第47話 調達

 急いで走らせた足は最初は躓きかけたが、すぐに体制を整え、その足を近くにあった屋台にへと進めた。


「お、いらっしゃい! 何かいるかい?」


 屋台に勢いよく突っ込むような感じで入り込んだ私に対して、その屋台の店主は活気の良い挨拶をする。

 店主は私の姿を見ても驚いたような顔を見せず、私のような物を見てもなおその活気のある笑顔を向ける。

 さすがにそのような状況を飲み込めなかった私だったが、店主はそのような私の事なんて見ず知らず、その商売魂を見せていた。


「………え、えっと」

「ほい、何かいるかい?」


 単に美味しそうな匂いに惹かれた私は目を点にしながらも慌てて入った出店の垂れ幕に半ば整えながら息を整え、店主に言う。


「この金で食べれるを三つ程、くれないのかな? 何でもいいから」

「ん、そうかい?」


 私は息を整えると、店主に伝えると店主は呆気ない声を上げながら目の前の網の上で焼かれている肉串を三本取ると、白い紙に包みながら私に向かって差し出す。


「ほい、これでいいかい?」

「あ、あぁ」


 店主から差し出されて肉串を受け取ると、私は代わりと言ってはなんなんだが当たり前のこと、お金を払うという行為を行う。

 こちらとて一人の商人ゆえに、そのようなことが礼儀として行う。

 その証明として手に持った麻袋をそのまま、店主に渡すと店主は中身を視て驚いた表情を見せる。


「お、おい、あんた!」

「? なんだ?」

「さすがにこりゃあ、多すぎるよ」

「………あー、すまないがこちらに来てまだ、金銭の感覚が分からないんだ。それに急いでいるんだ。すまないね。チップとしてそれ全部貰っちゃっていいよ」

「いやいや、ちょちょちょ、待った!」


 私はそう言ってその場を走り出そうとするが、店主が私の前に現れ私の事を止める。


「なんですか?」

「お前さん、さすがにこんなに料金を貰って黙って貰うなんてできないよ! 商売人なら平等の商売をしなきゃメンツが立たない!」

「………」


 あぁ、なんて良い商人なのだろうか。この店主は、

 商人の汚さを知らない純粋で鮮明な商人、武器を取引していた汚い商売をしていた私には無かったその鮮明な商人魂は私には眩しかった。


「それではどうしますか?」


 静かに私は店主に向かって話しかけると、店主はまじまじと見てくる。


「なら、うちで食べて行けよ」

「はい?」

「こんなに金があるのなら、この金の分。うちの店で食わしてやるから!!」

「ですが、申し訳ないですし………」

「大丈夫大丈夫! 気にすんな!!」


 大きな声で叫びながら店主は至近距離にいる私に向かってそのようなことを話す。

 だがこうしている間にも、あの子は衰弱しているかもしれない。正直言うと数秒たりとも無駄にはしたくなかった。だが、食事をくれるという事が事実なら、この波に乗らなければ、あの子にはもっと多くの食事が与えることができる。


「な、なら!」

「?」

「質問があります!」

「なんだ?」

「その食事ができる場所は人がいなくても大丈夫ですか?」

「うん? もしかして人が良すぎるとだめなのかい?」

「え、えぇ、私ではなく、私の付き添いの者が人が多い所嫌う性分でして」

「そうかい、なら、大丈夫だよ。うちはいつでも開いているからね。閑古鳥が鳴いている、と言っても過言じゃないよ。じゃなかきゃお昼にこんな出店しないさ」

「そうですか」


 私は店主からそのような事を聞くと、胸の奥底で握り拳を作りながら大きく振り上げた。だが条件は他にもある。その条件を整っているものかと、理解するためには再び私は店主に向かって質問を投げかけた。


「では、もう一つ良いですか?」

「うん、何か?」

「その場所は人の目から見難いですか?」

「? なんで、そのような質問を」

「少し事情があるんですよ。先程も言いましたが私の付き添いの人物は人目をつくことを避けようとしているんです」

「むぅ、そう言う事なら大丈夫だぞ」

「いいんですか?」

「あぁ、大丈夫だ」


 店主がそう言うと私は詳しく彼に向かって説明を求める様に、質問すると彼は懇切丁寧に説明してくれて私はその主人の店が条件に合うような店だった。

 人が少なく、静かで、かつ美味しい食事にありつける場所。

 そのような場所を知ったのならなおさら行かなくてはいけないと思い、店主に「では向かいますので、地図に書いてください」と言い持っていた地図を取り出し、店主にその店を書いていただくと私は短く挨拶を済ませ、あの子をがいる場所へと向かった。

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