属性

 ――属性。


 それはインフィニティゲートオンラインにおいて、最も重要な要素の一つであった。


 属性は初期に6種類から選べる。


 火属性――攻撃を司る属性。STRの成長を大きく促進し、RESの成長を大きく抑制する。


 水属性――回復を司る属性。RESの成長を大きく促進し、大きくSTRの成長を抑制する。


 風属性――敏捷を司る属性。大きくAGIの成長を促進し、大きくVITの成長を抑制する。


 土属性――耐久を司る属性。VITの成長を大きく促進し、AGIの成長を大きく抑制する。


 光属性――秩序を司る属性。RESとVITの成長を促進し、STRとAGIの成長を抑制する。


 闇属性――混沌を司る属性。STRとAGIの成長を促進し、RESとVITの成長を抑制する。


 相克関係は以下と通りとなる。


 火→風→土→水→火

 ※矢印(→)の相手に対して優位になる。


 光⇔闇

 ※互いに大きなダメージを与える。



 次にステータスを説明すると……。


 STRは筋力。攻撃力に起因するステータスだ。


 VITは耐久。防御力に起因するステータスだ。


 RESは耐性。魔法攻撃や状態異常……そして、何故か回復の効果にも起因するステータスだ。


 AGIは敏捷。速さに起因するステータスだ。



 故に、


 炎属性はアタッカーに最適の属性となり、水属性はヒーラーに最適の属性となり、土属性はタンクに最適の属性となる。


 光属性は守り寄りのバランスとなり、闇属性は攻め寄りのバランスとなる。


 ……風属性?


 それこそが問題の属性だった。


 敏捷が高いとどうなるのか? 速く動ける! 以上だ。


 VRMMOはそのゲームの性質から、命中率と回避率はプレイヤースキルに大きく依存する。他のゲームでよくある敏捷のメリットはほぼ皆無だ。


 更に、速く動けてもそれをいきなり使い熟せるプレイヤーは皆無に等しかった。


 何せ、動かすキャラクターは画面の中のキャラクターじゃなくて、生身の体に等しいVR世界のキャラクターだからだ。


 速さを活かして二回攻撃? 何なら、筋力が上がるSTRを上げた方が武器の振りは速くなる。


 と、風属性はサービス開始当初はそこそこ存在したが、すぐに死に属性を認定され……今では天然記念物に等しい属性となっていた。


 風属性を選択した初心者を見たら、最初にする助言が『キャラクターを作り直せ』と言われるほどに人気はなかった。


 風属性が唯一活躍出来るとすれば、動画配信だろうか? 死に属性で天然記念物であるが故に、縛りプレイの様なネタ扱いの配信はいくつか存在していた。


 運営も何度かテコ入れの修正をしたが、風属性が日の目を見ることはなかった。


 と、この様に属性は今後のキャラクターの成長にも起因する大きな要素であった。


 俺のメインキャラであるソラの属性は火属性。バリバリのアタッカーだ。


 そして、俺の二人目の分身となるリクが選択する属性は――当然、風属性だ。


 リクは趣味に全振りするプレイヤーだ。天然記念物とまで言われる風属性でどこまで出来るのか試してみるのも面白い。


 それに試してみたいことがあるからな……。


 セカンドプレイヤー故の余裕と言うのもあり、俺はノータイムで風属性を選択した。


『以下のキャラクターを作成します。


 名前 リク

 種族 ニューマン

 性別 男

 属性 風

 クラス ノービス

 レベル 1

 HP  80

 MP  10

 STR 7

 VIT 4

 AGI 10

 RES 7

 スキル

 風魔法【1】

 →ウィンドカッター【1】


 このキャラクターでよろしいでしょうか?


 【YES】 【NO】』


 俺は画面の表示された【YES】をタッチする。


『リク様はソラ様と同じ魂を共有する血族となります。


 ソラ様からのアイテムの受け渡しを行いますか?


 尚、アイテムの受け渡しは血族共有となるハウスのコンソールでも可能となります』


 血族共有となるハウスって第五一階層のホームタウンにある俺の家のことだよな?


 このキャラクターが第五一階層に到着するのはいつ頃になるんだ?


 とは言え、最初から強いアイテムを受け取って強くてニューゲーム状態は俺の望むプレイスタイルではない。


 とりあえず、直近の強さには影響が少ない『シルフィードの祝福』だけ受け取っておくか。


 他にどうしても欲しいアイテムが出てきたら旅団メンバーを通じてトレードすればいいだろ。


 俺は目の前のコンソールを操作し『シルフィードの祝福』をリクへと譲渡した。


『お疲れ様です。

 全ての準備が整いました。


 リク様、無限の可能性が広がるインフィニティゲートオンラインの世界を心ゆくまでお楽しみ下さい。


 それでは、いってらっしゃいませ』


 目の前が暗転。


 俺は心地良い浮遊感を味わいながら、インフィニティゲートオンラインの世界へと転送されたのであった。

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