第16話 食事
使用人に案内され、私と使用人はとある場所に着く。
「ここは、食堂か?」
「はい。ではご自由にお席にお座りください。私どもは食事をとってきますので」
「そう、ですか」
私は使用人にそう言われようとも、私は困り果てていた。
このような大きく綺麗な場所での食事だとは、私は思わなかった。このような場所での食事は、大日本帝国軍での食事会以来、私は食べた事は無い。豪華な所での食事は知っているが、根は庶民と同じの為、こういう場所に来てしまうと、身体は強張ってしまう。
「まぁ、まずは座るか」
空いている席を探すが、ここには昨日の大浴場のように、クラスメイト達がいないわけでは無く、所々、クラスメイト達の姿が見える。
にしても、本当に豪華な料理の山だ。見ているだけで、朝の空腹感に語り掛けてくる。
「あれ? 矢代じゃん」
「あ、君は………確か健太、だったな」
すると急に私に話しかけてくる人物がいると思い、振り向いてみると、そこには、この体の持ち主の親友、青木 健太がいた。
「あ? まぁ、そうだが、本当にどうしたよ。昨日から」
「いや、こっちの事情だよ」
私は話しかけてくる健太の隣に座り、彼の方を見る。
「? そうか、にしてもお前も早く食った方が良いぜ? ここの料理、本当においしいからよ」
「そうか」
彼、健太はそう言いながら、フォークに刺してある肉を口の中へと入れる。
「健太? 行儀悪いよ? もう少し、綺麗に食べないか?」
「あ、まじでか。すまねぇ、美味しいものが出てきちまうと、ついつい、雑になっちまうんだよな」
「ふぅん、そう言う物かい?」
「あぁ、………そうじゃねぇか?」
「ふぅん」
私はできることなら、美味しいものは静かに食べてみたいものなんだが………。その考えは駄目なのだろうか?
まぁ、人それぞれと考えてみればいいのかもしれない。
「すみません。矢代様、お待たせしました」
「あ、ありがとうございます」
するとちょうどよく、使用人が私のご飯を運んできてくれた。
コトン、と小さな食器の音を鳴らしながらテーブルの上に置かれるプレートを見て私は息をのむ。
「どうかしましたか?」
「い、いえ、料理がすごいなと思って」
私の目の前に出てきたのは、まさに芸術品と呼ばれるであろう料理の品々。見ているだけでも、十分、料理の数々の旨味が伝わり、すでに口の中はこの料理を食したいと、語っていた。
「食器は、フォークとナイフでよろしかったでしょうか?」
「あ、はい。大丈夫です」
使用人がそう言って渡してきた食器を受け取り、ナプキンを首に巻き、並べられた料理へとナイフを入れる。
綺麗にナイフで切ってフォークを刺して、料理の口の中へと入れる。
「む!」
瞬間、口の中に香ばしい香りが突き抜ける。
「っ、すまない。これは何という料理なのだ?」
「はい、これは水馬の香草ステーキとなっています」
「これがステーキ?」
嘘だ。
私の口の中にあった食感は完全
肉とは思えないシャキシャキと言った不思議な口触りは、私自身の食欲も増させるものであった。
「うん、旨いな。確かに旨い。このような食べ物初めて食べた」
「他に我が国は、流通は少ないですが、ドラゴンのステーキなどもあります」
「ドラゴン?」
急に聞いたこともない、単語が出てきて私は食べる手を止めてしまう。
「おいおい、ドラゴンってあの羽が生えた龍の事か?」
「はい、そのドラゴンでございます。『龍』とは確か極東に伝わるドラゴンの呼び方でしょうか?」
「おう! 俺らの国では『龍』って呼んでいたがよ!」
龍。龍!?
私は使用人の言葉に答えている健太の言葉を聞いて一気に頭が混乱した。
この世界には、龍なんてものも存在しているのか? そう言えば、ドラゴン、確かに聞いたことある。米国にいた時は、とある本にドランゴン、と言う単語があったことを思い出す。
にしても、龍を食べるのか。
「だがそのような、発想があるのだなぁ」
「はい? 何でしょうか?」
「いいえ、こちらの話です」
私はそうしみじみ思いながらも、フォークに刺した水馬のステーキを食べる。
「もしかして、お食べになりたいのでしょうか?」
「うん? まぁ、うん。そうかもねぇ」
確かに食べてみたいというのなら、口で頬張る水馬の噛み続ける。
「でしたら、準備しますが」
「!! いいのかい?」
「ですがとてもじゃない程、重いですよ」
「………………」
私はその言葉に、食べたいという意欲が一気に削がれた。
なぜなら、私はそれほど、朝から重い物を食べたくないし、食べたら胃が熱くなるから私は食べたくはない。
「まぁ、いつか食べれる時に食べるか」
「そうですか」
そうして私は、水馬のステーキを食べ終わると、使用人から出された料理を次々と自分の歩調で食べていった。
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