10 図書室の空席

俺(堀田)と、JKコハルちゃんは、2人で図書室へ。誰も居ない。本が、いっぱいなのは、当たり前だよな。あれ?この1列だけ本が変わってる。(人助けのための本)と、(猫の本)。そして、そこの前には椅子と机。誰かの専用のように見える。


「これは?」


「銀座 弥子(ぎんざ やこ)の席」


誰だろう?ここに座ってた子の事らしいけど。


「あたしの親友。これ全部、弥子の本なの」


全部?凄いな!しかも、見るとほとんどが、人助け。医療、看護、介護、保育、などなど。これを1人で集めたの?あとは、机の上にある、沢山の猫グッズ。かなりの猫好きみたいだ。


「弥子は、家族を助けようとして、ずっと本を読んでたの」



――――――――――



・・その日は雨が振ってて。あたし(宇都宮コハル)と、弥子は夜遅くまで、一緒に本読んでた。飼い猫も一緒に。そうしたら、


「見つけた!」

って弥子の声。あたしが慌てて駆け寄って見ると、嬉しそうな表情。


「や・・弥子?もしかして?」


「これで治せるよ!」

弥子の久しぶりの笑顔。いつぶりだろ?


「良かった!弥子!」


「コハル!」


凄く嬉しかった。弥子は、家族の病気を治す方法を、ずっと、探してて、やっと見つけたの。正直、お医者さんにも、でも弥子は諦めずに、方法を探してて。


―――直ぐにその方法を試すため、弥子は病院へ向かって走っていって。あたしも一緒に付いていって(助けたい)って気持ちが凄く伝わって来て。今まで弥子は授業もほとんど受けずに、毎日夜中まで調べてたから。凄く嬉しかった。


そして病院に着いて、お父さんが入院してる病室へ、見送ってあげたの。


「弥子!おめでとう!」


「ありがとう。コハル」


手を振って、笑顔で言うと、病室へ入っていった。



それが弥子と会った、最後の日。



――――――


俺(堀田 圭弥)は、驚く。コハルちゃんの友人が行方不明?大事件じゃないか?


「ど・どうして?」


「・・弥子は、次の日から来なくって」


「一体どこに行ったの?」


「わからないの・・警察も全力で捜査してるけど」


「そんな・・」


「机は、いつ帰ってきてもいいように、そのまま・・」


コハルちゃんは悲しそう。それはそうだ、親友なんだから。それに、弥子ちゃんの、お父さんを治す方法。俺はそれも気になった。机にある本を、見る限りだと、看護師を所得するための勉強をしてたらしい。あとは大量の猫グッズ。それに、図書室の本棚を、よく見るとに不自然にスペースが空いている。誰かが抜き取ったのだろうか?弥子ちゃんは一体何を調べてたんだろう?


「それであたしは、蓮賀さんに出会って、それで、~渦~とか、ダンジョンとかを知って。もしかしたら弥子が、関係してるんじゃないかなって、思って、ワスプに入ったの」


「そうなの?」


「・・正直、判らないけど、他に頼る事が無くって。でも蓮賀さんも一生懸命、弥子の事探してくれるから」


そうだったのか・・


「あたしは、弥子を助けるために戦ってるの」


そんな理由があったなんて。俺は衝撃を受けた。

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