子をみせたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る