第9話 鑑定
エルバート宰相がそう言って、私とクラスメイト達は、順番に次々と呼ばれ、水晶に触れていく。
「ふむ、君は、クラスは『戦士』で、スキルが『頑丈』に『剛腕』か……生粋の戦士だな」
「次の者は、『魔術師』でスキルは『魔力循環』か、ふむこれも普通だな」
このようにエルバート宰相が呼び出されたクラスメイト達は、水晶の後ろに立っている神父のようなものにそう言われ、この状態に喜ぶもの、又は悲しむもの、挙句の果てにはエルバート宰相と共に蔑む者などがいた。
「では、次、矢代 倫一くん」
「あ、はいっ」
私がエルバート宰相に呼び出されると、エルバート宰相は一瞬だけ驚いた顔をするが、さすがに駄目だと気づいたのだろう。すぐさま、顔を元に戻し、神父のような人物に顔を向ける。
私は呼び出され、神父の近くにある水晶に向かって立つ。
「ではその水晶に手を翳してください」
「はい」
私は神父の前に出ると、神父の言うとおりに水晶に手を翳すと、淡い緑色の光が水晶から放たれる。
「これは………」
美しい。
私はその風景に幻想的なものだと思ってしまった。
過去に、万華鏡を初めて見たような、そのような気持ちになった。
それ程、この水晶から放たれる光は、美しく幻想的であった。
淡い緑色の中に数々の光が小さながらも見える。虹、と言うには少し違う気もするが、今はそれで十分なほどの言葉だろう。
「ふむ、クラスは………『狙撃者』? それにスキルは『狙撃』と………」
「?」
神父は私の水晶を見ると少しだけ戸惑ったような顔を見せるが、説明していく中で平然としていく顔になっていく。
「それは、何でしょうか?」
だがその状態を飲み込めない私にとっては理解できなかったため、神父の方へと向き、神父にどのようなものかを聞くと、神父は、あぁ、そうですね、と言いながら私に向かって説明をし始める。
「狙撃者、は私も見ることは無かった初めてのクラスですが、スキルを見た所………弓矢など使って敵を狙い撃つことができるクラスなのでしょう」
「はぁ」
神父のその説明に、私は生返事をしていると、私は頭の中で情報の整理を始める。
狙撃者と言うことは、こちらの世界では狙撃を中心に行動していけばいいのだろうか。私自身、その手の武器の開発・販売をしていたたどのような行動をするのかも知っているし、元々の内の社員にも日露戦争で多くの人を狙撃をしていた有能な狙撃手がいたため武器の使い方も大体わかる。
だが一つだけ分からないのは、このクラスが神父さえも見た事もないクラスと言う所だ。このような場所で目立つようなクラスで、彼らに目を付けられるのだけは避けたい。
「ですが、まぁ、名前の通り狙撃と言いますし大丈夫でしょう」
「えっ?」
だが、それは杞憂だった。
私の考えていることなんて、まるで上の空で考えることさえも無駄と言う感じだった。
その状態に私は一瞬だけ、不思議と違和感を覚えながらも私は水晶の前から去っていった。
「………………」
「おいおい、一体どうしたんだよ?」
「あ、………健太」
私の呆然とした姿にさすがにおかしいと思ったのだろうか、この体の友人。かつての友人、勝次に似ている青年、健太に向かって話しかけてくる。
「どうしたんだよ。お前、いつもよりおかしいじゃないの?」
「………………あ、いや、何でもない」
「ふぅん、そうか、それにしてもお前が狙撃者? なんてよかったじゃねぇか」
「え?」
「お前、いつも銃について調べているし趣味でいつも銃が出ているゲームやりこんでいるじゃん」
「あ、あぁ」
「それがよ。まさか、狙撃者になるなんてな。なんだ? いつもと同じようにスナイパーライフル、なんか持って遠くにいる敵目掛けて撃つのか?」
「」
スナイパーライフル?
その単語に私はとてもなく興味がそそられる。聞いたことの無い、武器の名前が健太から飛び出ると、私は健太に向かって目を光らせる。
「え、えっと、すまない。それは一体、なんなんだね!?」
「おわ、急になんだよ!?」
気になってしょうがない私は既に健太の肩を掴み揺らしながら、説明を求める。
「きゅ、急にな、何だよっ! って、揺らすなよ馬鹿!!」
「お、おっとすまない」
私は健太にその手を振り払われると、健太ははぁはぁ、と息を整え、私の方に再び向く。
「本当にどうしたんだよ。今日のお前、まじでおかしいぞ!?」
「す、すまない。先ほどはとてつもないほどの興味がそそられたんだ」
「ふぅん、それにスナイパーライフルなんてもの、俺よりもお前の方がよく知っているじゃねぇかよ」
「む!!」
何ということだ! 墓穴を掘るとはまさにこのことではないのだろうか!
私の体の持ち主は本来、武器、主に銃に関することに関して詳しいとは、この体の持ち主がこの体にいたのなら、是非、話したかったものだ。
いや、もしかしたらこの顔と言い、声と言い繋がるところは多いため、性格も似ている所もあるのだろう。なら、尚更話してみたいものだ。
「そ、そうか、そうだったか、あははははは………」
「?」
私はその欲求をひたすら我慢するかのように、軽い笑い声で誤魔化した。
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