24 仲間 海老名

「やるやないか!」


なんだろう?腕時計のアラームが、もうすぐ、真っ赤に染まろうって時に、関西弁で話されると、俺の主観だけど、気が緩んでしまう。今全力でダンジョン入り口まで走れば、リセットモードは回避できるはず。


「なに慌ててるんや?」

いや逃げるんだよ!


「これから、急いでダンジョンを脱出するんだ。一緒に逃げるか?」

蓮賀さんは、出入口へと促す。


「いや、その必要はないで!」

モンスター、スライムの上で回ると中に入っていく。なんだこれ?お笑いで切り抜けるとでも?冗談じゃない。


「狂気には狂気や!」

そうして、スライムは、あっちこっちに吹き飛ぶ。その後、スライムが、壁になっていく。そして、ぶよぶよの、即席の部屋が出来た。なんだ??意味が解らないし、気持ち悪い、スライムの目が見つめている。


「ここはスライムの身体の中や、せやから見てみい!」

腕時計を見ると、アラームが止まってる?どうして?


「開発者も、まさか、あんたらが、スライムの中に居るとは思わん、裏をかいたんや」


――――


気持ち悪いながらも、このリセットモードの、アラームが止まっている。理由はスライムはモンスターで、その身体の中に俺達が居るから、開発者の想定外らしい。本当かな?


「わいは、海老名 ~渦~の開発者や」


「なんだって?!」

それじゃあ、こいつが全ての元凶?でもそれなら、なんで現れたの?


「弥子ちゃんのこと、知っとるよ」


「・・え?弥子の事を?!」


「まず、ここやと落ち着かんし、場所変えるで」


そう言うと、そのままスライムと共に、移動して、ダンジョンの外へ。


――今、ラーメン店に居る。


「わいは、~渦~ のゲームバランス担当やった。せやから、スライムの中に入るって言う、芸当が出来るんや。今のダンジョン限定やけどな」


さっきの、ゲーセンのダンジョンは海老名さんが自ら作ったらしい。


「社運かかっとった、~渦~の開発責任者(アマサカ)は、ゲームオタクやった。コンセプトは、誰もクリアできんゲーム、グロさ、残酷、絶望。この時点で、人選、間違っとったんや」


味噌ラーメンと・・味噌ラーメン??同じもの2つかよ。おかしでしょ?その選択。メタボの見た目通り食うなあ。


「~渦~は、開発途中で警告された。残酷描写がエグすぎるんや。R指定付けるんやったら、全年齢にせなあかんわ。せやけど開発者(アマサカ)は、そのまま、発売を強行しようとした。そいで、~渦~ は批判されて発売は、没になってもうた。わいも正直ほっとしたわ。せやけど、収まり付かんのは、アマサカや」


良く喋るなー、さすが関西弁?


「その後、契約打ち切った親会社のシステムに、アマサカはウイルスを、大量に送ったんや。損害は会社が傾く程や。そいで、更に ~渦~ を、ネットから世の中にバラまきよった。あんたもやったことあるやろ?大手掲示板にも乗った。そいでアマサカは捕まった。わいも職を失った」


俺に言ってるのか。やっぱりオタク同士解るのかな?確かに、~渦~ は、ネットから拾ったゲームだ。海老名さんはラーメンを食べ始める。


「あの、弥子の事教えてくれます?」


コハルちゃんが聞く。海老名さんは、一心不乱に食べてる。


「かんにんな、しばらく引きこもっとったから、ラーメン2日分頼んでもうたわ。

・・弥子ちゃんと初めて会ったのは、病院。やったな」


食べ終わって水を飲んでる。早い・・


「・・それって、市立病院?」


「確か、そやった」

話しながら、店を出る。新たな基地へ歩いて向かいながら。


「どうして海老名さんは病院に居たの?」


「わいは、弥子ちゃんに助けられたんや」


「?!」

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