第21話 中立神から加護を
カサッ、
緊張で態勢が傾き、足元には一枚の手紙が置いてあった。
「これは?」
足元に置いてあった手紙を手に取ると、その手紙から暖かな雰囲気と淡い光を纏っていた。私自身、この感覚に覚えがあった。
手紙を裏返し、あて名を見ると、そこには流暢な
「……これは驚いた」
手紙の宛名を見て私は驚くが、すぐにその驚きも失せ、手紙を読むために封を切る。
「………………ほう」
手紙にはこう書いていた。
『ヤシロ=リンイチロウ様
リンイチロウ様。そちらの方は今、どのようなことになっているでしょうか?
まぁ、話さなくても大丈夫です。全て、貴方の視界を共有しているため、どのような状況か理解できています。ですから、私から貴方に対してプレゼントを上げようと思います。
その場所からまっすぐ言って突き当りの場所にプレゼント用の木箱を置いておりますので、是非受け取ってください。
他に、この手紙を読んだ時点で私と貴方の誓約はきちんと為されます。ですので様々な所が変化しますが気にしないでください。では今後もよろしくお願いします。
アストライアより 』
そう手紙に書かれており、読み終え、手紙からほんの少し目を離すと、手紙はまるでそこには無かったかのように姿を消しており。代わりに私の右手の甲には謎の痣が広がっていた。
「これは
私は手の甲に映っていた面妖な形の入れ墨を見ると、その入れ墨の形はどこか天秤のような形をしていた。
それにしても入れ墨とはこれは驚いた。生前は入れ墨をしているだけであまり良い目では見られなかったし、ヤクザものだと勘違いもあった。
「まぁ、いいか」
そう言って、無視しようとした瞬間、脳裏に一瞬、鋭い痛みが走り立ち眩みに似た現象が起きる。
「な、なんだ?」
ガンガン、とまるで槌で頭を殴られているような感覚に襲われながら必死に田姿勢を整える。
その苦しい感覚が収まると、とあることに気付いた。
「これは、《中立神の加護》?」
まるで幻覚のように、私の視界には一つの文字が浮かび上がっていた。
触ろうとして、手を伸ばすがまるでそこには何もないかのように透け、通り抜ける。まるで、心綺楼そのものだ。
だが、それだけではない。
その《中立神の加護》の文字の下には、更に文字が続いておりそこにはこのような事が書いてあった。
《中立神の加護》
『中立神の加護を受けたスキル。中立神から与えられた何者よりも穢されぬ固き信念と真意を見抜き嘘を裁く目は天秤に調律を与えるものである』
「穢されぬ固き信念、裁く目、そして天秤に調律」
そう書かれた文字に私は、復唱しその言葉に乗せられた意味を考える。
穢される固き信念、とはもしかしたら、外傷を受けないことだろうか。そうなると、他にも意味が含まれるだろう。それに、裁く目、か。これはアストライア様の司る力。嘘の看破などだろう。
では、天秤に調律?
これだけが分からない。
頭によぎる予想はこれはアストライア様のことを指しているのではないかと思うのだが、それだけじゃどこか物足りない。
「うー、わからないな」
頭をどれほど捻って見せても、その答えは見つからない。
この世界の調和、バランス。アストライア様のことを指す。役目の再確認?
考えが山ほど出てくる。
「まぁ、諦めるか」
考えるだけ、時間の無駄になりそうだし。いずれはその答えさえも分かる気がする。
それにしてもどうやって消したものか……。
私が色々とこの文字を消そうとして試行錯誤をしているととあることに気付く。
「この入れ墨に触れると変化するのか?」
先ほどまで視界で邪魔をしていた文字は、手の甲にある入れ墨に触れると、まるで何も無かったかのように消えていた。
そして再び入れ墨に触れると、先程も文字が出てくる。
他にも、数値や説明などは書いてあったが正直言うとそのようなことに気にしてはいられなかった。ただ確認が取れた事が内心嬉しかった。
「ふぅん、こんな感じか」
文字が出現したり消滅したりするところを見終えると、まじまじとその数値や説明などを見る。
頭の中にほとんどの内容は、入れてみたが正直うと今必要ない情報であってすぐに読むのをやめた。
「で、ここにあると」
そして私は、手紙に書いてあった所に向かい、場所に着くと、そこには大きな木箱があった。
だがその木箱は強固な釘で固定されており、すぐには開かないようになっていた。
「うん、どうしたものか」
所持品には釘抜は無く、この箱を開けれるようなものは周囲には無い。
となると一体、どうやって開けたものか。
「…………………まさか、ね」
私はそう言うと、拳を握り大きく木箱に向かって振りかぶる。
すると、バゴンッ、と大きな音を鳴らしながら木箱の蓋はぼろぼろに砕け散る。
「…………うそぉ」
ボロボロになった木箱の蓋に触れると、よほど強い力で殴られたように砕かれていた。
「そんなことよりも、やっちゃったなぁ」
私は、赤の他人の身体を傷つけたことの方が大きく、慌てて振りかざした拳を見てみるが、怪我一つついておらず腫れもかすり傷も無かった。
「どういうことだ?」
私はその現実に、受け入れられず叩いた拳を何度も確認し確かめる。
だが、何一つとして怪我はなく、痛みも無かった。
「……もしかして、これが加護?」
私は気付いた時にはその加護に、喜び恐れた。
なぜなら、この体は既に人間の体を捨てたと言う恐ろしい感覚と、怪我をしないで無茶ができるその体に喜びを覚えたが、前者のように私の心の奥には『人を辞めた』と言う強い恐怖心があった。
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