リクのデビュー戦
はじまりの町を出てフィールドに出ると、多くのプレイヤーがモンスターと戦闘をしていた。
第一階層なのにこれだけのプレイヤーがいるのか……。
IGOはサービスを開始してから6年目を迎えていたが、新規プレイヤーの参入はまだまだ多いようだ。
IGOの世界は現実世界の3倍の速さで時間が進む。つまり、現実世界の一日はIGOの世界での三日となる。
時間すらもお金で買える時代。
今では会議を時間操作されたVR世界で行う企業も少なくはない。
人類は3倍の寿命を手に入れた! と声高に叫ぶ学者もいるくらいだ。
っと、話が逸れた。
えっとクエストで受注したのは……ウェアラットにホーンラビットの討伐か。
俺は周囲を見回して、プレイヤーの密集率が低い場所を捜索。結局、はじまりの町から5分ほど離れた過疎地でモンスター討伐を行うことになった。
目の前には、草原を徘徊する一匹のウェアラット。大型犬ほどのサイズがあるネズミだ。
まずは、魔法からいってみるか。
俺は右手に持つ青銅の剣に魔力を集中させる。
――《ウィンドカッター》!
青銅の剣の刃先から放たれた一迅の風の刃がウェアラットを両断した。
「へ?」
目の前に起きた結果に俺は呆然とする。
一般的に魔法の威力を上げる方法は二つ。
一つは、熟練度を重ね、スキルレベルを上げる。
一つは、触媒――所謂、杖や魔力を帯びた武器を使用する。
俺が現在習得しているスキル――風魔法のスキルレベルは1。チュートリアルで貰える程度の武器は杖を除いて触媒とは成り得ない。
「ってことは……コレの効果か」
俺は右手に嵌めた指輪――『シルフィードの祝福』に視線を落とす。
考えてみれば、現状IGOの最高階層にいるボスが落としたアイテムなんだよな……。装飾品とは言え、第一階層で使うと、こうなるか……。
んー……これは、封印すべきか?
少し悩んだが、武器や防具から見れば装飾品の影響はそこまで大きくない。俺はそのまま使い続けることにした。
本当は魔法で釣って、武器で倒す予定だったのになぁ……。
俺は気を取り直して、左腕に装着したボーガンを使ってモンスターを釣ることにした。
「よいしょっ! っと」
俺は照準を定めて、一匹のウェアラットを狙い撃つ。
「ピギャァァアア!!」
ウェアラットは雄叫びをあげながら、俺へと突っ込んで来た。
っしゃ! 成功!
俺は右手に片手剣、左手に短剣を手にしてウェアラットと対峙する。
「シャァアーーー!」
ウェアラットは鋭い犬歯を剥き出しにして、俺へと跳躍する。
あのしつこいおっさんが言っていたことは、全て真実だった。かなりしつこかったけど。
――《パリィ》!
IGOの戦闘で一番大切な要素は――タイミングだ。
俺はウェアラットが噛みつこうとする直前に、短剣でウェアラットの顎を叩き上げる。
「ピギャッ!?」
攻撃する直前で短剣に叩き上げられたウェアラットは情けない悲鳴を上げて、態勢を崩す。
――《スラッシュ》!
俺は態勢を崩したウェアラットに片手剣の斬撃を放つ。片手剣はウェアラットの喉元を切り裂き、ウェアラットは地に倒れる。
VITが低い故に盾を扱えない風属性。
AGIを活かす為に重い武器が持てない風属性。
この不遇から脱却する為に、編み出したビルドが短剣を補助に使うこのスタイルだ。
当たらなければどうとでもなる! と、どこかの偉い人も言っていた気がする。
俺は自身のイメージしたスタイルに自信を感じ、次なる獲物を探し始めのであった。
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