セカンドキャラ
――インフィニティゲートオンライン。
通称IGO。世界初のVRMMOにして世界最高峰のVRMMO。プレイヤー人口は全世界で3億人を超えており、アクティブユーザー数をみても常時1,000万人を超えている化け物級のオンラインゲームだ。
ここまで世界的な人気VRMMOのトップランカーにもなれば、動画やブログを適度に配信したり、実際に存在する企業とタイアップしたゲーム内アイテムを宣伝するだけで、そこそこの生活が出来るほどのお金は手に入った。
故に、俺の職業は文字通りゲーマーと言うことになるのだが……
ちょっと有名になり過ぎたよな。
元々俺はただのゲーマーだ。
今では職業となってしまったゲーマーだが、俺は純粋にゲームが好きなだけであって、お金の為にIGOを始めた訳ではなかった。
トップランカー――言い換えれば有名人ともなれば、有名税とも言うべき障害も増えた。
俺は純粋に仲間と一緒にIGOを楽しみたいだけなのになぁ……。まぁ、お金はあって困るものではない。無いと、現実世界の俺の生活が脅かされる。
とは言え、大好きな趣味であるゲームが仕事になるのは何か違う。
一つ一つの言動が……多くの他者に精査され、制限される。
お金は欲しいけど、自由も欲しい。
これは贅沢な悩みなのだろうか?
そこで思い付いたのがセカンドキャラの作成だ。
メインキャラである効率重視の『ソラ』とは違い、趣味に全振りした楽しむ為だけのキャラ。
俺はIGOを始めたばかりの頃のワクワクした感情を求め、セカンドキャラを作成することにした。
「――ゲートオン!」
俺はカプセルタイプのログイン端末に横たわり、IGOの世界へとダイブする。
『ソラ様、おかえりなさい。第五一階層の旅団ホームへ転送を開始してもよろしいでしょうか?』
頭の中に流れるシステムメッセージ。
「転送をキャンセル」
『転送をキャンセルしました。ログアウト致しますか?』
「新規にキャラクターをクリエイトする」
『新たなキャラクターの作成ですね。二人目のキャラクターとなります。新たなキャラクターの作成には『無垢なる魂』が必要となります。よろしいでしょうか?』
『無垢なる魂』とは、簡単に言えば課金アイテムだ。価格は3万円と安くはない。
IGO自体は月額課金制のゲームだが、一部の機能を解放するのに課金アイテムが必要だった。
「イエス」
『確認のため暗証コードを念じて下さい』
俺は初期に設定した暗証コードを頭の中に思い浮かべる。
『確認が取れました。ソラ様、お買い上げありがとうございます。それでは、これよりキャラクタークリエイトモードへと移行します』
真っ白な部屋へと転送された。
「懐かしいな。この部屋に来るのはいつ以来だ?」
俺は懐かしさから独り言を溢す。
この部屋――キャラクタークリエイトをする空間に来たのIGOを開始した日以来となるから、5年振りくらいだろうか?
俺は部屋の中央に設置されているモニターへと足を進めた。
『これよりキャラクタークリエイトを開始します。新たなる貴方の分身――インフィニティゲートオンラインの世界で冒険を開始するキャラクターの名前を入力して下さい』
キャラクターの名前か……。
メインキャラの名前はソラだから……んー、どうしようかな? リクでいいか。
何となく頭に浮かんだ名前を入力した。
『リクの見た目を選択して下さい。現実の姿から大きく乖離した見た目は選択出来ません』
IGOのキャラクタークリエイトは、現実の世界の姿をモデルとして、カスタムする仕様だった。現実の世界の姿と大きく乖離していると、脳に大きな影響を及ぼすらしい。
よって、性別の転換も不可となる。
しかし、ケモミミを生やすことは可能だった。ケモミミ愛好家の情熱は計り知れない。
えっと……ソラの見た目は赤を基調としたから、リクは緑を基調とした感じにするかな。
まずは、髪の色は緑にして……目の色は緑寄りのブルーを選択して……ソラは歴戦の戦士!って感じのおっさんキャラだったから、リクは青年っぽい感じに仕上げるか。
俺は次々と見た目に関わる項目を操作した。
「こんな感じか?」
モデルが俺なのでイケメン……とは言い難いが、将来性が有望な感じの青年に仕上がったと思う。ちなみに、ケモミミは付けていない。
『属性を選択して下さい。一度決めた属性は変更出来ません。慎重に選択して下さい。また、属性によるキャラクターの得手不得手はあれど、優劣はございません』
何が優劣はないだよ。
俺は画面に映し出された文章を見て苦笑するのであった。
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