第14話 夢にて
「…………」
目が覚める。
そこは真っ白の白紙の世界。
「ここは?」
あぁ、記憶にある。
それは私がこちらの世界にやってくる際の登竜門であった、あの場所だ。
となると………、
「いるんですよね。アストライヤ様」
「あら、分かっていたのですね」
「それは、貴方が私の事をここに呼んでくれましたから」
「そうですね」
真っ白な空間から、いつの間にか現れていた女神様、アストライア様が私の背後に現れ、話しかけてくる。
騒がしい一日だったので、アストライア様に合うのさえも、私は久しぶりな感覚があった。
「ここに呼んだとなると、何かお話しすることが?」
「えぇ、何点か」
「…………そうですか」
私はそのことを聞いて、心の底から安心した。
何に安心したのか、私自身、何だったのか分からない。だが、あの場所で葛藤し続けるには、私の心が持ちそうにならなかった。
だからこそ、私は今、この場所が安心できるところとなっていた。
「では、話しましょうか?」
「えぇ」
アストライア様がそう言うと、私は彼女の話を一語一句、聞き逃すことなく話を聞く。
「まず、貴方はこの世界を視てどう思いましたか?」
「…………やはり、不思議ですし、私の知らないものがたくさんあると思いましたよ」
「そうですか……でしたら、呼ばれたあの国は、どのように?」
「………生前のあの国と同じような臭いが感じられました」
「ふむ、そうですか」
これは私の本心だ。一切の嘘はない。
だからこそ、私の中では言えることがあった。
この答えだけは間違いではない。
「……
「はい」
「では、貴方が私に対しての質問を二つ、私に聞くことができます。これは差し引きですから」
「分かりました」
アストライア様のその言葉に私は、慎重に質問を選ぶ。
聞きたいことがたくさんあるが、アストライア様が提示したのは、二つ。余計な選択をしてしまえば、一番大事な内容さえも質問できなくなる。
そうなってはいけない。なら、最初に質問するべきなのは、
「なぜ、私やこの体のクラスメイト達はかつての私の友人たちに似ているのでしょうか?」
「はい、その質問ですか………そうですね。単純に言ってしまうと、血筋ですね」
「………血筋」
「はい、まずこれで、一つ目の質問は終えました。では二つ目です」
「」
なんと先ほどの答えで、一つ目が終えるとは………、だが情報は得た。
次で最後になるのなら、もっと慎重に選ばなければいけない。
「………………………なら最後に、私は一体、これから何をすればいいのでしょうか?」
疑い、迷い、それでもなお、私は、今から行われる私の罪滅ぼしに、未だに私の心は揺らいでいた。
「そうですね、貴方の言う通り、この世界では貴方のやることは何かあるのか。それは今に分かりますよ」
「えっ?」
「貴方が行うのは『執行人』。私が判決を下し、貴方がそれを行う。それが貴方をこの世界に呼んだ理由であり、この世界で実行することなのです」
「…………」
「他にも、貴方には、私の目になっていただきたいと思っていますから」
「目、ですか?」
「えぇ」
私はアストライア様から言われる言葉に繰り返すように言うと、アストライア様は優しい笑顔で返事をしてくる。
「天秤の判決には細かい情報が必要なのですよ」
「ほぉ」
「貴方の世界だってそうでしょう? 情報を詳しく集め、判決に反映する。それと同じようなものです」
「確かに、でもそれならアストライア様自身が見ればよろしいのでは」
「それは質問でしょうか?」
「あ……質問、と言われると、確かにそう言われるとそうかもしれませんね。申し訳ございません」
アストライア様に一手、上手を行かれたと心の中で思いながら私はアストライア様に頭を下げる。
そう言えば、質問は二つまでで、既に私の持ち札は無い状態と言うことを忘れていた。
「本当に申し訳ございません。このような無様なことを考えてしまって」
「いいですよ。ですが、そうですね……執行人として最低限のことは知っておきたいですよね。でしたら、オマケで御教えいたしましょう」
「本当ですか!?」
アストライア様のその提案に私は驚いた声を発しながら、アストライア様のことを見る。
「ですが、聞いた以上、条件があります」
「な、何でしょうか?」
だが私はアストライア様が続いて言う言葉に緊張感を走らせる。
生前の癖か、条件、と言う言葉に敏感になってしまう。なぜなら、商談する際に、一番、大事な所の為にこれ一つ提示されただけであらゆる所まで縛られてしまうなんてこともある。
それに今回は私のこの世界に呼んでくださった女神様だ。
さぞ、恐ろしいものを提示してくるでしょう。
「まずは絶対遵守。これを破り次第、私は貴方の『罪滅ぼし』を永遠に許可しません」
「はい」
「次に口外禁止です。何があろうとも、今から話すことは誰にも話してはなりません」
「はい」
「では最後に、もし、この条件が守れなかったりしたのならば、中立神の元、先の条件に乗っ取り、貴方のことを裁きを下します」
「はい、分かりました」
アストライア様がそう深刻そうな声で私に語り掛けると、私はアストライア様の提案した条件に納得する。
アストライア様の提案に満足しており、元よりこれは私自身の『罪滅ぼし』なのだから、そして、私の末は既に決まっている。
「そうですか」
「はい、ですから、この条件を飲めます」
「……そうですか。なら、話しましょうか」
「……」
「貴方が言った通り、確かに私の目で見てしまえばいいのでしょうが、それは駄目な事なんです」
「えっ?」
私はアストライア様の言葉に意外に驚いた声が出る。
「元々、神から見る人の世界とは大体の動きしか見えませんし、聞こえません。だからこそ、私はさらに細かい情報を得るために貴方の『目』と共有したいのです」
「……あぁ、そうですか。そう言うことなら、分かりました。でしたら、私の目、どうぞ、お使いください」
「ふふっ、本当に良かった。貴方ならそのように答えてくれると思いました」
アストライア様はそう優しい笑顔を見せると、私も釣られるように笑ってしまう。
アストライア様にはアストライア様なりの考えがあると思い、私は更に、かの女神様のことを信用するようになった。
それにアストライア様が私の目を使いたいというのなら、私は言われた通りに動こうと思う。なぜなら、これは私が望んだ『罪滅ぼし』なのだから。
「では、また会いましょう。リンイチロウ=ヤシロ」
「はい、分かりました。アストライア様」
私とアストライア様は、そう笑い合うと、私の視界が徐々に白くなって靄に消えていった。
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