39 移送

ダンジョン。崖の行き止まり。声がする。


(これから話すのは、銀座 弥子 の話)


「だ・・誰?!」

若い男の声。


(弥子の移送まで、あと2週間)

移送?


(・・僕の仕事も、ようやく落ち着く。良かった。そうだ、3日後に久しぶりに出かけよう。町から離れた、郊外にでも行ってみようかな)


何の話だ?


(・・・)


それ以降声は聞こえなくなる。え?終わり?中途半端な・・。


「どうやら、呼んでるらしい」

蓮賀さんは言う。


「3日後に、郊外へ」


「・・どういう意味ですか?」


色々気になるけど。とりあえず、ここを出なくちゃ。リセット・モードがある。蓮賀さんを先頭に駆け抜けて、なんとかダンジョンを出た。


――空気が美味い。毎回思うけど、ダンジョン出た瞬間のこの気持ち・・なんていうか。やっぱり二度と入りたくない。


さっきの声は誰だろう?それに(移送)って言ってた。

色んな思いを巡らせる。


――ワスプ4人は戻る。


「謎の声は、誰でしょう?」

俺は声をかける。けど


「・・・」

蓮賀さん、疲れてて、答えられない様子。バトルで死にかけたからな・・無理もない。


「2週間後に移送される。言うとったな」

代わりに、海老名さんが答える。


コハルちゃんが、ゆっくり立ち上がると。


「早く弥子を助けなきゃ。ごめん、あたし先に休むね」

と言い、明日に備えて帰った。コハルちゃんも疲れてる様子。


「移送って何ですか、蓮賀さん?」


「・・弥子を助けれる期間は、あと2週間って事だ」

やっと話している感じ。


「もう休んだらどうです?」


「ああ」

そう言うと去った。


残ったおっさん2人。


「何の役にも立たなかった・・」


「ワイも同じや・・」

バトルでは立ってただけ。しょげている。


―――俺は考える。バトル、どうしようもなかった。蓮賀さんと、コハルちゃんが居なきゃ死んでた。俺の存在価値って何?


作戦を考える。オタクなりのゲーム知識を振り絞って。この先、効率よく進めるにはどうすればいいか。普通、RPGでレベルアップは、どうやってするか?

そして、結論が出ると同時に眠っていた。

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