第53話 不安
「カルロス公に会わせていただきたい!」
「ですから、マディソン様。カルロス様は御用事で今は出られません。お帰り下さい」
「だが!!」
「何事だ」
わたしはここら辺を統治していている領主、カルロス・デヴァーチャンス侯爵に会いに来ていた。
だがカルロスの屋敷の前で衛兵に止められてしまった。
リンタロウとあの魔族の子供を逃がして以降、私は呆然としながらもやっとここまで来たのに、カルロス公は一体、何を考えているのかと思った瞬間、
「何事だ」
「お前は……確か、カルロス公の所の執事長の……」
「おや、これは珍しいお客様ですね。お昼ぶりでしょうか?」
「あぁ、そうだな」
屋敷内から一人の男性が出てきてわたしに向かって話しかけてくる。
確か、カルロス公の執事……レオスだったか?
老人のような風貌しながら雰囲気は歴戦の騎士のような感じが醸し出させる。騎士、と言うよりもどちらかと言うと騎士のような道央とした雰囲気は持ってはおらず飄々としているように見えていた。
その雰囲気には一つ、とある人間を思い出させる。だが、今の状況とは関係ない。
「通してもよい」
「ですが!!」
「いいのです。その方が来ているということは、相当、重要なことですから」
レオスはそう静かに衛兵たちに告げると、衛兵はやっと、わたしの前からどくように道を開ける。そのまま、レオスはわたしのことを案内するようにわたしの前に立ち、屋敷内にへと歩き始める。
まったく、何を考えているのやら……よくわからない。
「主人さまはこちらにおられます」
「そうか」
そして、紹介されたのは一門の一室。豪華な装飾がなされている扉がわたしのことを案内するかのように佇んでいる。
コンコン、
静かにわたしは扉を叩くと、中から小さく男の声が聞こえてくると、わたしは何も言わずそのまま入り込んでいく。
「さて、今回はどのような御用でしょうかな? マディソン・ヴィクトリア嬢」
「先程、噂に聞いていた捕虜を見つけました」
「…………ほぅ、そうですか……それは一体どこで?」
カルロス公は私の話さえも聞こうとせず、勝手に納得するような表情を見せながらわたしの話を聞いてくる。どこか余裕そうなその男の表情に私は心の奥底でいら立ちを抱きながらも、彼の腐ったような顔を見る。
「魔の森で」
「魔の森……そうですか。でしたら」
「ですが、少し問題がありまして」
「なんですと?」
やっと、カルロス公の視線はわたしの方へと移り、真剣に話を聞くようになる。
わたしにとってはどうでもよかったものだが、彼のたくらみが一体どのヨナ物書きになる。それに、
「魔の森で、妨害にあってしまって」
「!!!?」
すると、しっかりとした表情にへと表に出すカルロス公は乗り出すような形で私の事を見つめてきた。
「それは本当か!!!?」
「えぇ、事実です。それも相当な実力の持ち主でして」
「それは、どうような奴だ!!?」
カルロス公は先ほどまで持っていた冷静さに反しており、どこか恐れているような表情を見せていた。
一体、何に怯えているのだろうか?
「不思議な道具を持っているものでした」
「道具……………だと……………?」
「えぇ、まるで、小さな大砲を持っているようなものでした」
「小さな大砲? はっ、それはそれは滑稽な姿だな? そんな、夢物語があると思うのか?」
急にカルロス公は先ほどまでの怯えようから冷静さを取り戻すかのように、急に笑い声を上げ、わたしの事をバカにするかのような発言をする。
この男、本当にマシな奴なのか? そのようなことを思ってしまう程だ。それほど、彼の情緒は不安定であり、まるでサイコロの様にころころと表情を変える。まぁ、見ている以上は面白い物なのだが、話していると少々、気味の悪さを覚えてしまう。
「ですが実際に有った。あの男はそれを持ち合わせていた。そして、歴戦の騎士のような雰囲気を持ち、あの武器の事を熟知していた。ただ物でない事はわたしは理解している」
「ほう、ではそのような面白おかしい奴を信用しろと?」
「信用するかしないかはお前次第だ」
「そうでございますか」
忠告はした。それからはお前次第だ、と言い残すとわたしはその場から離れるように出ていった。
だがあの男が来る以上、わたしもただで茫然するだけじゃいけない。この屋敷を少し散策でもしようか。散策でもいいし、あえてカルロス公を護衛するということもいいかもしれない。
けど、不安が残る。
護衛をするのも、散策するのも、何かとどこか嫌の感じがする。
「なんだ、これは……………」
今からやるのは正しいはずなのに、なんだこの苛つきは、不安は、むかつきは、さっきからそうだ。
いや、あの男に出会ってからそうだ。
胸の奥底から湧き上がる、苛つき、むかつきが収まる気がしない。
あぁ、気持ち悪い。あぁ、気持ち悪い。あぁ、気持ち悪い。
あの男は一体、わたしに何をしたんだっていうんだ。この苛つきは何なんだ。わたしはただ、『正しい』ことをしているだけなのに、
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